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幽くんと心霊写真
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幽くんには霊感があります。
この日はなぜか教室に入ると心霊写真でクラスがにぎわっていました。
なんでも木之本くんが彼女とデート中に取った写真が心霊写真だったと言ったところから始まったらしいです。
でもそれは一過性の物らしく昼を過ぎたころには落ち着いていました。
その帰り道に私は幽くんに今朝の心霊写真について聞いてみました。
「今朝の心霊写真って本物なの?」
「どうだろうね。俺にはわからないかな」
意外なことに霊感がある幽くんにも心霊写真の判別はできないらしいです。
「そもそも心霊写真って幽霊が偶然映ってるだけだしね」
「そうなの? それなら幽くんなら簡単に撮れるの?」
「撮れるけど撮りたくないかな。可哀想だし」
もしかすると悲惨な死に方をした幽霊を撮るのが可哀想と思っているのかもしれません。
「カメラを向けただけで全力で隠れる姿は見ていて可哀想だから」
私が想像していたのと微妙に違うみたいです。
「幽霊って隠れるの?」
「隠れてるよ。木の影とか電柱の影とか、人の影に急いで隠れる。テレビにたまに出る心霊写真も隠れる瞬間とかが多いしね」
「あの見切れてるのは驚かす為じゃなくて、隠れるのに失敗してるんだね……」
だから手だけとか顔の上半分とかなんだ。知って残念な事実でした……。
「でもこっちを睨んでるのかあるよね。幽くんの言う通りなら偽物ってこと?」
頭の上半分だけ最後まで出てるのはおかしいってことになるような。
「俺もそう思ってたんだけどね。前に偶然その場面見たことがあるんだよ」
幽くんはその時のことを話してくれました。
その日は暇で近所を散歩していたら、幽霊らしいのが木の影から何かを睨んでたんだ。
恨みでもあるのかと思って視線の先を見たら友達同士で写真を撮っている場面だったから、仲がいいのが許せないんだろうなと思ってたら声が聞こえてきたんだ。
「何分写真撮ってんだよ。裸なんだから察しろよ。ただの林とってもつまねぇだろ。インスタ映えとかしないんだからとっとと帰れよ」
そんな風に愚痴を言ってた。
「それで睨んでる写真って早くどっか行けよって睨んでるんだなって気が付いたんだよ」
「なんか色々と残念だね。その幽霊もなんで裸だったんだろうね」
隠れて睨む気持ちもわからなくはないけどね。私達からしたら図書館で騒いでいる人達を睨んでる感覚ってことか。裸なのは共感できないけど。
「次の日に行ったら、裸で普通に生活してたから裸族なんだと思う」
「本当に残念だよ……。これから顔だけが映ってる心霊写真を見てもこの人も裸族なのかなって思っちゃうよ」
「だから実は心霊写真って興味ないんだよね。そういうところを何度か見てるから」
舞台裏を知ってしまったからこその虚しさがよく伝わりました。
想像だけで台無しなんだから実際に見てたら余計台無しだろうし。
「でも体の一部が無くなってるのは当てはまってないけど、聞いたらがっかりする?」
「すると思うけど聞く?」
聞きたいけど、今のこのがっかり感を思うと聞きたくない。でも最初からがっかりだと思って聞けば意外とそこまでではないかもしれない。
「聞いてみようと思います」
「これも実際に見たんだけど」
家族で旅行をしている時に記念写真を撮っている家族が居たんだ。
タイマーをセットして家族がにこやかに並んで、これからシャッターが切られる瞬間に子供の幽霊が猛ダッシュしてカメラの前を通り過ぎた。
最初は生きてる子供の悪ふざけかと思ったけど、写真を撮っていた家族は何も言わないでカメラを見て悲鳴を上げた。
「おい、マサシの足が消えてるぞ!」
今のは幽霊だったんだなと思っていたらそれを見ていた幽霊がガッツポーズして他の幽霊と盛り上がってた。
「残像!?」
まさかの残像でした。子供がやるチキンレースみたいなのをやった結果、人間の体は消失するらしいです。
「それから何回か見てたけどタイミング意外と難しいらしいよ。スピード落としたら映っちゃうらしいから」
「映りたいのか映りたくないのかはっきりして欲しいよね」
遅くしたら映っちゃうってそもそもカメラに近づかなきゃいいのに。
「映ろうと思えば映れるってことは、この前幽くんと一緒に居た幽霊さんに写真撮らせてもらえば顔見れるの?」
霊感が無いから見ようとは思っていなかったけど、私もライバルの顔を見ておきたい。
「花子のか? 大丈夫じゃないか?」
「花子? それってトイレの花子さん?」
「そうだぞ。色々あって話す様になったんだけど後で撮ってもいいか聞いてみるよ」
どうやらトイレの花子さんは実在したらしいです。
でもトイレの花子さんなら子供だろうし、ライバルにはならないだろうな。
その翌日幽くんが写真を撮ったとのことだったので見せてもらいました。
「これが花子。桜に見せたらすぐに消せってさ」
画面に映し出されたのは私と同い年くらいの美少女でした。
透明感のある真っ白な肌、手入れをされている様な長くて綺麗な黒髪は眉毛の辺りで切りそろえられ、優しそうなクリっとした大きな目、すらりと伸びた手足に赤いサスペンダー付きのスカート。
嫉妬を超えて憧れるような見た目の女性が花子さんでした。
「幽くんよくこの子の告白断れたね」
「だって死んでるじゃん」
「そうだよね」
幽くんは線引きをしっかりしている人です。
この日はなぜか教室に入ると心霊写真でクラスがにぎわっていました。
なんでも木之本くんが彼女とデート中に取った写真が心霊写真だったと言ったところから始まったらしいです。
でもそれは一過性の物らしく昼を過ぎたころには落ち着いていました。
その帰り道に私は幽くんに今朝の心霊写真について聞いてみました。
「今朝の心霊写真って本物なの?」
「どうだろうね。俺にはわからないかな」
意外なことに霊感がある幽くんにも心霊写真の判別はできないらしいです。
「そもそも心霊写真って幽霊が偶然映ってるだけだしね」
「そうなの? それなら幽くんなら簡単に撮れるの?」
「撮れるけど撮りたくないかな。可哀想だし」
もしかすると悲惨な死に方をした幽霊を撮るのが可哀想と思っているのかもしれません。
「カメラを向けただけで全力で隠れる姿は見ていて可哀想だから」
私が想像していたのと微妙に違うみたいです。
「幽霊って隠れるの?」
「隠れてるよ。木の影とか電柱の影とか、人の影に急いで隠れる。テレビにたまに出る心霊写真も隠れる瞬間とかが多いしね」
「あの見切れてるのは驚かす為じゃなくて、隠れるのに失敗してるんだね……」
だから手だけとか顔の上半分とかなんだ。知って残念な事実でした……。
「でもこっちを睨んでるのかあるよね。幽くんの言う通りなら偽物ってこと?」
頭の上半分だけ最後まで出てるのはおかしいってことになるような。
「俺もそう思ってたんだけどね。前に偶然その場面見たことがあるんだよ」
幽くんはその時のことを話してくれました。
その日は暇で近所を散歩していたら、幽霊らしいのが木の影から何かを睨んでたんだ。
恨みでもあるのかと思って視線の先を見たら友達同士で写真を撮っている場面だったから、仲がいいのが許せないんだろうなと思ってたら声が聞こえてきたんだ。
「何分写真撮ってんだよ。裸なんだから察しろよ。ただの林とってもつまねぇだろ。インスタ映えとかしないんだからとっとと帰れよ」
そんな風に愚痴を言ってた。
「それで睨んでる写真って早くどっか行けよって睨んでるんだなって気が付いたんだよ」
「なんか色々と残念だね。その幽霊もなんで裸だったんだろうね」
隠れて睨む気持ちもわからなくはないけどね。私達からしたら図書館で騒いでいる人達を睨んでる感覚ってことか。裸なのは共感できないけど。
「次の日に行ったら、裸で普通に生活してたから裸族なんだと思う」
「本当に残念だよ……。これから顔だけが映ってる心霊写真を見てもこの人も裸族なのかなって思っちゃうよ」
「だから実は心霊写真って興味ないんだよね。そういうところを何度か見てるから」
舞台裏を知ってしまったからこその虚しさがよく伝わりました。
想像だけで台無しなんだから実際に見てたら余計台無しだろうし。
「でも体の一部が無くなってるのは当てはまってないけど、聞いたらがっかりする?」
「すると思うけど聞く?」
聞きたいけど、今のこのがっかり感を思うと聞きたくない。でも最初からがっかりだと思って聞けば意外とそこまでではないかもしれない。
「聞いてみようと思います」
「これも実際に見たんだけど」
家族で旅行をしている時に記念写真を撮っている家族が居たんだ。
タイマーをセットして家族がにこやかに並んで、これからシャッターが切られる瞬間に子供の幽霊が猛ダッシュしてカメラの前を通り過ぎた。
最初は生きてる子供の悪ふざけかと思ったけど、写真を撮っていた家族は何も言わないでカメラを見て悲鳴を上げた。
「おい、マサシの足が消えてるぞ!」
今のは幽霊だったんだなと思っていたらそれを見ていた幽霊がガッツポーズして他の幽霊と盛り上がってた。
「残像!?」
まさかの残像でした。子供がやるチキンレースみたいなのをやった結果、人間の体は消失するらしいです。
「それから何回か見てたけどタイミング意外と難しいらしいよ。スピード落としたら映っちゃうらしいから」
「映りたいのか映りたくないのかはっきりして欲しいよね」
遅くしたら映っちゃうってそもそもカメラに近づかなきゃいいのに。
「映ろうと思えば映れるってことは、この前幽くんと一緒に居た幽霊さんに写真撮らせてもらえば顔見れるの?」
霊感が無いから見ようとは思っていなかったけど、私もライバルの顔を見ておきたい。
「花子のか? 大丈夫じゃないか?」
「花子? それってトイレの花子さん?」
「そうだぞ。色々あって話す様になったんだけど後で撮ってもいいか聞いてみるよ」
どうやらトイレの花子さんは実在したらしいです。
でもトイレの花子さんなら子供だろうし、ライバルにはならないだろうな。
その翌日幽くんが写真を撮ったとのことだったので見せてもらいました。
「これが花子。桜に見せたらすぐに消せってさ」
画面に映し出されたのは私と同い年くらいの美少女でした。
透明感のある真っ白な肌、手入れをされている様な長くて綺麗な黒髪は眉毛の辺りで切りそろえられ、優しそうなクリっとした大きな目、すらりと伸びた手足に赤いサスペンダー付きのスカート。
嫉妬を超えて憧れるような見た目の女性が花子さんでした。
「幽くんよくこの子の告白断れたね」
「だって死んでるじゃん」
「そうだよね」
幽くんは線引きをしっかりしている人です。
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