色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

丸井マロ

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第5章 苦界

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「その前の年にも、川上屋から足抜けした蔭間が出たんだって」

 訳知り顔で、お蘭は囁いた。

「その子は、皆が見てる中で丸裸に剝かれて梁に吊るされて、金剛たちに竹鞭や木刀で打ち叩かれて……三日目に、折檻中に死んでしまったみたい。私は話を聞いただけで、見てはいないけど……」

 お蘭は一段と声をひそめ、仙千代の耳元に口を寄せた。

「その子、吊るし叩きにされている最中、呪ってやる、呪い殺してやるって、叫んでいたんだって」

 仙千代は、その情景を思い浮かべて、ぞっとした。

 折檻死した蔭間は祟るから、死後も人として扱わず、畜生道に落とす──その迷信と慣習は、蔭間茶屋の亭主や金剛たちの経験と、そこからくる罪悪感や後ろめたさを故由としているのではないかと思った。

「まあ、その子は、ちょっと訳ありの子だったみたいで」

「訳あり?」

「うん、あまり体が丈夫じゃなくて、臥せることが多かったみたい。だから、あまり稼げなくて、旦那さまに『穀潰ごくつぶし』と呼ばれて嫌われていたんだって」

 穀潰しとは、文字どおり、働かずに飯を食い潰す者を罵る言葉である。

 蔭間は、その見た目の優美さとは裏腹に、非常に体力を消耗する肉体労働で、体が丈夫であることが必須条件と言えた。

 ここに来るまで、武士として日々武芸の鍛錬に励み、体を鍛えてきた仙千代でさえ、一日が終わる頃にはどっと疲れ果てて、脱いだものを畳んだり、物を右から左に動かすことさえ億劫に感じてしまうほどだ。

 あまり体力のない者は、疲労がたまって弱ったり、やまいがちになるのも無理はないだろう。

 過酷な労働で臥せてしまった者を、まるで怠け者であるかのように罵るのは公正ではないと、仙千代は思った。
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