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首都ヨルセウス
百万回転生すればかな
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「俺はそのために勇者にされたってことか?」
「我が生まれた経緯を考えるとそうなるな」
ヴァルグロはそう言って酒を呷る。
魔王が生まれた経緯を聞いて、俺が勇者になった理由は理解できた。
「これを聞いてお前はどうする? 神へ反逆するならこの国はお前にやろう。我と友好関係を気づこうじゃないか」
「別に俺はキレてない。俺は前にいた世界が嫌になって逃げだしたんだしな。こっちに連れてきてもらった恩は果たすよ」
元いた世界に何の未練もない。
ムカつくのは騙された事だけだ。
「つまり我は、意地でもお前を殺さなければいけないわけだ」
「それは叶わないけどな」
俺がそう言った瞬間、赤い光が輝いた。
百万回見た光。
それは魔王の心臓が表に出てきた合図で、百万回続いた転生の最後の戦いの合図でもある。
一瞬激しい光を放ったそれは、こちらに向かって真直ぐ向かって来た。
その向かって来た光がヴァルグロに届く前に一刀両断する。
「これでお前がしようとしたことはできなくなったろ?」
「気づいていたわけか」
ヴァルグロは密かに倒された魔石を回収していた。
魔王の心臓が戻ったらそれを使い、グロリアの様に変化するつもりだった。
さっきの話もその魔石を集めるための時間稼ぎだ。
「策はもうないが、みすみすやられるわけにはいかないんでな【ミーティアシャワー】」
ヴァルグロが魔法を唱えると、空が光り出す。
無数の光る球体が空を埋めつくす、流星群の魔法。
この量は俺を倒すための魔法じゃない。
この国を、この世界を滅ぼすための魔法。
「この数ならばいくらお前でも打ち落とせまい」
「打ち落とす必要はないだろ【プロテクト】」
「は……? いくらお前が強くても、そのくらいで防げるはずは……」
世界を覆う防護の魔法を展開する。
無数に降り注ぐ流星群は防護の魔法に阻まれる。
「防ぎ切った、のか……」
「このくらいできる程度には転生したんだよ」
「何度転生すればそこまで強くなれるというんだ!!」
「百万回転生すればかな」
俺が言うとヴァルグロは体から力を抜いた。
さっきまでの力強さも、威圧感も無くなり、ただの非力な人間の様に成り下がる。
いや、非力な人間に戻った。
「もういい。もう全部終わりにしよう」
急にヴァルグロの体に魔力が溜まり始める。
徐々に大きくなるその魔力は、一点に集まり圧縮されていく。
「この世界ごとお前を殺してや――」
俺は魔王ヴァルグロの体を両断した。
【鴉雀無声】発動を無効にするスキルを使い、自爆するはずだった魔力は無に帰る。
そして切られたヴァルグロは再生するはずもなく、そのまま黒い霧になり姿を消した。
†
俺がみんなが待つ場所に下りると、フランとノノが抱き付いてきた。
「タクト様、おめでとうございます! 本当に凄いです。最後の魔法で私死ぬと思いました」
「本当に魔王を倒せるなんて、本当にお兄さんは勇者だったんですね!」
二人に抱き付かれるのはとても嬉しかった。
今まで倒した後にこんなに褒められたのは初めてだ。
いつもは倒して城で受勲して終わりだった。
乾いた拍手と、取り入ろうと近づいてい来る貴族だけで、本当に賞賛されたのは初めてな気がする。
「タクトくん、ありがとう。本当に魔王を倒せる人間がいるとは思ってなかったよ」
メイサから握手を求められ、その手を握る。
「皆さん、ありがとうございました。国を挙げての感謝は後日にしますが、一先ず国を代表してお礼を言わせてください」
王女が、俺達に頭を下げた。
「ノノさん、フランさん、シスさん。私を守っていただきありがとうございます。あなた達がいなければ今私はここに居なかったと思います」
王女が三人への謝辞を伝えると、普段は堂々としているノノまでがしどろもどろになりながら謝辞に答えた。
「如月拓斗様、魔王ヴァルグロの討伐、その他にもアグリールの件やハバリトスの壊滅の件、私の耳にも届いています。あなた様にはなんとお礼を言えばいいのかわかりません。ですが、これだけは伝えさせていただきます。この世界を守っていただきありがとうございます」
「それが俺の使命だったってだけだしな」
「そうだとしてもです。使命を果たしていただいてありがとうございます」
「どういたしまして」
それから疲れている四人を休ませ、俺達は王都に戻ることにした。
†
ヴァルグロを討伐した翌日、今日は受勲式が開かれる。
俺達もそれに出席するために控室に居た。
「本当に良いのかい?」
「俺はこういう人が多いのも嫌なんだよ。正直今日出席するのも嫌なくらいなんだからな。でも一生遊んで暮らせる金がもらえるって言うから我慢して出席するんだよ」
「僕としては願ったり叶ったりだけどね。君が魔王を討伐した功績を譲ってくれるんだから」
あの後、王都に戻った俺達は魔王討伐の受勲を拒否した。
理由は簡単で俺が人見知りだから、顔が世の中にバレたくないから。
それでも礼はしたいと言われたため、この世界で生きていくために報奨金だけ貰うことにした。
そしてどうしても魔王討伐の功績を受ける人間が必要ということになり、メイサにその座を譲ることにした。
メイサなら今までの経歴もあるし、俺が貰うよりも説得力があるだろう。
そんな理由で俺は式典には見守る側での参列だ。
「賞金を貰ってタクトくんはこれからどうするつもりだい?」
「キックスでのんびり楽しく過ごすさ」
俺達は受勲式に参列した後、十三番隊のトゥワイスの好意でキックスまで送り届けてもらった。
「帰ってきたな」
魔王討伐の情報はこちらにまだ届いていないのか、キックスの町は静かだった。
歩く人に挨拶をしながら自分の家に戻る。
「お兄さん、少し待ってください」
家のドアに手をかけると、ノノから止められてしまった。
自分で止めておいて、ノノはドアを開けて、フランと二人で家の中に入る。
「タクト様どうぞ、入ってきてください」
何か仕掛けられているのか?
でも何もなかったよな。
不審に思いながらドアを開ける。
「「おかえりなさい。タクト」」
二人が満面の笑みを俺に向け、迎え入れてくれた。
突然の事で固まってしまった俺に、シスが俺を揺らす。
「おかえりと言われたら言うことがあるだろう?」
「そうだよな」
俺は一度呼吸をする。
「ただいま」
俺は自分の家に帰ってきた。
「我が生まれた経緯を考えるとそうなるな」
ヴァルグロはそう言って酒を呷る。
魔王が生まれた経緯を聞いて、俺が勇者になった理由は理解できた。
「これを聞いてお前はどうする? 神へ反逆するならこの国はお前にやろう。我と友好関係を気づこうじゃないか」
「別に俺はキレてない。俺は前にいた世界が嫌になって逃げだしたんだしな。こっちに連れてきてもらった恩は果たすよ」
元いた世界に何の未練もない。
ムカつくのは騙された事だけだ。
「つまり我は、意地でもお前を殺さなければいけないわけだ」
「それは叶わないけどな」
俺がそう言った瞬間、赤い光が輝いた。
百万回見た光。
それは魔王の心臓が表に出てきた合図で、百万回続いた転生の最後の戦いの合図でもある。
一瞬激しい光を放ったそれは、こちらに向かって真直ぐ向かって来た。
その向かって来た光がヴァルグロに届く前に一刀両断する。
「これでお前がしようとしたことはできなくなったろ?」
「気づいていたわけか」
ヴァルグロは密かに倒された魔石を回収していた。
魔王の心臓が戻ったらそれを使い、グロリアの様に変化するつもりだった。
さっきの話もその魔石を集めるための時間稼ぎだ。
「策はもうないが、みすみすやられるわけにはいかないんでな【ミーティアシャワー】」
ヴァルグロが魔法を唱えると、空が光り出す。
無数の光る球体が空を埋めつくす、流星群の魔法。
この量は俺を倒すための魔法じゃない。
この国を、この世界を滅ぼすための魔法。
「この数ならばいくらお前でも打ち落とせまい」
「打ち落とす必要はないだろ【プロテクト】」
「は……? いくらお前が強くても、そのくらいで防げるはずは……」
世界を覆う防護の魔法を展開する。
無数に降り注ぐ流星群は防護の魔法に阻まれる。
「防ぎ切った、のか……」
「このくらいできる程度には転生したんだよ」
「何度転生すればそこまで強くなれるというんだ!!」
「百万回転生すればかな」
俺が言うとヴァルグロは体から力を抜いた。
さっきまでの力強さも、威圧感も無くなり、ただの非力な人間の様に成り下がる。
いや、非力な人間に戻った。
「もういい。もう全部終わりにしよう」
急にヴァルグロの体に魔力が溜まり始める。
徐々に大きくなるその魔力は、一点に集まり圧縮されていく。
「この世界ごとお前を殺してや――」
俺は魔王ヴァルグロの体を両断した。
【鴉雀無声】発動を無効にするスキルを使い、自爆するはずだった魔力は無に帰る。
そして切られたヴァルグロは再生するはずもなく、そのまま黒い霧になり姿を消した。
†
俺がみんなが待つ場所に下りると、フランとノノが抱き付いてきた。
「タクト様、おめでとうございます! 本当に凄いです。最後の魔法で私死ぬと思いました」
「本当に魔王を倒せるなんて、本当にお兄さんは勇者だったんですね!」
二人に抱き付かれるのはとても嬉しかった。
今まで倒した後にこんなに褒められたのは初めてだ。
いつもは倒して城で受勲して終わりだった。
乾いた拍手と、取り入ろうと近づいてい来る貴族だけで、本当に賞賛されたのは初めてな気がする。
「タクトくん、ありがとう。本当に魔王を倒せる人間がいるとは思ってなかったよ」
メイサから握手を求められ、その手を握る。
「皆さん、ありがとうございました。国を挙げての感謝は後日にしますが、一先ず国を代表してお礼を言わせてください」
王女が、俺達に頭を下げた。
「ノノさん、フランさん、シスさん。私を守っていただきありがとうございます。あなた達がいなければ今私はここに居なかったと思います」
王女が三人への謝辞を伝えると、普段は堂々としているノノまでがしどろもどろになりながら謝辞に答えた。
「如月拓斗様、魔王ヴァルグロの討伐、その他にもアグリールの件やハバリトスの壊滅の件、私の耳にも届いています。あなた様にはなんとお礼を言えばいいのかわかりません。ですが、これだけは伝えさせていただきます。この世界を守っていただきありがとうございます」
「それが俺の使命だったってだけだしな」
「そうだとしてもです。使命を果たしていただいてありがとうございます」
「どういたしまして」
それから疲れている四人を休ませ、俺達は王都に戻ることにした。
†
ヴァルグロを討伐した翌日、今日は受勲式が開かれる。
俺達もそれに出席するために控室に居た。
「本当に良いのかい?」
「俺はこういう人が多いのも嫌なんだよ。正直今日出席するのも嫌なくらいなんだからな。でも一生遊んで暮らせる金がもらえるって言うから我慢して出席するんだよ」
「僕としては願ったり叶ったりだけどね。君が魔王を討伐した功績を譲ってくれるんだから」
あの後、王都に戻った俺達は魔王討伐の受勲を拒否した。
理由は簡単で俺が人見知りだから、顔が世の中にバレたくないから。
それでも礼はしたいと言われたため、この世界で生きていくために報奨金だけ貰うことにした。
そしてどうしても魔王討伐の功績を受ける人間が必要ということになり、メイサにその座を譲ることにした。
メイサなら今までの経歴もあるし、俺が貰うよりも説得力があるだろう。
そんな理由で俺は式典には見守る側での参列だ。
「賞金を貰ってタクトくんはこれからどうするつもりだい?」
「キックスでのんびり楽しく過ごすさ」
俺達は受勲式に参列した後、十三番隊のトゥワイスの好意でキックスまで送り届けてもらった。
「帰ってきたな」
魔王討伐の情報はこちらにまだ届いていないのか、キックスの町は静かだった。
歩く人に挨拶をしながら自分の家に戻る。
「お兄さん、少し待ってください」
家のドアに手をかけると、ノノから止められてしまった。
自分で止めておいて、ノノはドアを開けて、フランと二人で家の中に入る。
「タクト様どうぞ、入ってきてください」
何か仕掛けられているのか?
でも何もなかったよな。
不審に思いながらドアを開ける。
「「おかえりなさい。タクト」」
二人が満面の笑みを俺に向け、迎え入れてくれた。
突然の事で固まってしまった俺に、シスが俺を揺らす。
「おかえりと言われたら言うことがあるだろう?」
「そうだよな」
俺は一度呼吸をする。
「ただいま」
俺は自分の家に帰ってきた。
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