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第7章 第1王子領シャルディアーレ

シャルディアーレの新迷宮 -4-

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 俺達、疾風の狼はパーティの者全員が、教えられた食事所への魔法陣を通ってその場所へと転移した。

「いらっしゃいませ!」

 俺達の姿を見た途端、店内のあちこちで俺達を迎える声が上がった。

「いらっしゃいませ! お客様、4名様でよろしいですか?」
「あ、ああ……」
「かしこまりました! 今のお時間ですと窓側のお席がオススメですが、お席のご希望はございますか?」
「いや、窓側の席で構わない」
「かしこまりました! ご案内いたします! こちらへどうぞ!」

 圧倒されてしまう程、全開の笑顔で元気よく案内をかって出てくれた女の子は、貴族の屋敷なんかでよく見るメイド服とよく似た物を着込んでいた。

 彼女に連れられるまま俺達には少し余裕のある6人がけくらいのテーブルへと案内された。

「こちらのお席でよろしいですか?」
「ああ。ありがとう」
「お手持ちの武器防具は、お席の左隣にございます立台をご利用ください。お手荷物やお背中のお荷物は、足元にございます一時収納箱へお入れくださいませ。ご注文は御着席後、手元のボタンでお願いいたします。当店、ご注文は全て先払いとなっておりますので、ご注文確定後、指定の料金を料金口よりお支払いください。ご案内は以上となります。ご不明点はテーブル中央にございます呼び出しボタンで呼び出しをかけていただければ、当店スタッフがご説明にまいります。それでは、ごゆっくりどうぞ!」

 立板に水の如しとばかり、捲し立てた女の子は、言うだけ言って一礼すると俺達の前から去って行った。

「変わったお店ね」
「うん」

 グレスタとシーリアが俺同様、完全に圧倒された様子で呟き、女の子の後ろ姿を見送っている中、ノールズだけがいそいそと1番奥の椅子へと陣取って手持ちの剣と盾を立台へ乗せていた。

「あ! これ凄ぇ。立てかけなくても真っ直ぐ立ってる!」

 ノールズの上げた声にそちらへと視線を向ければ、確かに2つの装備は、直立して一切グラつくことなく静止していた。

「おおっ! この箱、荷物入れると小っさくなる! 面白ぇ!」

 俺達3人は彼の様子を見ながら顔を見合わせた後、それぞれ、空いている席に腰を下ろし、それぞれ手持ちの装備を立台に乗せたり足元の箱へ荷物を入れた。

 キュッ、と下向きに軽く引っ張られているような感覚がして、装備から少しだけ手を離してみたが、ノールズの装備と同じく俺の装備も問題なく直立していた。

 ブロードソードだぞ⁈

 接地面、鞘の先の点しかない筈なのに何で直立してんだ⁈

 荷物も……本当に小さくなってる。

 元の大きさの3分の1くらいしかないぞ?

「不思議っ、ていうか……いっそ、気持ち悪いんだけど?」

 俺と同じく、槍の石突以下な接地面しかない筈の杖が直立するのを見て、グレスタが何とも言えない複雑怪奇な表情を滲ませながら心情を吐露した。

「えっ? 何で? この領って例の勇者な王子様が仕切ることになった領なんだろ? なら冒険者ギルドで知らぬ者なき2枚看板、魔導王エルドレッドと錬金武具士ルナルリア王女が1枚噛んでんだろうし? そうなったらもう、何でもありじゃん‼︎ 細かいこと気にすんなっての。禿げるぞ?」

 朗らかに笑いながら宣うノールズの発言は、最後を除けば一理ある。

 あの2人は、幼いながら王都で活躍し始めていた3歳当時から他者より随分と抜きん出た才能を惜しみなく発揮しまくっていた人物達の代表格だ。

 こんな詳細不明な便利道具を領内の食事所程度の場所へ設置していようとも、あの2人なら何らおかしく思えない。

 その程度には、俺達冒険者の間で、あの2人は不可思議&別格の最高点に君臨して居た。

「……いいなぁ、これ。旅の移動とかで使えたら楽そう……」

 ノールズがそう言った瞬間だった。

 テーブルの上にパッと大きな四角が現れたと思ったら、その中にいる男女が笑顔で喋り出した。

『これ欲しいぃ! そんなあなたに!』
『シャルディアーレ領内限定! 通販ショッピング!』

 は? 何だ? これ⁈

『今、これを見てるそこのあなた! 目の前にあるもの、いいなぁ! とか、欲しいなぁ、とか思いませんでしたか?』
『欲しいぃ! だって、便利そうなんだもの!』
『そこで! 商業ギルド公認通販ショッピング、シャルディアーレ通販より、あなたにぴったりの商品をご紹介! 今回は何と冒険者特別限定! ダンジョン持ち帰り品との等価物々交換や、滞在期間中だけの貸し出しも受付ております!』
『ええっ⁈ ホントにぃ?』
『更に、何と何と! 現在お使いの装備品や道具類を下取り買取することで、お支払い金額がぐ~んと割り引きになっちゃう特典つきなんです!』
『凄い凄い!』
『今だけ限定! シャルディアーレ発足記念キャンペーンを是非、この機会にご利用ください!』
『これを逃すと通常価格に戻って高くなっちゃうんでしょ? これは見逃せないわね!』

 どうにも押しの強い男女が捲し立てる内容に俺達は呆気に取られ、ついつい見入ってしまった。

「続き、気になる。でも、ご飯食べながら見よ?」

 一旦、そこで四角の中の2人がピタッと止まり、画面の左上に「最初にご紹介する商品は時間停止機能付収納バッグです! お見逃しなく!」の文字が現れ、四角の下では「どちらかご希望のボタンを押してください」「続きを見る」「これで終わる」の3種類が現れたのを見て、シーリアが目をキラキラさせながらそう主張した。

「確かに収納バッグが幾らなのか、とか気になるわね」
「俺は、この装備を立てとくヤツも売ってるのか気になる」
「よし、先ずはメシだ。いいな?」

 全員が続きを見る方に傾いていたので、俺が決定を伝えるようにそう言うとメンバーは揃って頷き、悪戦苦闘しながら食事の注文を終え「続きを見る」の部分を押した。

 そして俺達は知るんだ。

 このシステムを考えたヤツは、天の使いか悪魔の使者だと言うことを。

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