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凡人高校生
6話
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__空き教室
「先輩見てください!」
「お?どうした~」
創造部では、黙々と作業をしている部員たちの姿が見られた。
「羊毛フェルトでうさぎさんを作ったんです!可愛くないですか?」
「おお!すげぇじゃん。入ったばっかなのにもう慣れてるし、上出来だよ」
普段満に見せる、からかうような顔が、今ではすっかり消え去っている。おそらく、大にとっての数少ない後輩だからだろう。
大は満と接するよりも優しさ10倍で後輩と話していた。
「ありがとうございます!元々こういうの得意で。でも先輩に比べたらまだまだなので、もっと頑張って、展示出来るくらいの作品を作ります!」
「鍛錬したまえ」
大は、後輩の頭を撫でた。後輩も大に懐いてくれているようで、撫でられても嫌な気持ちはしなかったらしい。寧ろ喜んでいた。
「えへへ。先輩は何作ってるんですか?」
「俺?俺はダンボールでミニスカイツリーを」
「え!?細かッ!こんな精密なのよく作れますね。さすが先輩です!!」
「まぁ、ずっとここにいたら、いろいろ出来るようになるしね」
途中の作品を大は後輩に見せた。後輩はまじまじとその作品を見つめ、目をキラキラと輝かせた。
「…すごいです」
呆然としてしまい声もあまり出ず、後輩は、尊敬の眼差しを向けることくらいしか出来なくなっていた。
その時、その平和な空間に横槍を入れるベく、もう1人の部員が鼻で笑いながら呟いた。
「おいおい。まさか、コイツの作品見て見習おうとでも思ってるのか?新入部員」
相手を煽り立てるような口調で、奥行きのある窓の窓辺に座って見下ろしている。
それに反抗するべく、後輩は椅子から立ち上がって窓へと体を翻した。
「も~、前から言ってるじゃないですか!僕は姫野です!ちゃんと名前で呼んでくださいよ、朝霧先輩!!」
姫野は、頬を膨らまして怒った。その一つ一つの仕草が、女の子らしく可愛い雰囲気を感じさせた。
一方朝霧という男は、姫野とは真逆であり、片耳ピアスに髪も少し染めている。オマケに口も悪い。どこからどう見ても、正真正銘の不良だった。
「俺様は信用してる奴の名前しか覚えない主義なんだ。新入部員。お前はまだ信用出来ない」
制服を崩して着ている、いかにも不良らしい格好をした朝霧が、冷たい目で姫野を睨んだ。
「も~、何この人。狭い!心が狭いですよ先輩!!」
「勝手に言ってろ」
その視線を怖がるわけでもなく、姫野は朝霧に楯突いた。それを止めるようにして、大が口を挟んだ。
「こらこら、喧嘩しないの2人とも。仲良く仲良く。ラブアンドピース」
手のひらをピースの形にして少しふざけながら、大は平和に喧嘩を止めようとした。
「喧嘩じゃないですよ~。大先輩からも何か言ってやってください!」
「ったく。やっぱり大頼りかよ。てか、お前がラブアンドピースとか、変だぞ」
「あ、それは僕も思いました」
さっきまで敵意を向けていた朝霧に、あっさりと同意してしまう。
「…君たち、仲は悪いけど、相性はいいんじゃないの…。そして俺は後輩からの冷たい言葉に心が痛い」
わざと言ったのに真剣に返されて、出す手が無くなった。
「弱い振りばっかしてんなよな。キモイぞ」
「そうですよ!先輩はもっと、朝霧先輩より胸を張って生きなきゃ!」
「姫野くん。君も朝霧くんと同じこと言ってるのわかってる?後輩の言葉が1番刺さるんだが」
「あ!すいません!なんか先輩見てると可哀想になってきてそれで」
「もう君、喋らなくていい。俺の心が君の言葉でズタボロだから喋らなくていい」
「わかりました!」
「……」
創造部は、今日も一段と賑わっていた。
「先輩見てください!」
「お?どうした~」
創造部では、黙々と作業をしている部員たちの姿が見られた。
「羊毛フェルトでうさぎさんを作ったんです!可愛くないですか?」
「おお!すげぇじゃん。入ったばっかなのにもう慣れてるし、上出来だよ」
普段満に見せる、からかうような顔が、今ではすっかり消え去っている。おそらく、大にとっての数少ない後輩だからだろう。
大は満と接するよりも優しさ10倍で後輩と話していた。
「ありがとうございます!元々こういうの得意で。でも先輩に比べたらまだまだなので、もっと頑張って、展示出来るくらいの作品を作ります!」
「鍛錬したまえ」
大は、後輩の頭を撫でた。後輩も大に懐いてくれているようで、撫でられても嫌な気持ちはしなかったらしい。寧ろ喜んでいた。
「えへへ。先輩は何作ってるんですか?」
「俺?俺はダンボールでミニスカイツリーを」
「え!?細かッ!こんな精密なのよく作れますね。さすが先輩です!!」
「まぁ、ずっとここにいたら、いろいろ出来るようになるしね」
途中の作品を大は後輩に見せた。後輩はまじまじとその作品を見つめ、目をキラキラと輝かせた。
「…すごいです」
呆然としてしまい声もあまり出ず、後輩は、尊敬の眼差しを向けることくらいしか出来なくなっていた。
その時、その平和な空間に横槍を入れるベく、もう1人の部員が鼻で笑いながら呟いた。
「おいおい。まさか、コイツの作品見て見習おうとでも思ってるのか?新入部員」
相手を煽り立てるような口調で、奥行きのある窓の窓辺に座って見下ろしている。
それに反抗するべく、後輩は椅子から立ち上がって窓へと体を翻した。
「も~、前から言ってるじゃないですか!僕は姫野です!ちゃんと名前で呼んでくださいよ、朝霧先輩!!」
姫野は、頬を膨らまして怒った。その一つ一つの仕草が、女の子らしく可愛い雰囲気を感じさせた。
一方朝霧という男は、姫野とは真逆であり、片耳ピアスに髪も少し染めている。オマケに口も悪い。どこからどう見ても、正真正銘の不良だった。
「俺様は信用してる奴の名前しか覚えない主義なんだ。新入部員。お前はまだ信用出来ない」
制服を崩して着ている、いかにも不良らしい格好をした朝霧が、冷たい目で姫野を睨んだ。
「も~、何この人。狭い!心が狭いですよ先輩!!」
「勝手に言ってろ」
その視線を怖がるわけでもなく、姫野は朝霧に楯突いた。それを止めるようにして、大が口を挟んだ。
「こらこら、喧嘩しないの2人とも。仲良く仲良く。ラブアンドピース」
手のひらをピースの形にして少しふざけながら、大は平和に喧嘩を止めようとした。
「喧嘩じゃないですよ~。大先輩からも何か言ってやってください!」
「ったく。やっぱり大頼りかよ。てか、お前がラブアンドピースとか、変だぞ」
「あ、それは僕も思いました」
さっきまで敵意を向けていた朝霧に、あっさりと同意してしまう。
「…君たち、仲は悪いけど、相性はいいんじゃないの…。そして俺は後輩からの冷たい言葉に心が痛い」
わざと言ったのに真剣に返されて、出す手が無くなった。
「弱い振りばっかしてんなよな。キモイぞ」
「そうですよ!先輩はもっと、朝霧先輩より胸を張って生きなきゃ!」
「姫野くん。君も朝霧くんと同じこと言ってるのわかってる?後輩の言葉が1番刺さるんだが」
「あ!すいません!なんか先輩見てると可哀想になってきてそれで」
「もう君、喋らなくていい。俺の心が君の言葉でズタボロだから喋らなくていい」
「わかりました!」
「……」
創造部は、今日も一段と賑わっていた。
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