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桜と夏祭り
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幽くんは賑やかなのを見ているのが好きらしいです。
人でも幽霊でも楽しそうにしているのを見ると嬉しいらしいのですが、自分がはしゃぐのはどうも苦手らしいです。
そんなわけで今日は夏祭りです。
近くの神社でやるお祭りで、出店も出ます。
残念ながら花火まではやらないので本当に地元のお祭りですが、幽くんと一緒ということもありとても楽しみです。
夕方からお母さんに浴衣を着せてもらいこれから出発します。
「玲爾準備できたの?」
残念ながら出発は幽くんとではなく弟の玲爾と一緒です。
「いや、姉ちゃん待ちだっただろ。なんで俺が遅いみたいに言われないといけないんだ」
「弟だから当然だと私は思います」
「最低の姉だな」
そんな姉弟らしい会話をしながら神社に向かいます。
「あんたそんな格好だとモテないでしょ。センスない」
「友達と遊ぶのにそこまでセンスはいらないだろ」
「友達と歩いてて同じクラスの好きな子にばったり会ったらどうするの?『えー、柳下くんってファッションセンスなさすぎてマジ引くんですけどー』って言われても知らないよ」
近所の祭りですからありえない話ではないと思います。
伝い伝わり私までセンス無の烙印を押されたくはありません。
「そもそもそんなこと言う女子に好かれたくないし」
「あんたの言う通りだよ」
正論でした……。
明らかに悪目立ちしているグループの女子の真似になっていました。
私もそういう人たちと一緒にいたくはありません。
「姉ちゃんも気合入れてるけど、気合い入れ過ぎて彼氏に引かれるなよ? そんな簪どこに会ったんだよ」
「おばあちゃん家に行った時にもらった。小野小町って呼んでもいいんだよ」
「呼ばれたいの? 明らかに名前負けだけど」
「殴られたいならそう言えばいいのにいくらでも殴ってあげるから」
今なら殴っても文句は言われないと思います。
「殴られたら姉ちゃんの彼氏に言いつけに行く」
「それは卑怯じゃない!?」
それは姉弟でも反則技だと思います。
「なら私もあんたの好きな人を探し当ててあることないこと言いふらすしかないか」
「いや、さっきから俺に好きな人がいる感じで話が進んでるけどいないからな」
「それは嘘だよ。わかるよ、お姉ちゃんは全てお見通しだよ。中学生男子が恋愛しないなんてありえないってことはお姉ちゃん知ってるよ」
欲の塊である中学生男子が人間の三大欲求に勝てるわけはありません。
勝てるならそれは中学生とは呼べません。仙人の類です。
「それって姉かどうかは関係ないじゃん。一般論って言うんじゃない?」
「恋愛大好きな私から見たらあんたは恋をしているんだよ。確定事項だから。ほらさっさと吐いちゃいなよ、それをネタにこれから散々いじり倒してあげるから」
「それを聞いて、俺の好きな人はねあの人なんだ。とか言ってたら俺頭おかしいだろ」
そう言われてしまうと返す言葉はありません。
確実にM気質があるので逆に喜ばれてしまいそうです。
「それなら私が誠心誠意恋の応援をしてあげるから洗いざらい白状してみなよ」
とびっきりの笑顔で親指を立てます。
もうどこからどう見ても頼りになるお姉さんです。
「さっきの発言をなかったことにして話を進めてどうする。第一俺に好きな――」
「ごめん、幽くん見つけたからもう行くから。犯罪には手を染めないように以上!」
玲爾が何かを言っていますが、幽くんを見つけてしまった今、そんなのは些細な問題です。
ダサい家族よりもカッコいい彼氏です。
「幽くん、ごめん待たせちゃった?」
「いや、そこまで待ってないけど、あれって桜の弟だよな。いいのか?」
「あいつも友達と遊ぶんだって。大体同じ時間だから一緒だっただけ」
「美琴もさっきまで一緒だったんだけど、友達との待ち合わせがあるからってどっか行ったんだよな」
その時、私は感じ取りました。
この感じは恋の空気です。ラヴですLOVE。
「美琴ちゃんどっちに行ったかわかる?」
「あっちの方だけどどうかしたのか?」
幽くんが指さした方角はさっき玲爾が向かった方向です。
これはもしかするともしかするかもしれません。
「ちょっと楽しいことになりそうなんだよね」
もうニヤニヤが止まりません。
あいつが友達としか言わないのがどこか引っかかっていましたがそう言うことなのでしょう。
玲爾も美琴ちゃんも確か同じ学園だったはずです。
「桜凄い悪い顔してるよ」
「弟の恋愛模様が見れるかもしれないからね」
「やめときなよ、桜も自分が頑張ってるのを他人に見られたら嫌だろ」
幽くんに止められては仕方ありません。
今回はやめておきましょうか。
「それよりも早く行こうぜ」
あまりにも自然に差し出された手を掴み、私達は祭りに向かいました。
そして祭りの人ごみを歩く途中、中学生の一団を見つけます。
その集団の中には玲爾も居て、照れくさそうに美琴ちゃんの隣を歩いていました。
そして私は心の中でほくそ笑みます。
弟を弄るネタができたと。
人でも幽霊でも楽しそうにしているのを見ると嬉しいらしいのですが、自分がはしゃぐのはどうも苦手らしいです。
そんなわけで今日は夏祭りです。
近くの神社でやるお祭りで、出店も出ます。
残念ながら花火まではやらないので本当に地元のお祭りですが、幽くんと一緒ということもありとても楽しみです。
夕方からお母さんに浴衣を着せてもらいこれから出発します。
「玲爾準備できたの?」
残念ながら出発は幽くんとではなく弟の玲爾と一緒です。
「いや、姉ちゃん待ちだっただろ。なんで俺が遅いみたいに言われないといけないんだ」
「弟だから当然だと私は思います」
「最低の姉だな」
そんな姉弟らしい会話をしながら神社に向かいます。
「あんたそんな格好だとモテないでしょ。センスない」
「友達と遊ぶのにそこまでセンスはいらないだろ」
「友達と歩いてて同じクラスの好きな子にばったり会ったらどうするの?『えー、柳下くんってファッションセンスなさすぎてマジ引くんですけどー』って言われても知らないよ」
近所の祭りですからありえない話ではないと思います。
伝い伝わり私までセンス無の烙印を押されたくはありません。
「そもそもそんなこと言う女子に好かれたくないし」
「あんたの言う通りだよ」
正論でした……。
明らかに悪目立ちしているグループの女子の真似になっていました。
私もそういう人たちと一緒にいたくはありません。
「姉ちゃんも気合入れてるけど、気合い入れ過ぎて彼氏に引かれるなよ? そんな簪どこに会ったんだよ」
「おばあちゃん家に行った時にもらった。小野小町って呼んでもいいんだよ」
「呼ばれたいの? 明らかに名前負けだけど」
「殴られたいならそう言えばいいのにいくらでも殴ってあげるから」
今なら殴っても文句は言われないと思います。
「殴られたら姉ちゃんの彼氏に言いつけに行く」
「それは卑怯じゃない!?」
それは姉弟でも反則技だと思います。
「なら私もあんたの好きな人を探し当ててあることないこと言いふらすしかないか」
「いや、さっきから俺に好きな人がいる感じで話が進んでるけどいないからな」
「それは嘘だよ。わかるよ、お姉ちゃんは全てお見通しだよ。中学生男子が恋愛しないなんてありえないってことはお姉ちゃん知ってるよ」
欲の塊である中学生男子が人間の三大欲求に勝てるわけはありません。
勝てるならそれは中学生とは呼べません。仙人の類です。
「それって姉かどうかは関係ないじゃん。一般論って言うんじゃない?」
「恋愛大好きな私から見たらあんたは恋をしているんだよ。確定事項だから。ほらさっさと吐いちゃいなよ、それをネタにこれから散々いじり倒してあげるから」
「それを聞いて、俺の好きな人はねあの人なんだ。とか言ってたら俺頭おかしいだろ」
そう言われてしまうと返す言葉はありません。
確実にM気質があるので逆に喜ばれてしまいそうです。
「それなら私が誠心誠意恋の応援をしてあげるから洗いざらい白状してみなよ」
とびっきりの笑顔で親指を立てます。
もうどこからどう見ても頼りになるお姉さんです。
「さっきの発言をなかったことにして話を進めてどうする。第一俺に好きな――」
「ごめん、幽くん見つけたからもう行くから。犯罪には手を染めないように以上!」
玲爾が何かを言っていますが、幽くんを見つけてしまった今、そんなのは些細な問題です。
ダサい家族よりもカッコいい彼氏です。
「幽くん、ごめん待たせちゃった?」
「いや、そこまで待ってないけど、あれって桜の弟だよな。いいのか?」
「あいつも友達と遊ぶんだって。大体同じ時間だから一緒だっただけ」
「美琴もさっきまで一緒だったんだけど、友達との待ち合わせがあるからってどっか行ったんだよな」
その時、私は感じ取りました。
この感じは恋の空気です。ラヴですLOVE。
「美琴ちゃんどっちに行ったかわかる?」
「あっちの方だけどどうかしたのか?」
幽くんが指さした方角はさっき玲爾が向かった方向です。
これはもしかするともしかするかもしれません。
「ちょっと楽しいことになりそうなんだよね」
もうニヤニヤが止まりません。
あいつが友達としか言わないのがどこか引っかかっていましたがそう言うことなのでしょう。
玲爾も美琴ちゃんも確か同じ学園だったはずです。
「桜凄い悪い顔してるよ」
「弟の恋愛模様が見れるかもしれないからね」
「やめときなよ、桜も自分が頑張ってるのを他人に見られたら嫌だろ」
幽くんに止められては仕方ありません。
今回はやめておきましょうか。
「それよりも早く行こうぜ」
あまりにも自然に差し出された手を掴み、私達は祭りに向かいました。
そして祭りの人ごみを歩く途中、中学生の一団を見つけます。
その集団の中には玲爾も居て、照れくさそうに美琴ちゃんの隣を歩いていました。
そして私は心の中でほくそ笑みます。
弟を弄るネタができたと。
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