色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

丸井マロ

文字の大きさ
上 下
17 / 120
第4章 揚げ屋

しおりを挟む
 仙千代と佐吉は、いかにも高級そうな店構えの料理茶屋に入った。

 出迎えた女将に、佐吉が川上屋の名を告げると、二階の座敷に案内された。

「川上屋です。お仙を連れてまいりました」

 障子の前にひざまずいて、佐吉が述べた。

「入れ」

 中から応えがあった。

「失礼します」

 佐吉は障子を開けて、中に入るように仙千代を促した。

 仙千代は敷居の前で一礼すると、室内ににじり入った。

「お初にお目にかかります、仙と申します、よろしゅうお願い申し上げます」

 そう口上すると、深々と頭を下げた。

 座敷では先まで酒宴が開かれていたようだが、今は若い男が一人、いるだけだった。

「会津藩の大目付のせがれなんだって?」

 男は仙千代を一瞥した。

 その口調と身なりから、この若い男は武士であるとわかった。

「はい、わけあって没落しましたが、会津藩の大目付の家の子だったことに偽りはありません」

 佐吉が答えた。

「羽織と袴を脱ぎなさい」

 男は命じた。

 仙千代は、佐吉に手伝われて羽織と袴を脱いだ。

「近くに寄れ」

 男に言われるまま、振袖姿の仙千代は相手のそばに行き、再度、頭を下げた。

 その仙千代の顎をつかみ、顔を上げさせると、まるで茶器などを品定めするような目で、男はまじまじと仙千代の顔面を観察する。

 ──冷たい目。

 初めて揚げ屋に呼ばれた嬉しさや、さっきまでの心躍るような解放感は消え失せ、仙千代の顔は緊張にこわばった。

「なかなかの別嬪べっぴんじゃないか、これなら我が殿も御満足されるに違いない」

 男は薄笑いを浮かべると、懐から白い手ぬぐいのようなものを取り出した。

「これで目隠しを」

「はい」

 佐吉はそれを受け取り、仙千代に目隠しをした。

「お仙ちゃん、お客様に言われたとおりにしてください」

 困惑する仙千代の耳に、佐吉がささやいた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

上司と俺のSM関係

雫@更新予定なし
BL
タイトルの通りです。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...