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凡人高校生
14話
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__昼休み
「ブーブー」
「いや悪かったってホント笑」
いつもの屋上に近い階段で、2人はまた昼食を摂っている。
「…まぁ、俺そういうの気にしないからいいけどさ」
「だと思った」
「うっせ」
満は、例えクラス全体だろうが全校生徒の前だろうが、イタズラされても特に何も思わない。本当に強い心を持っていた。
大はそれを知った上で、あのようなイタズラをしでかした。
でも満に、「他の奴にはやんなよ、俺もだけど」と釘を打たれてしまったので、次大が大勢の前で満にイタズラするのは、1ヶ月後くらいになりそうだ。するのはやめないらしい。
「てか、今日は大ちゃん弁当なんだな」
「そ、たまにはアリかなって。残りものだけどね」
弁当の中身を見せると、サラダやらハンバーグやら、とても美味しそうなものばかりだった。
「うおー!な、1口だけ貰っていいか!?」
満にとっては貴重な弁当なので、目を輝かせていた。大も薄ら笑いを浮かべて、箸でハンバーグを切ってつまんだ。
「はい、あーん」
「あーーむっ、んー!うめー!」
残りものでも、満には頬っぺが落ちるくらい美味しいものだった。
満は「おふくろの味…」と呟きながら味わって食べていた。
「はは、なんでだよ」
あまりにも美味しそうな顔をするので、大は思わず笑みが溢れてしまった。
「本当に美味いぞ、その弁当。…はぁ、俺は購買のパン1つか…。そう思うと貧相に感じてきた…」
「ご飯の有難みを知ったよ」
そう言って2人で笑っていると、満がハッとしたようにその場に立った。
「…パンのお供の牛乳買い忘れた……」
「あら」
どうやらパンを買った時に牛乳を買い忘れたみたいだ。物足りなさの正体が今解明された。
「これじゃ食べるにも食べようがない!買いに行ってくる!」
「いってら~」
満は、駆け足で階段や廊下を進んでいった。途中下から先生の怒鳴り声が聞こえたが、気にする事はないだろう。
大はこれを機に、独りの時間を堪能することにした。
(…てか、満ってああいうの大丈夫なんだ…)
ああいうの、というのは、大がハンバーグをあげた時のあーんのことだろう。
確かに、この行為は男女、基カップルがしているようなイメージがあるので、大が気にするのも仕方の無いことだった。
(…絶対意識してないよな、アイツ)
満のことをよく知っている人から見ても、彼は自由気ままで能天気に見える。大からしてもそうなので、きっと恋愛に関しても鈍いと思われた。
「はぁ、アイツ、彼女とか出来たら大変そう。特に彼女さんの方が」
将来出来るであろう満の彼女に、大は先にドンマイと同情してやった。
「さて、俺も頂くとするか。いただきま_」
そう言いかけた時、誰かの足音が大の目の前で止まった。
大は食べようとしていた手を止め、その足音を立てている人の顔を見た。
「……よぉ大。随分と楽しそうじゃねぇか」
いかにも口が悪そうなどす黒い声をした男が、大に立ちはだかった。上から見下ろす彼は、正に怪物のようだった。
これには大も冷や汗をかいてしまい、立ち上がることすら制限された。
「…お前…っ」
「さぁ、俺も楽しませてもらうぜ…ハハッ」
_____✻✻_____
「大ちゃーん戻ったぜ~。…て、えぇ!?」
満は戻って早々、大声を出して大に駆け寄った。かなり焦っているようだ。
「大ちゃん!なんで…なんで……」
「満…」
「なんでもう弁当が空っぽなんだよー!」
満が焦ったことの1つは、短時間で大の弁当の中身が全てなくなっていたということ。
もう1つは、もう少しだけ大の弁当食べたかったから残念という気持ちだった。
「いやなんでって言われましても」
「…大ちゃんって食べるの早かったっけ?」
「…まぁ、人並み程度には」
「それって早いのか…?」
どこか様子が違うなと勘づいた満だが、美味しくて箸が進んだのだろうと、うんうんと頷いて共感した。
「さ、つべこべ言ってないで、満も早く食べなよ。先行くよ?」
「あ!待って待ってっ!」
いつものようにパンと牛乳をかきこんで、2人は教室に戻った。
_____✻✻_____
__数分後
屋上近くの階段で、授業が始まっているというのに、1人男が座っていた。
そこは、大がいつも座っている、階段の下から5番目右寄りの場所だった。
男は、またパンを握りしめたまま、薄気味悪い笑顔を浮かべていた。
「楽しかったぜ、大。…でも、まだまだこれからだよなぁ…?」
白い歯が見えるほどに、男は骨格を上げてさらに笑った。そして、固いものを噛み砕くようにしてパンを食べ進めた。
「ブーブー」
「いや悪かったってホント笑」
いつもの屋上に近い階段で、2人はまた昼食を摂っている。
「…まぁ、俺そういうの気にしないからいいけどさ」
「だと思った」
「うっせ」
満は、例えクラス全体だろうが全校生徒の前だろうが、イタズラされても特に何も思わない。本当に強い心を持っていた。
大はそれを知った上で、あのようなイタズラをしでかした。
でも満に、「他の奴にはやんなよ、俺もだけど」と釘を打たれてしまったので、次大が大勢の前で満にイタズラするのは、1ヶ月後くらいになりそうだ。するのはやめないらしい。
「てか、今日は大ちゃん弁当なんだな」
「そ、たまにはアリかなって。残りものだけどね」
弁当の中身を見せると、サラダやらハンバーグやら、とても美味しそうなものばかりだった。
「うおー!な、1口だけ貰っていいか!?」
満にとっては貴重な弁当なので、目を輝かせていた。大も薄ら笑いを浮かべて、箸でハンバーグを切ってつまんだ。
「はい、あーん」
「あーーむっ、んー!うめー!」
残りものでも、満には頬っぺが落ちるくらい美味しいものだった。
満は「おふくろの味…」と呟きながら味わって食べていた。
「はは、なんでだよ」
あまりにも美味しそうな顔をするので、大は思わず笑みが溢れてしまった。
「本当に美味いぞ、その弁当。…はぁ、俺は購買のパン1つか…。そう思うと貧相に感じてきた…」
「ご飯の有難みを知ったよ」
そう言って2人で笑っていると、満がハッとしたようにその場に立った。
「…パンのお供の牛乳買い忘れた……」
「あら」
どうやらパンを買った時に牛乳を買い忘れたみたいだ。物足りなさの正体が今解明された。
「これじゃ食べるにも食べようがない!買いに行ってくる!」
「いってら~」
満は、駆け足で階段や廊下を進んでいった。途中下から先生の怒鳴り声が聞こえたが、気にする事はないだろう。
大はこれを機に、独りの時間を堪能することにした。
(…てか、満ってああいうの大丈夫なんだ…)
ああいうの、というのは、大がハンバーグをあげた時のあーんのことだろう。
確かに、この行為は男女、基カップルがしているようなイメージがあるので、大が気にするのも仕方の無いことだった。
(…絶対意識してないよな、アイツ)
満のことをよく知っている人から見ても、彼は自由気ままで能天気に見える。大からしてもそうなので、きっと恋愛に関しても鈍いと思われた。
「はぁ、アイツ、彼女とか出来たら大変そう。特に彼女さんの方が」
将来出来るであろう満の彼女に、大は先にドンマイと同情してやった。
「さて、俺も頂くとするか。いただきま_」
そう言いかけた時、誰かの足音が大の目の前で止まった。
大は食べようとしていた手を止め、その足音を立てている人の顔を見た。
「……よぉ大。随分と楽しそうじゃねぇか」
いかにも口が悪そうなどす黒い声をした男が、大に立ちはだかった。上から見下ろす彼は、正に怪物のようだった。
これには大も冷や汗をかいてしまい、立ち上がることすら制限された。
「…お前…っ」
「さぁ、俺も楽しませてもらうぜ…ハハッ」
_____✻✻_____
「大ちゃーん戻ったぜ~。…て、えぇ!?」
満は戻って早々、大声を出して大に駆け寄った。かなり焦っているようだ。
「大ちゃん!なんで…なんで……」
「満…」
「なんでもう弁当が空っぽなんだよー!」
満が焦ったことの1つは、短時間で大の弁当の中身が全てなくなっていたということ。
もう1つは、もう少しだけ大の弁当食べたかったから残念という気持ちだった。
「いやなんでって言われましても」
「…大ちゃんって食べるの早かったっけ?」
「…まぁ、人並み程度には」
「それって早いのか…?」
どこか様子が違うなと勘づいた満だが、美味しくて箸が進んだのだろうと、うんうんと頷いて共感した。
「さ、つべこべ言ってないで、満も早く食べなよ。先行くよ?」
「あ!待って待ってっ!」
いつものようにパンと牛乳をかきこんで、2人は教室に戻った。
_____✻✻_____
__数分後
屋上近くの階段で、授業が始まっているというのに、1人男が座っていた。
そこは、大がいつも座っている、階段の下から5番目右寄りの場所だった。
男は、またパンを握りしめたまま、薄気味悪い笑顔を浮かべていた。
「楽しかったぜ、大。…でも、まだまだこれからだよなぁ…?」
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