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第18章 脱出

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 蔵人が大黒屋に用心棒として雇われてから、初めて迎える新月の夜だった。

 その日、仙千代は日中、非番の与力を一人接待し、夜は二人の与力を立てつづけに接待した。

 疲れ果てていたが、残された力をふりしぼって体を起こし、笑顔で与力を送り出して、ほっとしているところに、大黒屋がやってきた。

「ああっ!」

 酷使されてひりひりする菊座を、大人の腕ほどの太さの巨大なもので抉じ開けられ、押し入ってくる痛みに、仙千代は悲鳴を上げる。

 こんなことを繰り返して、己の体はいつまでつのか、今夜こそ尻が壊れてしまうのではないか。

 そして、締まりが悪くなれば、お雪のように同心連中の接待役に落とされて、昼も夜も何十人もの男たちに輪姦されてしまうのではないか。

 仙千代の恐怖をよそに、大黒屋は腰を前後して、抜き差しを始めた。

「アァァ──!」

 意識を切り刻む激痛に、仙千代は何も考えられなくなり、泣き叫ぶだけだった。



 襖一枚隔てた控えの間で、蔵人は仙千代の呻き声や悲鳴を聞いていた。

 四人の見張り役がいて、蔵人以外の男たちはニヤニヤしながら、目を見合わせる。

「今夜もお盛んなこった」

 一人が声をひそめて言うと、他の者たちは声を出さずに笑う。

 その中で、蔵人だけは無表情を貫いていた。

 彼は本来ならば明後日が不寝番だったが、都合が悪くなったと言って、今夜に当番を代わってもらっていた。

「お前たち」

 襖の向こうから大黒屋の声がした。

「はっ」

 見張り役の最年長が答えた。

「終わったぞ」

「はっ」

 最年長の者が襖を開けた。

 大黒屋は立ち上がって、着流しの小袖に帯を結んでいるところだった。

 仙千代は、褥の上でぐったりして、まだ荒い息をついている。

 膝を閉じ合わせる気力も残ってないのか、両脚を大きく開いたまま投げ出している。

 身請けされたばかりの頃に比べて、体力は落ちており、激しい行為の後、立って歩けるほどに回復するまで、時間を要するようになっていた。

「さっさと起きろ」

 大黒屋は仙千代の腰を軽く足で蹴った。

 仙千代はのろりと寝返りをうって横向きになり、手のひらを畳につけると、体を起こそうと腕に力を入れて踏ん張った。

「後は頼んだぞ」

「はっ」

 先ほどまでの劣情が嘘のように、大黒屋は涼しい顔で退室した。

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