凡人高校生

ゆるだら公

文字の大きさ
上 下
1 / 24
凡人高校生

1話

しおりを挟む
学校の校舎裏。2人の青年。何か大事な話をしていることは、だいたい予想がつく。
そのうちの1人が、カタカタと小刻みに震えていて立ちすくんでいた。

「………嘘…………だろ………」



_____✻✻_____



__数年前

「なぁ~、大ちゃんだいちゃん

「…なんだよ」

「アイスってさ。なんで溶けるんだろうな」

「………」

いつもの公園。いつもの2人。今年の春に高校3年生になった青年たちは、たわいも無い会話をしながら、学校に向かうために足を運んでいた。

「そんなことよりさ。噂で聞いたことあるんだけど」

「話をしだしたたのはお前だぞ。みつる

「あれ、そうだっけ。まぁ、どうでもいいでしょ」

「…お前って奴は」

「最近、学年でさ、噂になってたんだけど。…大ちゃんってさ、……彼女いるの?」

「……はぁ??」

あまりにも突然の質問に、驚きを隠せなかった大。

「だって、みんな言ってたぞ。大ちゃんが、休日女の子と一緒に歩いてたって」

少しばかりしょんぼりとした顔で、満は下を向いた。

「…はぁ。それは多分、バイトの先輩。休日外歩くのはそれくらい。あとその人、女装癖の男。彼女なんていない」

「ホントか!?はァ~~、よかった~。ホッとしたわ」

「なんでお前が安心するんだよ」

すかさず大が突っ込む。満は小っ恥ずかしそうに答えた。

「だってさ……、もし大ちゃんに彼女ができたら、俺の相手なんてしてくれなくなるだろ」

「………」

2回目の満の予想外の発言に、大は口を開けたままポカンとしていた。けれど次の瞬間、静かな朝に大きな笑い声が響き渡った。

「……ふ、ッあはははは!!!」

「!?なんで笑うんだよ」

満も、また声を上げた。

「はぁ。…お前って本っ当に馬鹿な奴だな」

満を挑発するかのように話す大。その声には、馬鹿すぎておかしくなってしまうといった思いが、その笑いにはこめられていた気がする。

「!…事実を言っただけなのに」

「そこが余計に、面白くさせてんの」

「意味わかんねぇよ。大ちゃん」

今日のテストのことなんか忘れているかのように、おかしな話を楽しみながら2人は校門をくぐった。女装癖の先輩のことは、誰も触れなかった。



_____✻✻_____



「あッ!!ヤバッ!!」

教室中に聞こえるような大声で、満は席を立った。

「…うるさい。どうしたの」

「課題やってない…」

「………」

2人の間に沈黙が続く。それを破るように、満がリュックの中を漁りながら喋る。

「ヤバい。今日は数学鬼教師の授業があるってのに…!」

「………はぁ」

慌てている満にため息をつくや否や、大は満の机に1冊のノートを置いた。

「鬼教師の授業3時間目だし、これ写しとけば、何とかなるんじゃない?」

そう言ってすぐそっぽを向いて、大は自分の席へと戻った。

「~~~ッ!!大ちゃん!恩に着るぜ!!」

満は、うんと遠くへ届くような声で、感謝の言葉を告げた。

「ハッ。それは毎日だろ」

大の返事は、呆れたように聞こえたが、満には、少し嬉しがっているように思えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

処理中です...