430 / 458
第8章 そして始まる学院編
俺達の誤算 -2-
しおりを挟む
「わたくしの展開していた索敵に引っかかりましたので、彼女の方を見て微笑んだら顔を引き攣らせて去っていかれましたわ」
「……もしかして、廊下に落ちてた霰みたいな氷の粒……」
「まぁ、何のお話しでございましょう? ほほほほほほほ」
どうやら当たりらしい。
「……そうか。いたのか。参ったな。ダンジョンに居る時みたいに索敵魔法を常時展開して過ごすべきだろうか」
「いや、流石に授業中はいらねぇだろ」
呟いた俺にエルドレッドがそう答えた所で、拠点部屋にダリルさんを伴って国王陛下と王妃様がやってきた。
「苦戦しとるようだな」
「肥溜め行きにしてやってもチビどもに嫌がらせされても意に介さない女だからな」
国王陛下が入室してすぐ俺達に向かって仰ったことへ、すかさずエルドレッドがその理由を口にする。
「師匠。あの女は精霊達がしてくる地味地味攻撃を新たな聖女である自分に精霊達が構ってもらいたがっているんだと解釈していますよ?」
「わお。流石のダイヤモンドメンタルね! ポジティブもそこまで行けば本物だわー。ダメな意味でだけど」
マックスとルナが2人揃って肩を竦めながら言ったことにエルドレッドが、物凄く嫌そうな顔をした。
「よし、分かった。もう今後は俺のトコに現れたら問答無用で肥溜め転移決行するわ」
「……そこで牢獄に転移しないのが貴方らしいわね。魔導王くん?」
「どうやってんのか知んねぇけど、速攻、脱走すんだよ、あの女」
王妃様が揶揄と呆れを前面へと出して仰ったことにも決して試したことがない訳ではなかったらしいエルドレッドは、その結果を事実として口にする。
「小僧、お前あの娘のステータス見とらんのか?」
「あの女をじっくり見るとか嫌なこった! 一瞬、視線向けただけで、気もっ悪りぃ声だして、こっち飛んでくんだぞ⁈」
「……と言う感じでして。自分の子供を通してそれを知った反王家派、並びに反魔導王派の連中が、彼女の獲得に動き出したっぽいんですよね」
「げ」
ダリルさんからの情報にエルドレッドが吐き出した1音は、あの遅刻伯爵令嬢が、エルドレッドの弱点であると認識されたことに対して漏れた物だった。
「おい、ダリル。何で俺、とばっちり食っとんのだ?」
「陛下は、とばっちりというより序でとか、これ幸いとか、この機に乗じてみたいなニュアンスですね。本命は魔導王殿ですよ」
さらっと言い放ったダリルさんに何故か国王陛下はヘコンでしまって、王妃様に背を叩かれて慰められていた。
「しかし……そいつらバカなのか? いくら勇者と聖女が揃って覚醒済みとはいえ、魔王戦にエルドレッドが居るのと居ないのとじゃ、攻略難易度が天地だぞ?」
「そうですわ! それにエルドレッド様がその方達に何をしたと仰るのですか?」
「反国王派だか、反エル派だか知らないけど、あの女、そいつらの思い通りに動くような女じゃないわよ⁈ もしそうなら、とうの昔にわたし達だって意思疎通くらい図れてる筈じゃない⁈」
俺とリリエンヌ嬢が言ったことに加えて、アリューシャ嬢が最もなことを言い出して、俺達の空気が一斉に「確かにな」みたいな色に染まった。
「あー……とにかく、今回はエンディに実害が出てるから流石に受け流しすんのはマズい。宰相閣下。あの女の両親ってまだ領地からこっちに出て来れてねぇ感じなんです?」
「ああ。早馬の知らせでは到着予定は3日後だそうだ。何でも令嬢が王都へ来て勝手に学院へ入学しとるのも知らなかったようでな。逃亡先や潜伏先になりそうな所をほぼ、家族総出でバラバラに捜索しとった所為で連絡が行き渡って集合するのに時間を食ったらしい」
「まぁ、その事情説明を是とするなら、消費時間としては普通のラインですね」
「うむ」
うん?
宰相閣下との話しを一段落させたエルドレッドが、何故か俺を見た。
「お前、どっかでフランと離れて1人になる予定ある?」
「ありませんわ」
聞かれたのは俺なのに答えを返したのはフランだった。
思わず隣りの彼女を見やる。
にこっ、と微笑まれて俺も釣られて微笑みながら首を傾げてしまった。
「アルフは最強のセ○ムが張り付いてそうだから問題なしとして」
は?
「そうなるとやっぱ、ガード緩いのはエンディだな。前に常駐騎士団が俺んトコに人員配置しようか、なんて案を検討してたことがあったけど、あれ、対象エンディに変えて実現出来ねぇかな?」
「不可能ではないが、理由がなぁ……」
「文句言うヤツの上に転移であの女、落としてやれば? あの強すぎる思い込みと勘違いに加えてこっちの話しをミリ程も聞く気がない上に、全く話しが通じないことがほんの少しでも理解できれば黙るわよ」
エルドレッドと国王陛下の協議にサクッと割って入ったアリューシャ嬢の提案は……何故か採用されて、翌日からエンディミオン殿下の傍には常に常駐騎士団の騎士が2人、護衛として張り付くことに決まったのだった。
エンディミオン殿下が、着替えで席を外している間に、な。
「……もしかして、廊下に落ちてた霰みたいな氷の粒……」
「まぁ、何のお話しでございましょう? ほほほほほほほ」
どうやら当たりらしい。
「……そうか。いたのか。参ったな。ダンジョンに居る時みたいに索敵魔法を常時展開して過ごすべきだろうか」
「いや、流石に授業中はいらねぇだろ」
呟いた俺にエルドレッドがそう答えた所で、拠点部屋にダリルさんを伴って国王陛下と王妃様がやってきた。
「苦戦しとるようだな」
「肥溜め行きにしてやってもチビどもに嫌がらせされても意に介さない女だからな」
国王陛下が入室してすぐ俺達に向かって仰ったことへ、すかさずエルドレッドがその理由を口にする。
「師匠。あの女は精霊達がしてくる地味地味攻撃を新たな聖女である自分に精霊達が構ってもらいたがっているんだと解釈していますよ?」
「わお。流石のダイヤモンドメンタルね! ポジティブもそこまで行けば本物だわー。ダメな意味でだけど」
マックスとルナが2人揃って肩を竦めながら言ったことにエルドレッドが、物凄く嫌そうな顔をした。
「よし、分かった。もう今後は俺のトコに現れたら問答無用で肥溜め転移決行するわ」
「……そこで牢獄に転移しないのが貴方らしいわね。魔導王くん?」
「どうやってんのか知んねぇけど、速攻、脱走すんだよ、あの女」
王妃様が揶揄と呆れを前面へと出して仰ったことにも決して試したことがない訳ではなかったらしいエルドレッドは、その結果を事実として口にする。
「小僧、お前あの娘のステータス見とらんのか?」
「あの女をじっくり見るとか嫌なこった! 一瞬、視線向けただけで、気もっ悪りぃ声だして、こっち飛んでくんだぞ⁈」
「……と言う感じでして。自分の子供を通してそれを知った反王家派、並びに反魔導王派の連中が、彼女の獲得に動き出したっぽいんですよね」
「げ」
ダリルさんからの情報にエルドレッドが吐き出した1音は、あの遅刻伯爵令嬢が、エルドレッドの弱点であると認識されたことに対して漏れた物だった。
「おい、ダリル。何で俺、とばっちり食っとんのだ?」
「陛下は、とばっちりというより序でとか、これ幸いとか、この機に乗じてみたいなニュアンスですね。本命は魔導王殿ですよ」
さらっと言い放ったダリルさんに何故か国王陛下はヘコンでしまって、王妃様に背を叩かれて慰められていた。
「しかし……そいつらバカなのか? いくら勇者と聖女が揃って覚醒済みとはいえ、魔王戦にエルドレッドが居るのと居ないのとじゃ、攻略難易度が天地だぞ?」
「そうですわ! それにエルドレッド様がその方達に何をしたと仰るのですか?」
「反国王派だか、反エル派だか知らないけど、あの女、そいつらの思い通りに動くような女じゃないわよ⁈ もしそうなら、とうの昔にわたし達だって意思疎通くらい図れてる筈じゃない⁈」
俺とリリエンヌ嬢が言ったことに加えて、アリューシャ嬢が最もなことを言い出して、俺達の空気が一斉に「確かにな」みたいな色に染まった。
「あー……とにかく、今回はエンディに実害が出てるから流石に受け流しすんのはマズい。宰相閣下。あの女の両親ってまだ領地からこっちに出て来れてねぇ感じなんです?」
「ああ。早馬の知らせでは到着予定は3日後だそうだ。何でも令嬢が王都へ来て勝手に学院へ入学しとるのも知らなかったようでな。逃亡先や潜伏先になりそうな所をほぼ、家族総出でバラバラに捜索しとった所為で連絡が行き渡って集合するのに時間を食ったらしい」
「まぁ、その事情説明を是とするなら、消費時間としては普通のラインですね」
「うむ」
うん?
宰相閣下との話しを一段落させたエルドレッドが、何故か俺を見た。
「お前、どっかでフランと離れて1人になる予定ある?」
「ありませんわ」
聞かれたのは俺なのに答えを返したのはフランだった。
思わず隣りの彼女を見やる。
にこっ、と微笑まれて俺も釣られて微笑みながら首を傾げてしまった。
「アルフは最強のセ○ムが張り付いてそうだから問題なしとして」
は?
「そうなるとやっぱ、ガード緩いのはエンディだな。前に常駐騎士団が俺んトコに人員配置しようか、なんて案を検討してたことがあったけど、あれ、対象エンディに変えて実現出来ねぇかな?」
「不可能ではないが、理由がなぁ……」
「文句言うヤツの上に転移であの女、落としてやれば? あの強すぎる思い込みと勘違いに加えてこっちの話しをミリ程も聞く気がない上に、全く話しが通じないことがほんの少しでも理解できれば黙るわよ」
エルドレッドと国王陛下の協議にサクッと割って入ったアリューシャ嬢の提案は……何故か採用されて、翌日からエンディミオン殿下の傍には常に常駐騎士団の騎士が2人、護衛として張り付くことに決まったのだった。
エンディミオン殿下が、着替えで席を外している間に、な。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる