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第5章 苦界
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狭い部屋に、蔭間たちが布団を並べて眠っていた。
この時代、夜間の照明はもっぱら行灯か蝋燭である。
蝋燭は明るいかわりに高価であるため、使用しているのは、大店や高級武家などの裕福な家か、蔭間茶屋などの色街や遊郭にある店に限られていた。
また、行灯油も庶民にとっては決して安いものではないので、照明代を節約するために夜は早く寝て、朝は夜明けと同時に起き出して活動を始めるのが一般的だ。
社会全体が現在よりも朝型で、多くの者は昼過ぎには仕事を終えて、まだ明るいうちに芝居見物や物見遊山、遊びや娯楽に出かけたのである。
子の刻──現在の時間で深夜零時を過ぎると、川上屋は店の入口を閉め、店内に残っているのは、まだ蔭間と遊んでいる客だけになる。
泊まり客を相手にしている蔭間以外は、それぞれの務めを終えて客を玄関まで送り出すと、化粧を落として寝衣に着替え、この蔭間部屋で睡眠をとった。
朝は、堅気の職業よりは遅いが、それでも九時には起きて、贔屓の客に手紙を書いたり、湯あみをして体を清め、石榴の皮を干して粉末にしたもので肌を磨き、下の毛や体毛が生えている者は一本ずつ毛抜きで抜き、衣装に着替え、髪を結い、化粧をしたりと、なんやかんやで午前中も忙しく過ごし、お昼には店に出た。
この時代、夜間の照明はもっぱら行灯か蝋燭である。
蝋燭は明るいかわりに高価であるため、使用しているのは、大店や高級武家などの裕福な家か、蔭間茶屋などの色街や遊郭にある店に限られていた。
また、行灯油も庶民にとっては決して安いものではないので、照明代を節約するために夜は早く寝て、朝は夜明けと同時に起き出して活動を始めるのが一般的だ。
社会全体が現在よりも朝型で、多くの者は昼過ぎには仕事を終えて、まだ明るいうちに芝居見物や物見遊山、遊びや娯楽に出かけたのである。
子の刻──現在の時間で深夜零時を過ぎると、川上屋は店の入口を閉め、店内に残っているのは、まだ蔭間と遊んでいる客だけになる。
泊まり客を相手にしている蔭間以外は、それぞれの務めを終えて客を玄関まで送り出すと、化粧を落として寝衣に着替え、この蔭間部屋で睡眠をとった。
朝は、堅気の職業よりは遅いが、それでも九時には起きて、贔屓の客に手紙を書いたり、湯あみをして体を清め、石榴の皮を干して粉末にしたもので肌を磨き、下の毛や体毛が生えている者は一本ずつ毛抜きで抜き、衣装に着替え、髪を結い、化粧をしたりと、なんやかんやで午前中も忙しく過ごし、お昼には店に出た。
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