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第11章 虐待

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 この場から今すぐ走って逃げ出したい衝動をなんとか抑えたものは、折檻の恐怖だった。

「おい、淫売、もそっと近くに寄らんか」

 客は仙千代に命じた。

 その声に込められた侮蔑や嘲りの棘が、仙千代の胸をチクリと刺す。

 それでも仙千代は、客を怒らせないために、近くに寄って正座をした。

「お雪、その淫売の穴をきれいにしなさい」

 かまぼこを食べ終え、畳に落ちたクズを舌で舐め取っているお雪に、客は命じた。

「はい、旦那様……」

 お雪は客に向かって深く頭を下げると、また仙千代のほうに這いずってきた。

 仙千代の小袴を脱がせ、下帯を取り、四つん這いにさせる。

 菊座を舌で舐められる感覚に、仙千代は驚き、

「お、お雪さん!」
 声を上げて振り向いた。

「おい、淫売、誰が動いていいと言った? おとなしく四つん這いになりなさい」

 客の冷たい叱責に、仙千代は元の姿勢に戻った。

 お雪の舌が、ねちゃねちゃと音を立てて、仙千代の菊座を舐めまわす。

 ややあって、舌の先を尖らせて、蕾の中に入ってこようとする感覚に、仙千代は思わず力を込めて入口を閉ざした。

 すると、お雪は両手でそうっと仙千代の尻臀を割り開き、くちびるを押し当てた。

 蕾全体を口で吸いながら、その中心に舌先を潜り込ませようとしてくる。

 未知の感覚に、仙千代は思わず腰を引いた。

 突然、客は立ち上がると、手にした竹根鞭──柔軟性のある竹の根を細工して作った乗馬用の鞭で、お雪の背中を打った。

「ああッ!」
 お雪を悲鳴を上げ、その場にうずくまる。

「お許しを、お許しを、お許しを……!」

 身を守るようにうずくまり、お雪はガタガタと震え、涙声で許しを乞うた。

 その傍らで、客は鞭で虚空を叩く。

 ビュッと恐ろしい音がして、お雪は「ヒッ」と声を上げ、さらに首をすくめて縮こまった。

「おい、淫売」
 客は鞭の先で仙千代を指した。

「お前が儂の言うことを聞かなければ、この鞭で……」

 そう言うと、またしてもお雪の傍らの空間を鞭打ち、お雪は恐怖に耐えきれず、もはや言葉にならない泣き声を上げた。

「お雪を打つ。わかったか?」

「申し訳ありません、なんでも言うことを聞きます。お雪さんを打たないでください」

 仙千代は客に頭を下げると、素早く四つん這いの姿勢に戻った。
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