20 / 24
凡人高校生
20話
しおりを挟む
「夏だーーーッ!!!」
「…暑っつ」
季節はすっかり夏になり、眩しい太陽が満たちを照らしていた。
2人と同じく学校へ向かっている生徒たちはみな半袖に変わっていて、さらに夏らしさが増す。
「こんな日こそアイスだよなぁ。購買とかに売ってねぇかな」
「ないだろ多分。というか暑いじゃ言い表せないくらいの暑さなんだけど。まじ溶けるって」
初夏の暑さを乗り越えると、今度は猛暑がやってくる。気温の変化に大もついていけないようで、うちわを持参していた。
しかし、吹く風も気温で生暖かくなっており、あまり意味がなかった。
「確かにな~。俺も暑いのは無理だけど、夏だと思うと自然と元気出てくるぜ!」
「…汗ダラダラなのに、よくそんなことが言えるよね…」
大はいつもより気だるげで、喋る気力もあまり無かった。それよりも、早く涼しい場所に行きたいと思っていた。
学校の校門に着くと、生徒会の人たちが数人立っており、来たる生徒たちにおはようございますとあいさつをしていた。
この暑い中よくそんなボランティアが出来るなと、大は尊敬した。そして、その中に蓮見がいることに気づいた。
「よお蓮見!偉いな、こんな日当たりいい場所であいさつ運動なんて」
満も蓮見を見つけて、小走りで駆け寄って行った。
「満、大、おはよう」
「な、なんて涼しげのある顔…!」
蓮見の清々しい笑顔は、こっちまで涼しくなってくるほどだった。
すると蓮見は「はぁ」と安心したように息を吐いた。
「来てくれて助かったよ2人共」
「?何かあったのか?」
「いや、…あそこ」
控えめに蓮見は人差し指を向ける。そこには、キャッキャと群がっている女子たちが、ソワソワしながらこちらを伺っていた。
「あぁ、なるほどね」
「なんだよー、モテモテじゃねーかぁ」
どうやら大勢の女子たちが、蓮見に話しかけようとしていたみたいで、2人が来たことにより、その足が止まった。
「あんなにたくさん来たら、通れなくなるしね」
「クソ~、優しい奴め。俺だって頑張れば女子たくさん集まるし。多分」
「そこはハッキリ言いなよ」
「俺は何もしてないんだけど…」
見栄を張ろうとする満に、大は突っ込み、蓮見は苦笑いで返した。そうしているうちに、大は暑さに耐えきれなくなり目眩がした。
「ぅおっと。大丈夫か大ちゃん。蓮見悪いな、先行くわ」
「うん、気をつけてね」
「お前もな」
大の体調の変化にいち早く気づいた満は、自分の肩を貸しながら校舎内へと歩いていった。
少し心配そうに見送った蓮見は、この後起こることを覚悟してあいさつ運動を続けた。
_____✻✻_____
__3年1組
「あ~~すずしーー!」
教室に入った2人は、冷房が効いているとわかり感謝感激だった。
この中でなら風も冷たいので、満は大に向けてうちわを仰いでいた。
「ほんとに大丈夫か?大ちゃん」
「だいじょぶだいじょぶ…。暑さでちょっとダメージ食らっただけだから…」
席に着いても目を瞑ってグダっている大に、満は本当に大丈夫なのか確信を持てなかった。
「んー。…具合が悪くなったら言えよ」
大の言葉に半分信じていない満は若干疑った様子を見せたが、今は大丈夫だろうと判断した。
大の席を離れようとしたが、その前に彼が満の服の袖をキュッと掴んだ。
そして、霞んで消えそうなくらい小さな声で呟いた。
「…もう少しだけ、ここに居て……」
少し震えた大の声に、満は心が揺らいだ。自然と笑みが零れるような、そんな暑過ぎず寒すぎずの、丁度いい暖かさが伝わった。
「なんだよ。大丈夫なんじゃなかったのか?」
「…そういう、ことじゃない……」
「はいはい笑。……あと5分な」
何故か笑えてきた満だが、大の言うことはしっかりこなした。やはり、心配が勝っていたのだろう。
小さめのうちわを仰ぎながら、満は大の傍に授業が始まるまで立っていた。
「…暑っつ」
季節はすっかり夏になり、眩しい太陽が満たちを照らしていた。
2人と同じく学校へ向かっている生徒たちはみな半袖に変わっていて、さらに夏らしさが増す。
「こんな日こそアイスだよなぁ。購買とかに売ってねぇかな」
「ないだろ多分。というか暑いじゃ言い表せないくらいの暑さなんだけど。まじ溶けるって」
初夏の暑さを乗り越えると、今度は猛暑がやってくる。気温の変化に大もついていけないようで、うちわを持参していた。
しかし、吹く風も気温で生暖かくなっており、あまり意味がなかった。
「確かにな~。俺も暑いのは無理だけど、夏だと思うと自然と元気出てくるぜ!」
「…汗ダラダラなのに、よくそんなことが言えるよね…」
大はいつもより気だるげで、喋る気力もあまり無かった。それよりも、早く涼しい場所に行きたいと思っていた。
学校の校門に着くと、生徒会の人たちが数人立っており、来たる生徒たちにおはようございますとあいさつをしていた。
この暑い中よくそんなボランティアが出来るなと、大は尊敬した。そして、その中に蓮見がいることに気づいた。
「よお蓮見!偉いな、こんな日当たりいい場所であいさつ運動なんて」
満も蓮見を見つけて、小走りで駆け寄って行った。
「満、大、おはよう」
「な、なんて涼しげのある顔…!」
蓮見の清々しい笑顔は、こっちまで涼しくなってくるほどだった。
すると蓮見は「はぁ」と安心したように息を吐いた。
「来てくれて助かったよ2人共」
「?何かあったのか?」
「いや、…あそこ」
控えめに蓮見は人差し指を向ける。そこには、キャッキャと群がっている女子たちが、ソワソワしながらこちらを伺っていた。
「あぁ、なるほどね」
「なんだよー、モテモテじゃねーかぁ」
どうやら大勢の女子たちが、蓮見に話しかけようとしていたみたいで、2人が来たことにより、その足が止まった。
「あんなにたくさん来たら、通れなくなるしね」
「クソ~、優しい奴め。俺だって頑張れば女子たくさん集まるし。多分」
「そこはハッキリ言いなよ」
「俺は何もしてないんだけど…」
見栄を張ろうとする満に、大は突っ込み、蓮見は苦笑いで返した。そうしているうちに、大は暑さに耐えきれなくなり目眩がした。
「ぅおっと。大丈夫か大ちゃん。蓮見悪いな、先行くわ」
「うん、気をつけてね」
「お前もな」
大の体調の変化にいち早く気づいた満は、自分の肩を貸しながら校舎内へと歩いていった。
少し心配そうに見送った蓮見は、この後起こることを覚悟してあいさつ運動を続けた。
_____✻✻_____
__3年1組
「あ~~すずしーー!」
教室に入った2人は、冷房が効いているとわかり感謝感激だった。
この中でなら風も冷たいので、満は大に向けてうちわを仰いでいた。
「ほんとに大丈夫か?大ちゃん」
「だいじょぶだいじょぶ…。暑さでちょっとダメージ食らっただけだから…」
席に着いても目を瞑ってグダっている大に、満は本当に大丈夫なのか確信を持てなかった。
「んー。…具合が悪くなったら言えよ」
大の言葉に半分信じていない満は若干疑った様子を見せたが、今は大丈夫だろうと判断した。
大の席を離れようとしたが、その前に彼が満の服の袖をキュッと掴んだ。
そして、霞んで消えそうなくらい小さな声で呟いた。
「…もう少しだけ、ここに居て……」
少し震えた大の声に、満は心が揺らいだ。自然と笑みが零れるような、そんな暑過ぎず寒すぎずの、丁度いい暖かさが伝わった。
「なんだよ。大丈夫なんじゃなかったのか?」
「…そういう、ことじゃない……」
「はいはい笑。……あと5分な」
何故か笑えてきた満だが、大の言うことはしっかりこなした。やはり、心配が勝っていたのだろう。
小さめのうちわを仰ぎながら、満は大の傍に授業が始まるまで立っていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?


チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。

たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
無自覚副会長総受け?呪文ですかそれ?
あぃちゃん!
BL
生徒会副会長の藤崎 望(フジサキ ノゾム)は王道学園で総受けに?!
雪「ンがわいいっっっ!望たんっっ!ぐ腐腐腐腐腐腐腐腐((ペシッ))痛いっっ!何このデジャブ感?!」
生徒会メンバーや保健医・親衛隊・一匹狼・爽やかくん・王道転校生まで?!
とにかく総受けです!!!!!!!!!望たん尊い!!!!!!!!!!!!!!!!!!
___________________________________________
作者うるさいです!すみません!
○| ̄|_=3ズザァァァァァァァァァァ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる