色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

丸井マロ

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第19章 飯田欣栄

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「たとえ蔭間茶屋から身請けした若衆だとしても、罪なき者を痛めつけるは人の道に外れる行い。まして、嬲り殺すなどと言うことがあるとすれば外道も外道、御奉行様が知ったら黙ってはおられまい」

 答えたのは欣栄だった。

「今の南町奉行は、公明正大なお人柄で、抑強扶弱の信念をもってお裁きをなされるともっぱらの評判だ。町方与力や同心に鼻薬は効くが、御奉行様ともなれば話は別だろう」

「しかし……」

 蔵人は顔を曇らせる。

「三浦屋にいた時、興味深い話を聞きました。芳町の蔭間茶屋には、たびたび与力同心の手入れがあるが、手入れ時、蔭間は姿を消してしまうと。蔭間がいなければただの茶屋、証拠がなければ奉行所も手出しは出来ない。そんなことが何年も続いているようです」

「いつ手入れがあるのか、与力同心が大黒屋に情報を流し、大黒屋が川上屋に教え、川上屋から他の蔭間茶屋に情報が漏れているのだろうな」

 欣栄は述べた。

「さような状況で、奉行所に訴え出ても、御奉行様に届く前に、与力によって握りつぶされてしまいます。そのためにも大黒屋は与力同心を手懐けているのでしょう」

「それだけかな?」
 欣栄は疑問を投げかけた。

「と、言うと?」 

「気に入った若衆を、他の男に犯させて辱めることは、その手の性癖を持つ者には、たまらない楽しみであると聞く……おぞましいことではあるが」

 彼は嫌悪を隠さず顔を歪ませた。 

「儂が思うに、大黒屋は、そのお雪という若者に御執心なのだろう。だからこそ、同心連中を使って辱めることに、歪んだ喜びを見出しているのではなかろうか」

「なるほど」

 蔵人は硬い表情でうなずいた。

「たしかに、大黒屋がお雪さんを痛めつけよう、辱めようとする執念は、尋常ではなかった」

 そこで一呼吸すると、蔵人は打ち明けた──仙千代や「お代官様」の前で失禁したお雪が、こっぴどく鞭打たれた時、蔵人は新月の夜の闇にまぎれて屋敷に忍び込み、その様子を天井裏から見ていたことを。

 その後、用心棒として大黒屋に雇われた彼は、あの屋敷で起きていたことで、仙千代の知らないことを、色々と見聞きしていた。

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