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ぼっち勇者 〜僕も仲間がほしい!!〜
3話
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_____✻✻_____
「………てな感じ」
「………」
長々と勇者の話を聞かされた魔王。何となく事情はわかった気がする。
「…他の奴はどうだったんだ?」
「……それは…」
_____✻✻_____
「ねぇお姉さん。僕と一緒に魔王討伐に行かない?」
「………」
「?ねぇ…」
ギルドの隅にいた女性の肩に手を置く。
「!?………わっ!いたんですか…!すいません気がつかなくて」
「あ、いえ」
(…この街の人はみんなこうなのか。肩に触れないと気づかないのか?)
「あの、あなたヒーラーですよね?討伐に興味ってありますか?」
気持ちを切り替えて、僕は美人のヒーラーをパーティに誘う。しかし__
「お断りです」
「…え?」
案の定断られてしまった。
「今どき討伐とか有り得ませんから。しかも私、明日には遠くの街に引っ越すことになってるから。他を当たってください」
「………えーー………」
「なぁそこのイケメンくん!」
「……」
「ねぇねぇ」
ポンっと、少し筋肉質の男の肩に触れる。
「あ?」
「君ソードマスターだよね!僕と一緒に討伐しない?」
「無理」
「……」
全て同じ返答だった。やはりみな先程の魔法使いと同じで、もう冒険者ではないのだ。
「てか誰?お前。影薄すぎて幽霊だと思ったわ。もっと視界に入れよ」
「………え?」
_____✻✻_____
「…………このザマでした」
「…お前が肩に触れなきゃ誰も気づいてくれなかったのって、影の薄さなんだな」
「うるさい!!」
影薄の話だけ鼻で笑っていたゼロに、勇者は頭に血が上る。
「街の冒険者みんなに声かけたよ。でもダメだった。しかも1人ずつ肩に触れないといけないし……」
「ははっ、ちょーウケるー」
「やめんか!!あれ言われた時結構傷ついたんだからな!
でもお陰でモンスターにもあまり気づかれなかったよ!!」
「ラッキーじゃん」
「人には認知されたいよ!!!」
心の叫びという叫びを出し終えた勇者は、もうヘトヘトに疲れ切っていた。
「…はぁ、だから早くお前を倒して、あの魔法使いさんに報告しなきゃいけないんだ」
ガタガタの細い足で立ち上がり、持っていた剣を構える。
「かかってこい勇者よ」
やっとそれらしいことができると、ゼロは意気込んでいた。しかし、そうはいられなくなった。
「一瞬でぶっ倒して、やる……よ………」
バタッと、剣をぶさぼうに落として、勇者はその場に倒れてしまった。どうやら限界だったらしい。
拍子抜けしたゼロは、手に魔力を貯めるのをやめて、ゆっくりと勇者に近づいた。
「……」
勇者の前でしゃがみこみ、ほっぺを抓ってみる。
「……ん゛~~………ぐー、ぐー……」
寝てしまったようだ。
「……はぁ、なんだよこの勇者。せっかく魔王らしく戦いたかったのに、台無しだ」
こうなってしまえば、勇者など1秒で片付けられる。邪魔者はここにはいらないと、ゼロは勇者を始末しようとした。
「……」
そこで突然、先程の勇者の姿が頭によぎった。
(……ずっと1人でここまで…)
配下がたくさんいるゼロには考えられないことなのだが、彼は数分じっとしていると、勇者を抱えて玉座の間から出ようとした。
その時__
「宜しいのですか?魔王様。そのような勇者を中に引き込んで」
いくつもあるドアの内の1つが開き、暗闇から謎の男の声が聞こえた。おそらくゼロの配下だろう。
「構わん。あまりコイツに干渉するな。面倒だからな」
「…承知致しました」
その声は暗闇の中へと消えていき、やがて聞こえなくなった。
「……少しだけだぞ、勇者」
「………てな感じ」
「………」
長々と勇者の話を聞かされた魔王。何となく事情はわかった気がする。
「…他の奴はどうだったんだ?」
「……それは…」
_____✻✻_____
「ねぇお姉さん。僕と一緒に魔王討伐に行かない?」
「………」
「?ねぇ…」
ギルドの隅にいた女性の肩に手を置く。
「!?………わっ!いたんですか…!すいません気がつかなくて」
「あ、いえ」
(…この街の人はみんなこうなのか。肩に触れないと気づかないのか?)
「あの、あなたヒーラーですよね?討伐に興味ってありますか?」
気持ちを切り替えて、僕は美人のヒーラーをパーティに誘う。しかし__
「お断りです」
「…え?」
案の定断られてしまった。
「今どき討伐とか有り得ませんから。しかも私、明日には遠くの街に引っ越すことになってるから。他を当たってください」
「………えーー………」
「なぁそこのイケメンくん!」
「……」
「ねぇねぇ」
ポンっと、少し筋肉質の男の肩に触れる。
「あ?」
「君ソードマスターだよね!僕と一緒に討伐しない?」
「無理」
「……」
全て同じ返答だった。やはりみな先程の魔法使いと同じで、もう冒険者ではないのだ。
「てか誰?お前。影薄すぎて幽霊だと思ったわ。もっと視界に入れよ」
「………え?」
_____✻✻_____
「…………このザマでした」
「…お前が肩に触れなきゃ誰も気づいてくれなかったのって、影の薄さなんだな」
「うるさい!!」
影薄の話だけ鼻で笑っていたゼロに、勇者は頭に血が上る。
「街の冒険者みんなに声かけたよ。でもダメだった。しかも1人ずつ肩に触れないといけないし……」
「ははっ、ちょーウケるー」
「やめんか!!あれ言われた時結構傷ついたんだからな!
でもお陰でモンスターにもあまり気づかれなかったよ!!」
「ラッキーじゃん」
「人には認知されたいよ!!!」
心の叫びという叫びを出し終えた勇者は、もうヘトヘトに疲れ切っていた。
「…はぁ、だから早くお前を倒して、あの魔法使いさんに報告しなきゃいけないんだ」
ガタガタの細い足で立ち上がり、持っていた剣を構える。
「かかってこい勇者よ」
やっとそれらしいことができると、ゼロは意気込んでいた。しかし、そうはいられなくなった。
「一瞬でぶっ倒して、やる……よ………」
バタッと、剣をぶさぼうに落として、勇者はその場に倒れてしまった。どうやら限界だったらしい。
拍子抜けしたゼロは、手に魔力を貯めるのをやめて、ゆっくりと勇者に近づいた。
「……」
勇者の前でしゃがみこみ、ほっぺを抓ってみる。
「……ん゛~~………ぐー、ぐー……」
寝てしまったようだ。
「……はぁ、なんだよこの勇者。せっかく魔王らしく戦いたかったのに、台無しだ」
こうなってしまえば、勇者など1秒で片付けられる。邪魔者はここにはいらないと、ゼロは勇者を始末しようとした。
「……」
そこで突然、先程の勇者の姿が頭によぎった。
(……ずっと1人でここまで…)
配下がたくさんいるゼロには考えられないことなのだが、彼は数分じっとしていると、勇者を抱えて玉座の間から出ようとした。
その時__
「宜しいのですか?魔王様。そのような勇者を中に引き込んで」
いくつもあるドアの内の1つが開き、暗闇から謎の男の声が聞こえた。おそらくゼロの配下だろう。
「構わん。あまりコイツに干渉するな。面倒だからな」
「…承知致しました」
その声は暗闇の中へと消えていき、やがて聞こえなくなった。
「……少しだけだぞ、勇者」
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