凡人高校生

ゆるだら公

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凡人高校生

23話

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__大家

「大ちゃんただいま!!家から果物とか、近くのコンビニで色々買ってきたよ!!」

レジ袋やら紙袋やら、たくさん腕にぶら下げて帰ってきた。かなり焦っているように見える。
気が引けるなと、大は少し申し訳なくなった。

「あ、ありがと…満」

「なんのそのだ!」

ニッコリと笑った満は、コンビニのものであろうレジ袋から、熱が出た時に貼る冷却シートを取り出した。
そして大の前髪をかきあげ優しく押えた。

「貼るぞ大ちゃん。じっとしてろよ」

「…ん…っ…」

額にひんやりとした冷たいものがあたったので、貼ったと同時に大はちいさく声を漏らした。

「どうだ?少しは楽になったか」

まだ大の顔が赤いので、不安気に彼を覗いた。満との距離が近くなったので、思わず大は顔を逸らした。

「ちょ、そんな近づいたら、風邪うつす…」

大は満になるべく風邪をうつさないように、布団に潜って蹲った。
そんな彼を見て、満は静かに微笑み、ゆっくりと自分もベッドに乗って布団に入った。

「え、はぁ…!?何してんの………!」

気を利かせて離れてくれると期待していた大だが、満相手にそう上手くいくことではなかった。
自分に背を向けている大を、満はぎゅぅと抱きしめた。高校生2人が1つの小さいベッドに入るという、なんとも見てて窮屈そうに感じるが、満はそんなことどうでもよかった。

「…大ちゃん。…俺はな……」

「………」

「……風邪にはならない!!」

「…………はぁ…?」

この状況で言える発言ではなく、大はさらに頭が痛くなったような気がした。
確かに満はほとんど風邪をひかない元気な子だ。だからといって、必ずしもそれが正解とは限らない。
大はこの事がきっかけで満が風邪になることを恐れて距離を置いたのに、無駄だったようだ。

「…俺はな、例え極寒の中だろうが壮大なフラグを立ててしまおうが、風邪にはならない自信がある」

「うん、ほんとにフラグは立てた…」

はぁとため息を吐く大だが、喋っていると満の吐息が耳にあたってそれどころではなくなった。
満がゆっくりと呼吸する度に彼の息があたるので、大は毎回ビクリと体を震わせてしまい、たまに意識していないのに「あっ」と声が出てしまう。

そんな余裕がないことがわからない満は、思いっきり大の近くで話し始めた。

「俺は別に、大ちゃんならうつっても構わないぜ。かかったとしてもすぐに治るし。
…俺、大ちゃんの傍に居たいんだよ」

「満……」

口説くように語りかけてくる満に、大も段々と大人しくなっていった。

「さっ、早く治るためにも睡眠は大切だから、このまま寝るぞ」

「え、でも俺、今起きたばっか…」

「まだ熱は下がってないだろ。こんなにあったかいし」

「それはお前が抱きついてるからで」

確かにそうだと、満はうーんと考え事をしているようなポーズをとった。

「ま、でも2人で寝た方が心も身体も安心するし、いいだろ!」

「……え…?」

考えるのは面倒くさいと、満は安直に片付けてしまった。

「じゃ、おやすみ~……スー……」

「……」

満の体温を感じながら、大もまた浅い眠りについた。温かさが倍になって、さらに心地のよい空間となった。



_____✻✻_____



…ピーンポーン……

「大せんぱーい。大丈夫ですか~?」

「…返事ねぇな」

部活が終わり、姫野と朝霧は早速大の家へ向かったのだが、誰も返事をしてくれない。

「寝てんだろ、多分」

「はッッ!もしかして、歩けないほど辛いんじゃ…!」

体が貧弱な大だからこそ連想されることだった。大なら有り得なくもない話だ。

「あ、ドア開いてるぞ」

恐らく、急いでいた満がドアの鍵をかけ忘れていたのだろう。警備がガバガバになっていた。

「お、お邪魔しまーす」

物音をなるべく立てずに入った2人はまず初めに寝室に向かった。風邪なので、寝ている可能性が高いと考えたのだ。

「ここですかね」

ゆっくりと部屋のドアを開けると、どうやら当たりだったようで、小さな寝息が聞こえてきた。しかし、それは1つではなかった。

少しだけドアを開けて覗いている2人は、大の他にももう1人いることに気づいた。

「あれは…大とよく一緒に居る奴」

「確か、えっと…満先輩。でしたっけ」

誰かわかったし、大が安静に出来ていることが確認できたので、2人とも安心した。しかし、あの2人の絵面がどうも気になって仕方がなかった。

「…あぁすれば風邪も早く治るんですかね」

「んなわけあるか」

「じゃあどうして…」

姫野が悩んでいると、朝霧ははぁとため息をついて、寝ている2人を見つめた。

「落ち着くんだろ。心の安らぎみたいな」

「…へぇ、そうなんですね。…というか、朝霧先輩がそんなこと言うなんてレアですね」

「うるせぇ、わかったからもう帰るぞ。邪魔すんな」

「はーい」

姫野は静かにドアを閉め、小走りで玄関へ向かっていった。早く、大が元気になってほしいと願いながら。

「…僕らも今度やってみますか」

「やんねぇよ!」
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