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第8章 新入り

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 それが幸か不幸かは、仙千代にはわからない。

 しかし、数え年で十や十一の子供と後門性交をしたがる客も、それを商売にして金儲けをする者も、外道だとは思った。

 まだあどけないお由宇が売られてきたのを見たせいで、今日はとくに感傷的になっているのかも知れない。

「ああ、胸がヒリヒリして、寝衣に触れるだけで痛いよ。もう毎日毎日うんざりだ」

 よほど嫌な客を引いたのか、お蘭はいつになく愚痴っぽくなっていた。

「女のまあるくてやわらかな胸ならわかるけど、男が男の胸を舐めたり噛んだりこねくり回して、なにが楽しいんだろ?」

 それは仙千代もかねてから不思議に思っていたので、「なんでだろうね?」と問い返すしかなかった。

「それで『気持ちいい?』と聞いてくるから、お世辞で『気持ちいい』と言ってあげると、真に受けて喜んじゃってさ。馬鹿みたい。こっちは痛くて気持ち悪いだけ。みーんな、まとめて地獄に落ちやがれ」

 亭主に聞かれたら叱られそうな本音を、お蘭はあけすけにぶちまけた。

 歳が近く、布団を隣に並べているお蘭と仙千代は、だいぶ打ち解けて、おたがいに胸の内を話せるようになっていた。

「お由宇ちゃん、こんな遅くまで、なにをしているんだろう?」

 仙千代は、お蘭と反対側の隣の、空いている布団を見た。

「ちょうど喜八に仕込まれている最中じゃないかな」

「今日、ここに来たばかりなのに?」

「お仙ちゃんも、ここに来た日に客を取らされたじゃない。そういうところなんだよ、ここは」

 お蘭は、惚れた腫れたの機微には疎いが、蔭間の現実を、そして世の中のことを、仙千代よりもよくわかっていた。

「どんなことをされているんだろう?」

 仙千代は、心配と興味半分で、夕方の話の続きを切り出した。
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