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「うわぁぁぁっ!!!」
隣に寝ているユサの声で目を覚ました。
耳を抑え、布団の中で蹲る姿は、雷に怯える子供同然だ。
「シオン、シオン!どこ?!」
「ユサ、俺は隣に居る。大丈夫だよ。」
「ちょ、どうしたんです?!」
説明するのを忘れたからか、キヨが部屋に駆け込んできた。
「あー、ごめんな。ユサは昔の事がトラウマで、すこぉし夜泣きすんだ。」
「そうですか、ならよかった…いや、よくはないんですけど…」
キヨは安心したのか、その場でへたりこんだ。
「ありゃー、キヨくんごめんねぇー、説明してなかったぁー」
トウマも来て、廊下にあかりがついた。
付けたのはロマらしく、煩いとでも言いたそうな顔だが、トウマが事情説明をすれば、「あっそう」とだけ言って部屋に入ってしまった。
いつの間にか落ち着いたユサは、俺の腹に顔を填めて目じりに涙を溜めていた。
「大丈夫か?」シーツで涙を拭いながら聞くと、返答の代わりに抱きしめる力が強くなる。
…翌朝、俺とユサは目の下に薄いクマを作ってあさイチに食堂の隣の厨房に乗り込んだ。
「ユサ、昨日は大丈夫だったか?」うっしーは昨日来なかったが、監視カメラの映像を見たのだろう。
「大丈夫だよ。ごめんな、シオン。」
また俺の腹に顔を填める。
「ちょ、くすぐった、」
そのまま顔をグリグリして息を吹き込まれると、シャツが上手くズレてくすぐったい。
そのまま少しじゃれていると、厨房の開く音がした。
「…何してんの?」
今日の当番はトウマのハズだ。
「ロマ、珍しいな。」
「…昨日サボったから。」
それだけ言って、今日の朝ごはん表を覗いた。
俺らの朝ごはんは、担当の栄養士が調整しているために、毎日栄養のとれた献立が食卓に並ぶ。俺らは調理手順や献立を見て作るだけだ。
「僕らも手伝うよ。」ユサが言った。
「あぁ。…つか、実際は俺らの当番だしな。」
そう言ってトレーナーの袖をまくると、ロマには冷たく「いい。」と言われた。
「いや、僕ら当番だし、」
「だからいいって。」
頑なに断り続けるロマにさすがにカチンと来て、あのな──と言いそうになる。
「意味わからん!一体ロマは何がしたいんだ!」
ユサが叫んだ。
今は5時半で、まだ当番の人は作り始めなくていい。
あと30分で片付けろよ、とうっしーは口パクで伝えてきた。
「何がしたいって、朝ごはん作るに決まってる。」
「独りで5人とか6人の朝ごはん作れんの?!ロマが昨日サボったから作るっていう行動に筋は通ってると思うけど、僕らも当番制でやっとなのに独りで作れる?!」
「無理だからこんなに早くに起きてやって──」
「それが意味わからんって言ってんだ。」
ユサがロマの細い肩をワシ、と掴んでトーンの低い声で言う。
まるで、自分が何をしているのかわからない子供に噛み砕いて伝えるように、ゆっくりと、でも強く、芯の通った声で言った。
「なにも独りでやらなくても、僕らがいるじゃん。」
「なんで一人でやっちゃぁいけないの?私、一人で出来るのに。」
ぽた、ぽたとロマの目から涙が零れ落ちた。口調も少女のようだ。
「…ロマ、僕が言っている独りと、ロマが言っている一人は違うよ。君はみんなと一緒に仲良く出来ているようで、出来てない。それはわかっているんでしょ?だけど、仲良くする意味がないと自分に言い聞かせてる。」
そこまで言ったところで、ロマはユサの手を振りほどいて厨房から駆け出した。
「あ、ロマ──」
俺がノブに手をかけると、うっしーは「必要ない」とだけ言って厨房から出ていった。
「…ごめん、シオン。」
「とりあえずメシ作ろうぜ!」
ロマは、一体どうすれば俺達と打ち解けてくれるんだろう。
✳
「っ…は、…は、」
病院から少し離れた所で息を整える。
今持っているのはスマホだけ。
スマホには2~3万くらいは入っていたハズだ。
これでカバンを買って、普通の人のように…と思ったところで、強い風が吹いた。
「っ、今日は風が強いのか…」
ガードした腕には、クロユリが一面に咲いていた。
「怒っ…て、る?」
私の病気は感情とリンクしており、悲しい時は水色、嬉しい時はピンクなど、感情によって咲く花の種類、色は異なる。
ただ、いつもこのような状況になるとクロユリが咲いた。
「(街に降りるのはむり、か…)」
顔をあげると…
「…君、どうしたの?」
隣に寝ているユサの声で目を覚ました。
耳を抑え、布団の中で蹲る姿は、雷に怯える子供同然だ。
「シオン、シオン!どこ?!」
「ユサ、俺は隣に居る。大丈夫だよ。」
「ちょ、どうしたんです?!」
説明するのを忘れたからか、キヨが部屋に駆け込んできた。
「あー、ごめんな。ユサは昔の事がトラウマで、すこぉし夜泣きすんだ。」
「そうですか、ならよかった…いや、よくはないんですけど…」
キヨは安心したのか、その場でへたりこんだ。
「ありゃー、キヨくんごめんねぇー、説明してなかったぁー」
トウマも来て、廊下にあかりがついた。
付けたのはロマらしく、煩いとでも言いたそうな顔だが、トウマが事情説明をすれば、「あっそう」とだけ言って部屋に入ってしまった。
いつの間にか落ち着いたユサは、俺の腹に顔を填めて目じりに涙を溜めていた。
「大丈夫か?」シーツで涙を拭いながら聞くと、返答の代わりに抱きしめる力が強くなる。
…翌朝、俺とユサは目の下に薄いクマを作ってあさイチに食堂の隣の厨房に乗り込んだ。
「ユサ、昨日は大丈夫だったか?」うっしーは昨日来なかったが、監視カメラの映像を見たのだろう。
「大丈夫だよ。ごめんな、シオン。」
また俺の腹に顔を填める。
「ちょ、くすぐった、」
そのまま顔をグリグリして息を吹き込まれると、シャツが上手くズレてくすぐったい。
そのまま少しじゃれていると、厨房の開く音がした。
「…何してんの?」
今日の当番はトウマのハズだ。
「ロマ、珍しいな。」
「…昨日サボったから。」
それだけ言って、今日の朝ごはん表を覗いた。
俺らの朝ごはんは、担当の栄養士が調整しているために、毎日栄養のとれた献立が食卓に並ぶ。俺らは調理手順や献立を見て作るだけだ。
「僕らも手伝うよ。」ユサが言った。
「あぁ。…つか、実際は俺らの当番だしな。」
そう言ってトレーナーの袖をまくると、ロマには冷たく「いい。」と言われた。
「いや、僕ら当番だし、」
「だからいいって。」
頑なに断り続けるロマにさすがにカチンと来て、あのな──と言いそうになる。
「意味わからん!一体ロマは何がしたいんだ!」
ユサが叫んだ。
今は5時半で、まだ当番の人は作り始めなくていい。
あと30分で片付けろよ、とうっしーは口パクで伝えてきた。
「何がしたいって、朝ごはん作るに決まってる。」
「独りで5人とか6人の朝ごはん作れんの?!ロマが昨日サボったから作るっていう行動に筋は通ってると思うけど、僕らも当番制でやっとなのに独りで作れる?!」
「無理だからこんなに早くに起きてやって──」
「それが意味わからんって言ってんだ。」
ユサがロマの細い肩をワシ、と掴んでトーンの低い声で言う。
まるで、自分が何をしているのかわからない子供に噛み砕いて伝えるように、ゆっくりと、でも強く、芯の通った声で言った。
「なにも独りでやらなくても、僕らがいるじゃん。」
「なんで一人でやっちゃぁいけないの?私、一人で出来るのに。」
ぽた、ぽたとロマの目から涙が零れ落ちた。口調も少女のようだ。
「…ロマ、僕が言っている独りと、ロマが言っている一人は違うよ。君はみんなと一緒に仲良く出来ているようで、出来てない。それはわかっているんでしょ?だけど、仲良くする意味がないと自分に言い聞かせてる。」
そこまで言ったところで、ロマはユサの手を振りほどいて厨房から駆け出した。
「あ、ロマ──」
俺がノブに手をかけると、うっしーは「必要ない」とだけ言って厨房から出ていった。
「…ごめん、シオン。」
「とりあえずメシ作ろうぜ!」
ロマは、一体どうすれば俺達と打ち解けてくれるんだろう。
✳
「っ…は、…は、」
病院から少し離れた所で息を整える。
今持っているのはスマホだけ。
スマホには2~3万くらいは入っていたハズだ。
これでカバンを買って、普通の人のように…と思ったところで、強い風が吹いた。
「っ、今日は風が強いのか…」
ガードした腕には、クロユリが一面に咲いていた。
「怒っ…て、る?」
私の病気は感情とリンクしており、悲しい時は水色、嬉しい時はピンクなど、感情によって咲く花の種類、色は異なる。
ただ、いつもこのような状況になるとクロユリが咲いた。
「(街に降りるのはむり、か…)」
顔をあげると…
「…君、どうしたの?」
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