色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

第４章 揚げ屋

５

　経験豊富な蔭間なら機転をきかせて、心にもない甘言や噓をいくらでも並べたてて客をあしらうことも出来ただろう。

　だが、もともとの育ちがよく、蔭間になって日の浅い仙千代は、咄嗟に噓を吐くような悪知恵は働かなかった。

「念者の名を言わんか」

　乳首への責めは段々ときつくなる。

　それでも仙千代は頑として口を割らなかった。

「名を言え」

「嫌です……」

　客は仙千代の背後から抱きつくように、両手で両方の乳首を摘まむと、引っ張り、左右に捩じりあげる。

「ああっ、痛い、痛い！　やめて、やめてぇ……！」

　仙千代は正座したまま、痛みに身をよじって泣くが、客は乳首を責めるのを止めなかった。

「お仙ちゃん、言っちまいな！」

　見かねた佐吉が声を上げた。

　しかし、仙千代は涙を流しながら、首を横に振る。

「強情な子だ」

　客は吐き捨てると、仙千代から離れた。

　仙千代は、袖の長い着物を縛られた両腕に絡ませ、うつぶせに倒れて荒い息をついていた。

「絶対に念者の名を吐かせてやる」

　そう言うと、客は足で仙千代の頭を踏みつけ、ぐりぐりと畳にこすりつけた。

「最後に、もう一度だけ機会を与えてやろう。念者の名は？」

「……」

　仙千代は答えなかった。

　この客の家臣であろう若い男が、後ろ手に縛られた仙千代の右手の小指をつまむと、その指先に何かを挟んだ。

「……！」

　固いものに指先を嚙まれる痛みに、目隠しの下で仙千代は目を見開いた。

「これは竹ばさみだ。念者の名を言わなければ、お前の乳首に、これを嚙ませる。さあ、言え」

「……嫌です」

「お仙ちゃん！」

　佐吉は慌てて声を上げるが、

「もとはといえば、お前のしつけが甘いからだぞ」

　客の矛先は佐吉に向かった。