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プロローグ
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しおりを挟むお互い次の日も仕事を控えてるので、お酒は飲まない。
テクテクと差のある影を眺めながら歩いていると、麗奈ちゃんが急にカバンの中を探り出した。
「はい、頑張ってる民子にプレゼント。今日のボランティア分にはなると思うよ」
「えっ、なになにー・・・!!!!!」
こ、これは!
『ラブコスメティック~仕上げはあなたの唇で~』
ポンッと手のひらに乗せられたのは、パソコン用のゲーム・・・それも乙女向け(R-18)。
キラキラと煌めくロゴの下には、タイプの違う5人のイケメンキャラが映っている。
そう、付き合いが長く私のことを知り尽くしてる麗奈ちゃんは、私の嗜好も全て把握していた。
「これピーチ社の発売前の新作!どうして!?」
「今回、ヘアメイクの子がヒロインなんだって。監修にうちの会社が参加してるのよ。報酬で全員に完成品配られたからあげる」
「いいの!?麗奈ちゃんや」
「るわけないでしょ。その代わり、感想聞かせてね。会社にも報告しないといけないから」
うんうんっと激しく頷いて、貰ったパッケージを空にかざす。
私の感想文だと10000文字は超えるけど大丈夫かな?
鼻息交じりにそう言うと、麗奈ちゃんはさっきとは違う種の呆れた笑顔を見せた。
「ホント、乙女ゲームっての?好きだね」
「うん!大好き!だってこの中では、誰でもヒロインになれるんだよ」
平凡で男子にトンと縁がない私が、コントローラーという装備1つで輝くヒロインへと変身する。
そして紆余曲折はあれど、選択肢を間違えなければ必ず愛する人と結ばれる。
幸せを掴んだ私が画面上に現れることで、現実もいつかはそうなることを夢見て毎日頑張れるんだ。
ゲームの中よりもずっとずっと厳しい人生。
でも、かけがえのない友達がいる私の未来は、きっと明るい。
ハッピーエンドのために、嫌味な課長ゴブリンや卑怯な同僚ゴーレムの攻撃なんかいくらでも耐えてやる。
「・・・あんたそれ中学くらいから言い続けてない?私たち、もう24歳だよ」
あ、予期せぬ味方の攻撃が来た。
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