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第16章 鞭打ち

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「恥ずかしげもなく人の眼前で恥部をおっぴろげて放尿するとは、まさに犬畜生の如き振る舞い。まこと、けしからぬ」

 男は重々しく述べた。

「左様にございます。我々がいくら下の躾をしようにも、この便所穴は、まったく覚えるつもりがないのです」

 大黒屋も真剣な面持ちで言うと、男のほうに向き直り、頭を下げた。

「お代官様、もう二度とお漏らしなど出来ぬよう、この便所穴めを懲らしめてやってくださいませ」

「苦しゅうない」

 男はうなずくと、再度、お雪のほうに目を向けた。

「何故、お漏らしをした?」

「我慢できなかったからです……」

 そう答えたお雪の声は、今にも消え入りそうだった。

「何故、我慢できぬのだ?」

 うなだれるお雪に、男は重ねて訊いた。

「あ、あ、あの……朝に一度、厠へ行ったきり、頼んでも行かせてもらえず……」

「左様なことは聞いておらぬ」男の声は険しくなった。「何故、今この場で漏らしたのかと聞いておるのだ!」

「ひどい苦痛で、わけがわからなくなり……気がついたら、漏らしていました……」

「ひどい苦痛で、わけがわからなくなった、だと?」

 男は眉をつり上げた。

「さような下手な芝居をしても無駄だ。お前は蔭間上がりで、数え切れぬほどの男に嵌められた便所穴だ。これくらいはなんともないだろう」

 自らの小便で濡れた畳の上で、ぐったりとしているお雪に、男は冷たく言い放った。

「今もお前は同心連中の便所穴で、来る日も来る日も数多あまたの肉棒を咥えこんでいることは知っておる。たった二本くらい誤差の範囲、屁でもないはずだ」

 仙千代は、男の言い分は間違っており、理不尽な言い掛かりに過ぎないことはわかっていた。

 本来なら出すところに入れられて、抜き差しされるのだ。

 何度やられても慣れるものではなく、むしろ、酷使されて切れたり腫れているところを、あんなに激しく犯されるのは耐え難い苦痛であり、ひどく体力を消耗する。

 しかし、仙千代の立場では口出しすることなど許されるはずもなく、押し黙っているしかなかった。

「自分が漏らしたものを舐め取りなさい」

 男は冷酷に命じた。

 お雪は、何を言われたのか理解できないと言うように、呆然と男を見た。

「小便を舐めろと言っておる、お前の舌を使ってな」

 男は重ねて命令した。

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