凡人高校生

ゆるだら公

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凡人高校生

3話

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__男子更衣室

「はぁ。昼飯食べた後すぐに体育とか、嬉しいけどダルいな」

「腹痛確定案件ワロタ」

少しシワのある制服を脱ぎ、みんな体操着に着替えていく。

「笑ってる場合かよ、大ちゃん。てか、ネット用語現実で使う人初めて見たわ」

「案外みんな使ってるぞ」

「それも違くね?てか今日何するんだっけ」

「バスケ~」

「うわ、食後にハード。逆流するかも」

「汚いこと言うな……あ」

カバンを漁っていた大が突然固まる。

「どうした?」

「…ジャージの上着忘れた」

「春だぞ?」

「まだ充分寒い。満、上着貸して…って、持ってるわけないか」

「?そりゃそうだろ」

「お前が羽織るのはごく稀だもんね。年中半袖短パンの小学生かよ」

「うるせぇ」

「とにかく、誰か持ってる奴探すか」

寒がりの大は、更衣室の辺りを見渡して、ジャージの上着を持っている人を探した。

「あっ、おい大ちゃん、あそこに…」

「あ!いた!」

満が指を指し、言葉を言いかけた途端、大は違う方向へと小走りで向かった。

(?なんであっちに行ったんだ。よく見れば周り見渡さなくても、他にも何人か持ってるのに)

満は疑問を抱きながらも、あまり気にはしなかった。

「ね、上着貸してくんない?」

「ん?大か」

声をかけたのは、兄貴肌で高身長の爽やかイケメン、蓮見はすみだった。

「くッ。相変わらず爽やかな顔しやがって」

「そうかな。ありがとう」

「人への対応も神対応…!」

「それより、貸してほしいんでしょ。はい」

「蓮見は、大丈夫…?」

自分が頼んだのだが、やはり気が引けてしまったのか、恐る恐る聞き返した。

「俺、誰にでも貸せるように、年中上着も長ズボンも持ってきてるんだ。だから大丈夫だよ」

「ま、眩しすぎるぜ、兄貴…!!」

「はいはい。次は俺が困った時、大が助けてよ」

「喜んで!!」

蓮見の下僕かのように、大は何度も頭を下げた。そして、元いた場所へと駆け足で戻る。

「蓮見が貸してくれた。やっぱりいい奴だな」

「………」

「…満?」

「……ッあ、ごめん。ボーッてなってたわ」

「?どうしたんだよ。さっきの雑誌の女でも思い出してた?笑」

「そ、そんなんじゃねぇしッ!!」

「なら、俺は先に行くよ。遅れちゃう」

「あ、うん。わかった…」

1人でその場に突っ立っている満。さっきと比べて様子がおかしい。

(…なんだ?なんかすっげぇモヤモヤする…)

原因不明の現象に頭を悩ませる満であった。

「ウーン」

「ねぇ、なんでドアの前でカカシみたいに突っ立ってるの?」

「ん?うわぁ!!?蓮見!?」

満が授業そっちのけで考え込んでいたら、蓮見が話しかけてきた。後ろから顔を覗き込んで、満を観察していたようだ。

「なにか考え事?なんなら俺が聞くよ。言った方がスッキリするし」

「……」

「言えない?」

「いや、そういうわけじゃ…」

「じゃあ話してみて」

理由を聞きたがる蓮見に満は諦めを感じ、正直に今考えていることを話した。

「……なんか、今すっごい心臓ら辺がモヤモヤしてるんだ。気持ち悪ぃ」

「体調悪いとかそういうのじゃなくて?」

「俺が体調壊すなんてありえない」

「はは、すごい自信」

苦笑いで返した蓮見。でも内心では本当に心配しているようだった。満のことを考えて気を利かせて話を聞いてあげる。まさにハイスペック男子だ。
満は、そんな言葉知らないし聞いたこともないといった性格なので、蓮見が満のことを考えてくれていることには気づかないだろう。
満はそのまま、言葉に表しにくい感情を蓮見に述べた。

「あと、モヤモヤするとき、だいたいそこに大ちゃんがいるんだ」

「大?喧嘩でもした?」

「いや、めっちゃ仲良し。大ちゃんが他の人と喋ってるの見るとモヤモヤしてくる。…病気かも」

「………」

悲しそうに下を向きながら話す満に、蓮見は少し驚きの表情を見せていた。そのすぐ後に、納得した表情に変わった。

「…ふ、はははっ…!」

「!…なんだよ。お前も笑うのかよ!」

「いやっ、そういうことじゃ笑」

「思いっきり笑ってんじゃねぇか」

もう。と、満は頬を膨らませた。手で口を覆って上品に笑っていた蓮見は、何とか湧き上がる笑いを堪えた。

「…ふぅ。満、そのモヤモヤの正体わかる?」

「わからないから、悩んでんだろ」

当然の答えだった。しかし蓮見は逆にうんざりするような気持ちになった。ここまで来ても気がつかないのかと。
でも、この思いは心の奥に閉まっておくことにした。

「だよね~。でも俺、その正体わかったかも」

「え?!ホントか!さすがイケメン!」

「イケメンは関係ないッ」

ズバッと蓮見が恥じらい交じりに突っ込む。

「それで、なんなんだよ」

満は蓮見の顔をじっと見て首を傾げている。本当に鈍感というか、察しの悪い奴だなと、蓮見は逆に尊敬してしまった。

「んー、…満自身は気づいてないんだよね?」

「?うん」

「あー…、じゃあ教えられないかな」

「は?!なんで?!」

ここまできて教えないとなると、満も動揺せざる負えなくなる。満は焦らしが好きではなかった。

「自分で考えろってこと。計算問題解くみたいにさ」

「ぐぬぬ…」

満はまた頬を膨らませて、視線を上にやり、蓮見を睨んだ。

「ははっ、何その目。まぁ、そのうちわかると思うから。頑張ってね」

「…蓮見って以外と意地悪だよな」

「そうかな。俺はこう見えて、優しいって言われる方だよ」

「俺には優しくしねぇのかよ」

「それとこれとは違~う」

「…やっぱ意地悪だな、お前」
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