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第6章 生臭坊主

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 翌日は、また「ちょんの間」に逆戻りだった。

 昼から深夜まで、五人の客を取らされた。

 乳首をねぶられ、痛みに身をよじって泣く仙千代を見て、客は感じていると考え、男根をしゃぶらせてやれば、蔭間がよろこぶと思っている。

 そんな男たちを、内心では馬鹿みたいと思っても、その馬鹿どもを怒らせないように機嫌をとって、感じているふりをする。

 あらかじめ菊座はふのりで濡らして慣らしておき、挿入前には口と舌で客の男根にたっぷりふのりを塗りつける。

 それでも、力ずくで突っ込まれ、馬鹿みたいな勢いで抜き差しされるのは、苦痛以外のなにものでもなかった。

「く、口に出して!」

 痛みに泣きながらも、仙千代は客に頼んだ。

 この時代、尻の中に出されると痔になると考えられていた為、中に出された場合はすぐに厠に行って尻から子種をひり出し、掻き出さねばならなかった。

 しかし、川上屋の亭主は、蔭間のその行動が客を興醒めにさせると考え、客に口の中に出させて飲精したり、顔面などに出すように誘導し、出されたものは舐めとるようにと、蔭間をしつけていた。

 競合する他の蔭間茶屋との差別化を図ると同時に、蔭間の大事な商売道具である菊座を守り、良い状態を長持ちさせるためでもあった。

 その結果、川上屋の蔭間は子種を舐めたり飲むのが好きなスキモノぞろいと評判が立ち、客が増え、芳町の蔭間茶屋の中でも、川上屋の蔭間はとくに忙しかった。

 仙千代は、口の中に出されるよりも、顔面にかけられるほうが不快だった。

 どのみち、客の子種を舐め取り、汚れた男根を口で清めねばならないのは同じこと。

 それならば最初から口の中にだされるほうがよい。

 しかし、客の中には、蔭間の嫌がることをしたがる者も少なくなかった。

 仙千代は顔面にかけられ、なまあたたかいものが、閉じたまぶたから頬へと、顔を伝い流れていく。

 人として扱われていない己の立場の惨めさを、まざまざと思い知らされた。

「どうした? 舐めたいんだろう?」

 客は、仙千代を見下ろし、ほくそ笑んだ。

 仙千代は、客を怒らせないために、己の指で客の子種を絡めとり、それを舐めとった。

 すると客は、「美味うまいか?」と訊ね、「美味おいしい」と答えると、スキモノだのなんだの嘲笑を浴びせる。

 仙千代は、美味しいわけがあるか、手前が舐めてみろ、と叫びたくなるのをぐっと堪え、握りしめる手のひらに爪が食い込んだ。

 ──お雪さんのように、常連の上客だけで月に百両も稼げるなら、ちょんの間の低俗な馬鹿どもを相手にしないで済むのに。

 ズキズキする乳首と、酷使された尻の痛み、そして、全身にのしかかる重い疲労と共に仙千代は布団に入ると、今夜も夜着をかぶって泣いた。
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