色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

丸井マロ

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第8章 新入り

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「お尻に入れられる道具は、毎日、少しずつ太くなって、しまいには、大人の男根と同じくらいの大きさになる。それを抜き差しできるようになれば、仕込みは終了。旦那様に味見をされて合格すれば、その日から客を取らされる」

「そうなんだ……」

 蔭間が後門性交に恐怖心を抱かないように、かつ、それを出来るようにすることが金剛の役目だとは知りつつも、仕込みの実践的な内容を知って、仙千代は嫌悪を強くした。

 この時代、社会全体が性に対しておおらかではあったが、それでも、初潮を迎える前の少女と性交するのは「外道」とされた。

 吉原に売られた女郎でも、初潮を迎える前の娘は、見習いとして修行をしたり下働きはしても、客を取ることは厳しく禁じられていた。

 しかし、蔭間──男子となると、途端に十や十一の子供が性の対象となり、売り物にされてしまうのだ。

「ここは地獄穴、か……」

 お雪の言葉を思い出す。

 地獄穴と呼んだ川上屋よりも嫌な客に身請けされ、泣きながら駕籠に揺られて巣立っていったお雪。

 彼はどうしているのだろうか。

 相手との情交が良くない、あるいは苦痛であることはどうしようもないとしても、ここにいるときよりは、少しでも自由や幸せを感じられる暮らしをしていれば良いのだが──仙千代はそう願わずにいられなかった。

「お雪さん、元気でいるかな?」

 お蘭も偶然、仙千代と同じことを考えていたようだ。

「お雪さん、すごい色気があったけど……ここにきた当初は、ほんの小童こわっぱだったんだって。それが、喜八に仕込まれるうちに、みるみる間に化けたって。皆が言ってる……喜八は凄腕だって」

「凄腕の金剛か……」

 興味はあるが、あまり関わり合いたくはないと、仙千代は思った。

 素人の少年が、みるみる間に妖しい色香を撒き散らす夜の花に化けるような体験など、自分の身に起きて欲しくはない。

 喜八が自分の担当ではなくて良かった、というのが、正直なところである。

「そのかわり、仕込みはきついみたい。最初のうちはそうでもないんだろうけど、そのうち、お雪さん、ぐったりして腰が立たなくなって、喜八に抱えられて部屋に戻ってくることが多くなったんだって」

「……」

 ふいに、静かに襖が開いて、お由宇が部屋に帰ってきた。

 顔は見えなかったが、すすり泣いているのは気配でわかった。

 彼は仙千代に背を向けて布団に入ると、頭まですっぽり夜着をかぶった。

 ひとりで泣きたい夜もある。

 お蘭と仙千代は、寝たふりをしながら、お由宇の忍び泣く呼気を黙って聞いていた。
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