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第4章 揚げ屋

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 客は何度も指を舐めて濡らしながら、指先で小さな円を描くように、仙千代の左右の乳首を交互になでた。

 力は入っていなかったが、毎日何人もの客にいじくられて腫れているそこは、やさしい愛撫でさえ痛みにしか感じられなかった。

 仙千代は額に玉の汗を浮かべ、痛みに耐える。

「そんなに痛いのかい? 気の毒に……」

 言葉とは裏腹に、客の声は笑っていた。

「一体、毎日毎日どれだけの男にねぶられれば、こんなにひどく腫れ上がるのかのう? ええ? お前は今まで何人の男と乳繰り合ってきたんだい?」

「わ、わかりません……」

 痛みに震える声で、仙千代は答えた。

「わからないだと? わからなくなるほど大勢の男に、こうして……」

 そう言いながら、客は親指と人差し指で、乳首をつまんだ。

「ああっ!」

 仙千代は声をあげて身をよじるが、客は乳首をつまむ指を離さなかった為、そこは千切れるかと思うほど引っ張られた。

「ほら、お前が身動きするから、痛い目に遭うんだ」

 客は乳首を摘まんだまま、軽く左右に転がした。

「うう……」

 仙千代は呻くが、痛みから逃げようと体を動かすと、乳首が引っ張られて、さらに強い痛みを味わうとわかったので、全身に力を入れて痛みに耐える。

「こうやって……毎日、数え切れないほどたくさんの男に、ここを……こうされてきたんだろう?」

「はい……」

「故郷の念者にも、同じようにされたのかい?」

「……」

 仙千代は答えられなかった。

 蔵人が汚されるような気がした。

 男娼に落ちぶれ、己の体がどれだけ汚れようと、蔵人の思い出だけは汚されたくなかった。

「念者の名は何という?」

 その問いに答えずにいると、乳首をなぶる指がせわしくなった。

「痛……ッ!」

「痛くされたくなければ、念者の名を言うんだ」

 客は二本の指で乳首をつまみ、押しつぶすように力をいれた。
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