上 下
416 / 458
第8章 そして始まる学院編

ランドリウス公爵家での一幕

しおりを挟む
 女神様から見えない2人の情報を聞いて部屋を出たわたしとフランは、お父様とお母様が待っている温室のサロンへ向かった。

 制服お披露目とか前世で高校入った時以来かしら?

 世界が変わっても子供に親がしたいことや見たいことってあんまり変わんないのね。

「旦那様、奥様。お嬢様方がいらっしゃいました」

 領地の家令であるグレイディス同様、王都の邸を取り仕切っているのは執事のバスティアン。

 彼の案内で温室奥のテーブルセットまで足を運んだわたしとフランは、お父様とお母様に制服でカーテシーを送る。

「お父様、お母様、ご機嫌よう」
「お姉様とご一緒に、お父様とお母様にご挨拶をしに参りましたわ」

 わたしとフランが順にそう言うと2人は席から立ち上がってわたし達の方へとやってきた。

「2人とも学院のエリート科の制服がよく似合う。見違えたよ。もうすっかり大人だな」
「月日が経つのは早いものですわね。後、三月もしたら娘達が学院生になるだなんて」
暗部ウチの者から怪しい人物の話しは聞いたかね?」

 お父様の問いかけに、わたしとフランは揃って「はい」と短く答えた。

「ティーレンス伯爵令嬢は魔法科に、マルマンケネン男爵家の子は紆余曲折あって、騎士科に入学したそうだ」
「紆余曲折、ですか?」
「居ない訳ではございませんが、地方出身の御令嬢が騎士科に入られるというのは、珍しゅうございますわね」
「うむ。学院側でもどう扱ってよいのか、よく分からなかったようでな。それぞれ個室で隔離可能な科に分断して割り振ったようなのだが、その理由が何なのかまでは、ガードが硬くてまだ私も掴み切れていないのだよ」
「?」

 何処か、困惑気味にそう話してくれるお父様に、わたしとフランは顔を見合わせてしまった。

「お父様が掴みきれないだなんて……流石は女神様の目を逃れている方々ですわね。警戒しておきますわ」
「既に聖女の称号に覚醒してるわたしを差し置いて、自分の地元じゃ、将来は自分が聖女って喧伝してるんですってね。いい度胸じゃない。売られた喧嘩は買ってやるわよ」

 フランがお父様の失策ではなく、あちらの隠蔽能力が無駄に高いのだろうと推察して警戒は怠らないと断じた。

 わたしはわたしで例え突っかかって来られても返り討ちにする気満々なので何も問題なし、と言い切って見せる。

 お父様とお母様は、わたし達の様子にホッと安堵の息を漏らし、改めて4人でお茶をする為にテーブルセットの方へと歩き出した時だった。

 わたし達が左手首にしている腕輪から緊急時にだけ発生する警告音が鳴り響いた。

 ルナが関係者の大人達にも作って渡したこともあってか、お父様とお母様の腕輪も鳴っている。

「全員通達の緊急通信か。初めて発動したな」
「発信者はエルドレッド君だわ。何があったのかしら?」

 お父様とお母様がお互いの色をした腕輪を眺めながら確認したことは、わたしとフランの腕輪にも同じ内容が表示されていた。

「1番に集合がかかっておりますわね。わたくしがゲートを開きますわ! 参りましょう!」

 前世で戦隊ヒーロー派だったフランは、こういう時、1番ノリがいいのよね。

 早々に腕輪を使って開かれた1番ゲートは、王城にある、わたし達の拠点に繋がっている。

 ちょっとした “ワンダバ” 感を味わいながら、お父様とお母様を伴って、わたしはフランの開いたゲートを潜った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」  祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。  こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。  あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。   ※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...