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第9章 やって来たオリエンテーション編

オリエンテーション開始 -7-

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「男ってさぁ、何でハーレム作りたがるのかしら?」
「お姉様。女性でも逆ハー好きな方はいらっしゃいますわ」
「ああ、そう言えばいたわね。痴女令嬢とか、無理くり転生して来てた男の娘とか。要するに男女の別は関係なくて、とにかく自分がモテたいだけの愛され願望持ちってことなのかしらね? D○NのDNAとか、エンディの御世に残して欲しくないから無駄に増殖しようとしないでよね」
「その分別がお有りの方は、そもそもハーレム願望など持たれませんわ」
「それなー」
「……………」

 僕が到着した時には、もう既に戦場になっている筈の場は、こういうことになっていた。

 俯せに倒れているのは、僕達が優先捕縛対象にしていた色ボケ……ごほん、ごほん。

 ガンマランダルの第2王子、ミスラフェン王子だ。

 そしてその、お尻。

 丁度、割れ目に当たるような位置に、わざわざ片方だけ履き替えたピンヒールを食い込ませて話しをしているのは、アリィ。

 後ろ頭を同じようにピンヒールで踏んで話しているのは、フランだった。

 2人は僕が来た時には、もうこの状態でミスラフェン王子を踏んでたんだけど、彼は抵抗らしい抵抗を今以って殆どしていなくて、大人しく2人に踏まれている。

「あふんっ♡ ……アリューシャ嬢……もっと……もっと奥まで踵を入れて踏んでくれっ」
「煩いわねっ! アンタを気持ちよくさせてやる為に踏んでるんじゃないわよ!」
「あふぁん♡ そ、そこだっ、もっと! もっと奥までっ!」
「キモぉぉぉぉぉぉい! うざぁぁぁぁぁぁぁぁぁい‼︎‼︎‼︎‼︎ 〈光の縛鎖ライトニングチェイン〉っ!」

 何だか、痴女令嬢みたいにヤバそうな台詞を吐いたミスラフェン王子をアリィがガスガスっと踏みつけるとホント勘弁して欲しいな、と思うような発言を繰り返し、アリィに光の鎖でギッチリと捕縛されていた。

「ああっ……流石は現聖女。何と私の性癖にマッチした攻めを繰り出す女なのだっ。益々そなたを私のハーレムに入れたくなったぞ!」
「あげないよ」

 まだ自分のハーレムそんなもんを実現出来る目が残ってると思えるなんて、どんな頭してるのさ、キミ。

 この場にエルが居ないのは、キミを強制送還する為に必要な2人を彼が転移魔法で迎えに行ってるからなんだよ?

「ふん。そうして上から目線で偉ぶっていられるのも今の内だ。私が真の勇者となった暁には、聖女たる彼女は、正統に私の物になるのだからな」
「その前に、お前が勇者になれるかー‼︎」
「ぐふん♡」
「血筋でもなければ、サーシャエール様のお認めもない貴方が真の勇者になることなどございませんわ。例え、勇者の力を奪って手に入れることが出来たとしてもそれは一時的なこと。そう遠くない未来に貴方の中からそれは消え去り、エンディ兄様に戻ってゆくだけのことなのですから」
「称号資格者舐めんじゃないわよ!」

 そうなんだよね。

 結局、称号を強奪する手段だったらしい痛イン嬢その1が、もう女神様に回収されちゃってるからそれを繰り返して奪い続けることも保持ホールドすることも出来ない筈だから。

「ふっふっふ。アリューシャ嬢、フランソワーヌ嬢。心配せずとも手段はある。すぐに私の物にしてやるから安心してその日を待つがいい」

 2人が否定として紡いだ言葉を何故か心配と受け取ったミスラフェン王子が、不敵な笑いを漏らしながら言ったことに彼の後ろ頭とお尻をそれぞれ踏んでいたアリィとフランが顔を見合わせる。

「何、寝言言ってんのよ? アンタ」
「寝言ではない。事実だ。レミルアから聞いたのだよ。彼女に御神託があって、今代の魔王は女性魔王で、私達に賛同している “資格者交代ライセンス・チェンジャー” の力を持っている方そうなのだそうだ。人間達を魔族の力で虐げ、強制支配するよりも淫靡で耽美で愛と肉欲に満ちた目合まぐわいをお望みだ。何と素晴らしい世界なのだろう!」

 女神様がその存在を掴むことが出来ないと言っていた3人の内の1人が、その魔王だった筈だけど思わぬ所から情報が入って来る形になった。

「まぁ、凄いですわミスラフェン殿下。レミルア嬢を通じて魔王と繋がっておられますのね?」

 あ。

 フランが言質取りにいった。

「おお! 私の素晴らしさを理解してくれるのか、フランソワーヌ嬢。そうとも。魔王が私を真の勇者としたならば、毎日でもそなたの中へ私の子種を解き放ち、愛と肉欲に溺れる日々を送らせてあげよう!」

 凄いなぁ……どんな頭してたら目の前の女の子が、無条件でそれを望んでるって、ああも思い込むことが出来るんだろう?

 フランの笑顔がメチャクチャ冷たい。

 絶対零度の微笑みって、きっとああ言うのを言うんだよね。

「そういえば、エンディミオン王子。キミもとある界隈でNo.1受け王子と呼ばれているそうだね? 出涸らし勇者と化した折りには、キミも私の下で鳴かせてあげようか? 私は、博愛精神に満ちた勇者となるからね。色っぽく可愛らしく喘ぐと言うキミの痴態を堪能してあげるよ?」

 アリィとフランに踏まれながら、そんな台詞を宣ったミスラフェン王子に僕は全身鳥肌が立って血の気が引いた。

 ドン引いた僕の様子を見て、額に右手を当てながら深々と溜息をつくフラン。

「ふざけんなっ! エンディは私のよ!」

 再び彼のお尻をガシガシ踏んづけながら文句を言うアリィ。

 ……ねぇ、僕 “ゲーム” の内容見せて貰ってる筈だけど、そのNo.1受け王子とか言われてる自分は知らないよ?

 どう言うこと⁈

 僕の知らない条件分岐みたいのが、まだあるの⁈

 まさか、リリエンヌ嬢みたいに僕も皆に隠されてる危険な状態に置かれる “ストーリー” があるとか言わないよね⁈

 僕、ただでさえ気をつけなきゃいけない分岐多いのに! もうやだー‼︎



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