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凡人高校生
7話
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__???
「…今日も、アイツのところに行くか。…ハハハッ」
屋上近くの階段に部活にも行かず、残った購買のパンを頬張っている青年が1人。
彼の周辺には、不穏な空気がまとわりついていた。
_____✻✻_____
部活が終わり、大は生徒玄関に向かっていた。空き教室からはかなり距離があり、後輩たちを先に帰らして掃除をしていたので、少し遅くなってしまったようだ。
(…満。まだいるかな)
そんなことを考えながら、早歩きで廊下を駆け抜けた。すると、その曲がり角に、誰かの人影が見えた。
それが誰なのか、大はスラリとした見た目とオーラで察した。
「蓮見じゃん」
「や、大。お疲れ」
大の予想通り、それは蓮見だった。厳しい指導後だというのに、彼は涼しい顔をして大を待っていたようだ。
「何で蓮見がここに?」
体育館から空き教室までは、明らかに距離がありすぎだ。それなのに蓮見は、わざわざ疲れた体でここまで来ている。間違いなく、大に用事があって待っていたのだろう。
「はぁ。大は、早く満のところに行きたいと思ってるから、それを読んで、俺も早く来て待ってたのに。…今日に限って、なんで遅いかな。大は」
「……?どういう……__」
蓮見が何を考えているのかわからず、首を傾げるだけになってしまう。
しかし蓮見は、そんなことは関係ないと言うように、冷静沈着な様子だった。
「…俺、満から大の部活教えて貰って、ずっと待ってた。ずっとね」
大は、何かいつもの蓮見じゃないと悟った。いつもの蓮見は、本当に涼しい奴で、背景には星屑と青空が広がっていた。
けれど今の蓮見の後ろには、夜の漆黒の空しか、現れていなかった。星も雲も月も何も無い。ただの黒だ。そんなオーラが漂っているのが、大にはわかった。
普段と全然雰囲気が違う蓮見を見たからこそ、彼は何も喋れなかった。口が動かなかった。
「…大にとっては、本当にくだらない事なんだけどね」
「……」
「…大はさ。………部活楽し?」
「……は?」
呆然としてしまった。意味がわからなくなり、思考回路も上手く動いていない。
そりゃあ、何分も自分を待って、やっと言った質問がそんなことなんて。本当に、くだらないことだったのだ。
言葉を発するのに、少々時間を食った大は、数秒の沈黙をかき消すように声を出した。その返事も、まだ理解が追いついていなく、曖昧なものだった。
「…え、…いや、それはまぁ、楽しいよ。
後輩たちとも仲良くやってるし…。俺自身も満足してるし…」
その回答に、蓮見はいつも通りの笑顔で対応した。しかし、一瞬だけ目が細められたような気がした。
「そっか。ならよかったよ」
「……それだけ?」
大は、これだけなわけが無い。何かまだ言えなかったことがあるはずだと、蓮見に問い返した。
蓮見は、変わらずな笑顔で大を見つめた。その行動に大は、もう詮索するなと目で訴えているように感じた。
1歩後ろに下がった大を見届けると、蓮見は身を翻し、床を蹴って歩き出した。
「さ、早く行かないと。満帰っちゃうよ?」
「……そうだね」
今の2人の時間に、一体なんの意味があったのだろうと、大は考えた。思いつく限りを出したが、やはり、まだわからなかった。
(…なんか、変な感じ)
その違和感を胸にしまったまま、大は蓮見と長い廊下を歩き続けた。その廊下は、いつもの倍、長距離に感じた。
「…今日も、アイツのところに行くか。…ハハハッ」
屋上近くの階段に部活にも行かず、残った購買のパンを頬張っている青年が1人。
彼の周辺には、不穏な空気がまとわりついていた。
_____✻✻_____
部活が終わり、大は生徒玄関に向かっていた。空き教室からはかなり距離があり、後輩たちを先に帰らして掃除をしていたので、少し遅くなってしまったようだ。
(…満。まだいるかな)
そんなことを考えながら、早歩きで廊下を駆け抜けた。すると、その曲がり角に、誰かの人影が見えた。
それが誰なのか、大はスラリとした見た目とオーラで察した。
「蓮見じゃん」
「や、大。お疲れ」
大の予想通り、それは蓮見だった。厳しい指導後だというのに、彼は涼しい顔をして大を待っていたようだ。
「何で蓮見がここに?」
体育館から空き教室までは、明らかに距離がありすぎだ。それなのに蓮見は、わざわざ疲れた体でここまで来ている。間違いなく、大に用事があって待っていたのだろう。
「はぁ。大は、早く満のところに行きたいと思ってるから、それを読んで、俺も早く来て待ってたのに。…今日に限って、なんで遅いかな。大は」
「……?どういう……__」
蓮見が何を考えているのかわからず、首を傾げるだけになってしまう。
しかし蓮見は、そんなことは関係ないと言うように、冷静沈着な様子だった。
「…俺、満から大の部活教えて貰って、ずっと待ってた。ずっとね」
大は、何かいつもの蓮見じゃないと悟った。いつもの蓮見は、本当に涼しい奴で、背景には星屑と青空が広がっていた。
けれど今の蓮見の後ろには、夜の漆黒の空しか、現れていなかった。星も雲も月も何も無い。ただの黒だ。そんなオーラが漂っているのが、大にはわかった。
普段と全然雰囲気が違う蓮見を見たからこそ、彼は何も喋れなかった。口が動かなかった。
「…大にとっては、本当にくだらない事なんだけどね」
「……」
「…大はさ。………部活楽し?」
「……は?」
呆然としてしまった。意味がわからなくなり、思考回路も上手く動いていない。
そりゃあ、何分も自分を待って、やっと言った質問がそんなことなんて。本当に、くだらないことだったのだ。
言葉を発するのに、少々時間を食った大は、数秒の沈黙をかき消すように声を出した。その返事も、まだ理解が追いついていなく、曖昧なものだった。
「…え、…いや、それはまぁ、楽しいよ。
後輩たちとも仲良くやってるし…。俺自身も満足してるし…」
その回答に、蓮見はいつも通りの笑顔で対応した。しかし、一瞬だけ目が細められたような気がした。
「そっか。ならよかったよ」
「……それだけ?」
大は、これだけなわけが無い。何かまだ言えなかったことがあるはずだと、蓮見に問い返した。
蓮見は、変わらずな笑顔で大を見つめた。その行動に大は、もう詮索するなと目で訴えているように感じた。
1歩後ろに下がった大を見届けると、蓮見は身を翻し、床を蹴って歩き出した。
「さ、早く行かないと。満帰っちゃうよ?」
「……そうだね」
今の2人の時間に、一体なんの意味があったのだろうと、大は考えた。思いつく限りを出したが、やはり、まだわからなかった。
(…なんか、変な感じ)
その違和感を胸にしまったまま、大は蓮見と長い廊下を歩き続けた。その廊下は、いつもの倍、長距離に感じた。
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