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凡人高校生
13話
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__休み時間
「ん~、疲れた~。ちゃんとノートもとってあるし、授業もちゃんと聞けたし。運がいいな~俺」
鬼教師の授業が終わり、満はすっかりリラックスタイムに入っていた。
あと、今の言葉の半分くらいは大のお陰なのだが。
「次の授業は……げ、英語かぁ。また眠くなるじゃんかー。……あ、そうだ。今のうちに寝とこう」
次に備えて、休み時間全てを睡眠に費やすことにした。
満は非常に寝るのが早く、目を瞑った時にはもう意識を飛ばしていることがよくある。
現に今、その状態だ。
すると、暇を持て余していた大が、満の席に寄ってきた。
「……」
また寝ていることに気づいた大だが、休み時間なので何も言わずに、ただじっと満を見つめていた。
でも暇なことに変わりはなかったので、大はどこから出したのか、よく使う下敷きを手に取った。
そして、満が起きないように彼の頭に下敷きを置き、素早く擦り始めた。大の動かすスピードと一定の速さを保っているのは、毎日練習したのかと思うほどだった。
数秒それを続けて、ここだというタイミングでピタリと動きをとめた。そして、ゆっくりと満の頭から下敷きを離していく。
すると、静電気で満の髪が下敷きにくっつき、何もしなくても髪が立った。
大は、やられっぱなしの満を笑いを堪えながら眺めていた。
それでも、満は起きる気配すら感じなかった。
これだけじゃ大の攻撃は終わらず、次に満の筆箱の中身を全部出した。
満は、使えるものは入れちゃえタイプなので、シャーペンが10本、3色ボールペンが3本など、絶対全部使わないだろと突っ込めるくらいにものが入っていた。
そして大は、満の机でその文房具たちを、正方形に並べて積んでいった。
「……ほっ」
5段目まで快調にペンを乗せていく。しかし、6段目に差しかかった時、満が小さく唸り声を上げてモゾモゾと動いた。
当然机も揺れるので、積み上げたペンたちがグラグラと揺れて倒れそうになる。
崩れるのを阻止するべく、大は後ろから、寝ている満に覆いかぶさって動きをとめた。
「……ん゛ー、……すーー……」
どうやらまだ寝ていてくれるようだ。大はほっと息をつき、残りのペンを積みに取りかかった。
「…で、出来た…」
創造部で鍛えた精神力と慎重さで、何とか全てのペンを積むことに成功した。
名ずけて、『満専用五重塔』だそう。
ネーミングセンスは壊滅的だが、その技術力には感服するばかりだった。
「…まだ足りないな」
これだけイタズラをしてきたというのにまだ飽きないらしい。大は、残り時間約5分で何をするか考えた。
「…あっ、そうだ」
どうやら閃いたらしく、満を見てニヤリと骨格を上げた。
嫌な予感しかしなかった。
_____✻✻_____
キーンコーンカーンコーン……
授業始まりのチャイムが全体に響き渡り、それは満の耳にも入ってきた。
「……んあ……もう授業か…」
挨拶をするために立ち上がろうとした満だが、どうにも椅子がおかしい。椅子というか、座り心地がおかしいのだ。
それに加え、いつも自分の席で見ている景色と違った。さっきより黒板が遠く感じる。
頭が回ってないせいかと思ったが、誰かが喋り出して違うと確信する。
「センセー、満くんが俺の膝から降りてくれませーん」
「……え?」
発言したのは大のようで、今の言葉が、満にはまだ理解出来きなかった。
しかし、自分が座っているのが椅子では無いと気づき、満の思考も強制復活する。
「は、…はぁぁあ!!?」
何と、自分の席で寝ていたはずが、いつの間にか大の席に体が移動しており、尚且つ大の膝の上に座っていたのだ!
「…満さん、早く自分の席に戻りなさい」
先生もウンザリしたようにため息をつき、優しく注意した。
「…えっ、…え~~……」
寝ている間に何が起こったのかわからず、満は渋々席へ戻った。
(…寝ながら大ちゃんの所行ってたのか?)
無意識な行動なのかと頭を悩ませながら椅子に座ると、その弾みで机に積んであったものが勢いよく倒れた。
「うおっ!?」
見た時にはもう、机に散乱しているペンしか残っていなかった。
「今の大きい音は……満さん…。ペンはきちんと筆箱にしまいましょう」
また満が何かやらかしたのかと、先生は呆れ果てて乾いた笑いしか出なかった。
どうしようと混乱して、無意識に大へと顔を向けた。すると、大はそれを心配する訳でもなく、寧ろ顔に笑みを貼り付けていた。
この時、満は悟った。あ、コイツがやったんだ、と。
それからの授業内容は、もうよく覚えていない。
「ん~、疲れた~。ちゃんとノートもとってあるし、授業もちゃんと聞けたし。運がいいな~俺」
鬼教師の授業が終わり、満はすっかりリラックスタイムに入っていた。
あと、今の言葉の半分くらいは大のお陰なのだが。
「次の授業は……げ、英語かぁ。また眠くなるじゃんかー。……あ、そうだ。今のうちに寝とこう」
次に備えて、休み時間全てを睡眠に費やすことにした。
満は非常に寝るのが早く、目を瞑った時にはもう意識を飛ばしていることがよくある。
現に今、その状態だ。
すると、暇を持て余していた大が、満の席に寄ってきた。
「……」
また寝ていることに気づいた大だが、休み時間なので何も言わずに、ただじっと満を見つめていた。
でも暇なことに変わりはなかったので、大はどこから出したのか、よく使う下敷きを手に取った。
そして、満が起きないように彼の頭に下敷きを置き、素早く擦り始めた。大の動かすスピードと一定の速さを保っているのは、毎日練習したのかと思うほどだった。
数秒それを続けて、ここだというタイミングでピタリと動きをとめた。そして、ゆっくりと満の頭から下敷きを離していく。
すると、静電気で満の髪が下敷きにくっつき、何もしなくても髪が立った。
大は、やられっぱなしの満を笑いを堪えながら眺めていた。
それでも、満は起きる気配すら感じなかった。
これだけじゃ大の攻撃は終わらず、次に満の筆箱の中身を全部出した。
満は、使えるものは入れちゃえタイプなので、シャーペンが10本、3色ボールペンが3本など、絶対全部使わないだろと突っ込めるくらいにものが入っていた。
そして大は、満の机でその文房具たちを、正方形に並べて積んでいった。
「……ほっ」
5段目まで快調にペンを乗せていく。しかし、6段目に差しかかった時、満が小さく唸り声を上げてモゾモゾと動いた。
当然机も揺れるので、積み上げたペンたちがグラグラと揺れて倒れそうになる。
崩れるのを阻止するべく、大は後ろから、寝ている満に覆いかぶさって動きをとめた。
「……ん゛ー、……すーー……」
どうやらまだ寝ていてくれるようだ。大はほっと息をつき、残りのペンを積みに取りかかった。
「…で、出来た…」
創造部で鍛えた精神力と慎重さで、何とか全てのペンを積むことに成功した。
名ずけて、『満専用五重塔』だそう。
ネーミングセンスは壊滅的だが、その技術力には感服するばかりだった。
「…まだ足りないな」
これだけイタズラをしてきたというのにまだ飽きないらしい。大は、残り時間約5分で何をするか考えた。
「…あっ、そうだ」
どうやら閃いたらしく、満を見てニヤリと骨格を上げた。
嫌な予感しかしなかった。
_____✻✻_____
キーンコーンカーンコーン……
授業始まりのチャイムが全体に響き渡り、それは満の耳にも入ってきた。
「……んあ……もう授業か…」
挨拶をするために立ち上がろうとした満だが、どうにも椅子がおかしい。椅子というか、座り心地がおかしいのだ。
それに加え、いつも自分の席で見ている景色と違った。さっきより黒板が遠く感じる。
頭が回ってないせいかと思ったが、誰かが喋り出して違うと確信する。
「センセー、満くんが俺の膝から降りてくれませーん」
「……え?」
発言したのは大のようで、今の言葉が、満にはまだ理解出来きなかった。
しかし、自分が座っているのが椅子では無いと気づき、満の思考も強制復活する。
「は、…はぁぁあ!!?」
何と、自分の席で寝ていたはずが、いつの間にか大の席に体が移動しており、尚且つ大の膝の上に座っていたのだ!
「…満さん、早く自分の席に戻りなさい」
先生もウンザリしたようにため息をつき、優しく注意した。
「…えっ、…え~~……」
寝ている間に何が起こったのかわからず、満は渋々席へ戻った。
(…寝ながら大ちゃんの所行ってたのか?)
無意識な行動なのかと頭を悩ませながら椅子に座ると、その弾みで机に積んであったものが勢いよく倒れた。
「うおっ!?」
見た時にはもう、机に散乱しているペンしか残っていなかった。
「今の大きい音は……満さん…。ペンはきちんと筆箱にしまいましょう」
また満が何かやらかしたのかと、先生は呆れ果てて乾いた笑いしか出なかった。
どうしようと混乱して、無意識に大へと顔を向けた。すると、大はそれを心配する訳でもなく、寧ろ顔に笑みを貼り付けていた。
この時、満は悟った。あ、コイツがやったんだ、と。
それからの授業内容は、もうよく覚えていない。
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