ハッピーエンドが程遠い。

立夏

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ハッピーエンドが予想外

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「21世紀の日本・・・ええと、ジパングです」
「ジパング・・・」

ワイルドイケメンに答えた時と同じく、しっくり来ていない顔。中世時代に似た雰囲気はすれど、マルコポーロは知られてないとみた。

「ジパングはアジアの島国です。そばにロシアや中国という大きな国があって、前はソ連とか清と呼ばれてました」

確信を深めようとさらに現実の国々を並べても、一向に「ああ!」というリアクションは来ない。
魔法が使える時点で次元が違うのはわかっているけど、この世界と現実は、どのレベルでずれているのか確認したかったのだ。
ひとまず何とか星雲やなんちゃら星人である可能性は消えた。でも、やっぱりここに、私が今まで見てきた国や歴史は存在していないんだ。

「俺たちはまだまだ勉強不足みたいだ。君の国のこと、もう少し詳しく教えてくれる?」

あくまでも優しい姿勢を保ちながら、一瞬後ろの彼と視線を交わす天界イケメン。私、めちゃくちゃ怪しまれてるみたい。

「詳しく・・・ですか」
「随分薄着なようだけど、暖かい気候なのかな」
「いえ、これは飛ばされたとき勝手に着替えてて。日本だって今の時期これではとてもとても」
「・・・勝手に?」
「はい。もっといえば、勝手にこちらへ飛ばされたんです。自分では何の魔法も使えません」

穏やかだった語尾が少しだけ強まるのを感じ、いたたまれなくなった私は自分から切り出していた。



「私、この世界の人間じゃないんです」



シーンと静まり返る空間の中、目の前の相手は瞬きもせず自分を見つめている。

「どうしてそんな風に思うんだい」

問いかける天界イケメンの口元に、もう笑みはなかった。
かといって嘘を吐くなと怒ってるとか、厳しく問いただそうとするわけじゃなく、純粋な疑問のように首を傾げて聞かれる。

「自分がここに飛ばされた時のことをはっきり覚えてるからです。それまで私はスーツという仕事着を着て、電車に乗って会社に行ってました。そして今日、階段を降りてる時に突然上から鞄が降ってきて。真っ逆さまに落ちて意識を失い、気づいたらここにいたんです」

とりあえず簡潔に今までの流れを伝えると、天界イケメンはふむ、という感じで自分の顎に手を当てた。

「私がいた世界にも、魔法という概念は存在します。でもそれは物語とか、使えたら良いなっていう憧れで・・・皆さんみたいに使いこなせる人間は1人もいません。それに服装も違いますし、剣を持ってたらすぐ銃刀法違反で捕まっちゃうんです」
「はあ?」
「そ、そういうルールの世界なんですぅ」

私の説明があまりにもこの世界の常識とかけ離れていたせいか、ついにワイルドイケメンがズイッと目の前に身体を出した。本当は銃刀法以前にその格好だけで職務質問なんですが・・・黙っておこう。

2人の強い瞳に射貫かれ、張り詰めていた空気がもっときつくなる。
ごくっと息を飲むと天界イケメンが何かを決心したようにゆっくりと目を閉じた。

「どこから説明すればいいのか。こういう時、君みたいに単刀直入に切り込める考えなしの性格が羨ましくなるなあ」
「何さりげなく罵倒してんだよっ。なら俺が言ってやってもいいけど!?」

確かにさりげなく毒を吐いて、天界イケメンが空中に右手をかざした。
するとあの小鳥が、まるで今から彼のやることをわかってるかのようにチョコチョコと腕を伝って肩に移動する。
辿りついた先で1声囀ると同時に、彼が人差し指で宙に何かを描いた。途端、その場に一枚の大判な布が浮かび上がった。
指先1つで物を取り出すという行為がまさにファンタジックで思わず「わあ・・・」と声が出てしまう。

麻っぽい薄茶色の生地にはたくさんの記号と、不揃いな図形がいくつも書き込まれている。法則無き形を眺めていくうちに、これは地図だと気づいた。

あちこちに散らばったり、かと思えば密集する大小の複雑な図形が、この世界の国々だ。
一つ一つに書いてある記号は国の名前を表してるんだろう。てことはこの記号がここの言語かあ。
似てるとしたらアラビア文字かな?実際比較したらどっちがどっちかわかんないけど。
言葉が通じるからもしかしたらと期待したけど、やっぱり文字までは翻訳されてないみたい。



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