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第2章 神子
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「宮司様、神子様をお連れしました」
立浪と雪千代は障子の前に膝をついた。
「入れ」
「はっ、失礼いたします」
立浪は障子を開け、雪千代に中に入るように促した。
雪千代は一礼し、敷居の内側ににじり入ると、再びこうべを垂れた。
宮司の四淵は、紫色に白紋の袴に、狩衣を身に着けている。
部屋は畳が敷かれているが、柱は丸く、書院造りと寝殿造りの混合様式で、それほど古い時代に建てられたものではないようだ。
「神子様、ゆうべはよく寝られましたかな?」
「はい」
体は疲れていて、よく眠った気はしなかったが、そう答えた。
「昨夜、あやうな儀式があったばかりで、お疲れであろう」
宮司はにやついた目で雪千代を見た。
昨夜の痴態を思い出しているのだろう。
「かように麗しい神子様がきてくださり、これで玉宮神社は安泰じゃ。海の民も安心しよう」
宮司の目線は、雪千代の衣服の下の素肌を舐めまわすようだった。
「今日は天気がよい。立浪、神子様に島を案内してあげなさい」
「はっ、かしこまりました」
立浪と雪千代は、宮司の部屋を後にした。
「一度、お部屋に戻り、お食事をお召し上がりくださいませ。その後、島を案内します」
雪千代は居室に戻ると、遅い朝餉をとった。
白い粥と、小魚を煮たものと、香の物。
この時代、白米は贅沢品だった。
武家育ちの雪千代も、実家にいた頃は玄米を食べており、白い米は特別な日に食べるものだった。
食べ終わるのを見計らっていたように、立浪が戻ってきた。
「お茶をどうぞ」
「かたじけない」
雪千代が煎茶を飲んでいる間に、立浪はお膳を下げて、また戻ってきた。
昨夜の儀式は驚いたが、食事のような日常生活の部分は、それなりに大事に扱ってくれるらしいとわかって、雪千代の胸を覆う不安は、少しだけ和らいだ。
立浪と雪千代は障子の前に膝をついた。
「入れ」
「はっ、失礼いたします」
立浪は障子を開け、雪千代に中に入るように促した。
雪千代は一礼し、敷居の内側ににじり入ると、再びこうべを垂れた。
宮司の四淵は、紫色に白紋の袴に、狩衣を身に着けている。
部屋は畳が敷かれているが、柱は丸く、書院造りと寝殿造りの混合様式で、それほど古い時代に建てられたものではないようだ。
「神子様、ゆうべはよく寝られましたかな?」
「はい」
体は疲れていて、よく眠った気はしなかったが、そう答えた。
「昨夜、あやうな儀式があったばかりで、お疲れであろう」
宮司はにやついた目で雪千代を見た。
昨夜の痴態を思い出しているのだろう。
「かように麗しい神子様がきてくださり、これで玉宮神社は安泰じゃ。海の民も安心しよう」
宮司の目線は、雪千代の衣服の下の素肌を舐めまわすようだった。
「今日は天気がよい。立浪、神子様に島を案内してあげなさい」
「はっ、かしこまりました」
立浪と雪千代は、宮司の部屋を後にした。
「一度、お部屋に戻り、お食事をお召し上がりくださいませ。その後、島を案内します」
雪千代は居室に戻ると、遅い朝餉をとった。
白い粥と、小魚を煮たものと、香の物。
この時代、白米は贅沢品だった。
武家育ちの雪千代も、実家にいた頃は玄米を食べており、白い米は特別な日に食べるものだった。
食べ終わるのを見計らっていたように、立浪が戻ってきた。
「お茶をどうぞ」
「かたじけない」
雪千代が煎茶を飲んでいる間に、立浪はお膳を下げて、また戻ってきた。
昨夜の儀式は驚いたが、食事のような日常生活の部分は、それなりに大事に扱ってくれるらしいとわかって、雪千代の胸を覆う不安は、少しだけ和らいだ。
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