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第7章 第1王子領シャルディアーレ
領地布告 -4-
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エンディミオン殿下の演説が一通り終わり、領民がよく分からないながらも自分達の暮らしが今より良くなりそうなこと、次期国王であるエンディミオン殿下がその魁としてこの領に注力するとの宣言を挨拶に含めた領地布告は、その終了後も領内の各所であれこれと推測や憶測混じりの議論を呼んでいた。
中には出来上がった領境の壁をわざわざ見に行って、聳り立つ壁の高さと浮かび上がる魔法陣、そして石だかレンガブロックだか材質が分からないような代物なのに、陽の光を一切遮ることなく、壁によって落とされる陰が存在しないことに気づいた者もいるようで、夕方頃にはその話題で食事処や酒場が持ちきりになっていたらしい。
ルナ様達が王都からゲートを使って壁内の各所へ設けられた施設へと直接、送り届けた移動人員は、とにかく自分達の体制を整えることに神経を傾けたようで、代表者が、到着の挨拶と会議の出席に参加しに来たことを除けば、特筆するようなことは何も起こらなかった。
「たーだいまっと」
領主専用の執務室として作られている場所に、そんな気軽過ぎる挨拶と共に師匠が転移で帰還された。
「ご苦労様、エル。聞くまでもない気するけど、上手くいった?」
「あははっ、エンディも言うようになったなぁ? 」
エンディミオン殿下の信頼からくる軽口に、そうと理解していることを示しながら師匠が笑って答える。
「けど、まぁ、お前さんの想定通りだよ。ダンジョンコアは、完全に俺の支配下に置いて、サーシャエールにも許諾を貰った。万一、俺がくたばったら王家の適任者とこの領地を与る領主の2人に分割して権限を委譲するよう術式を組んである。壁内施設から何か苦情とか要望来たか?」
「いいえ。何もありませんよ。もっと暗いとか狭い場所を想像してたのにって感想は着いてすぐ、皆さんから聞かれたとルナ様達が仰っておられましたが」
「そいつは何よりだ。後残ってんのは学校か?」
問われたことに僕が答えを返すと執務室のテーブルセットに設えられたソファへと師匠が腰を落ち着けて、領主館でエンディミオン殿下の専属となったメイドが供茶の準備を始める。
「そうだね」
エンディミオン殿下は、師匠の言葉に地図魔法で領地の俯瞰図を表示して、学校の建設予定地2ヶ所を白丸で点滅させた。
「こっちの領都に近い方を子供用の校舎にして、郊外にある方を大人用にするんだったよね?」
「ああ。建設し終わってから町村落の各所へ魔法陣を設置、通学する人間には学校内への転移鍵を渡す感じだな」
「……あのね、エル?」
「うん?」
「こそっと思っちゃったんだけどさ?」
「? ……何をだ?」
エンディミオン殿下が言わんとすることを珍しく察知することが出来ずに師匠が、何処かキョトンとした風情で聞き返す。
「僕達、王都の学院行く意味、なくない?」
「それは言わないお約束だ、コンチクショウ」
師匠が、後ろに “草” と呼ばれるマークが3つくらいついていそうな声音で、エンディミオン殿下の疑問を半ば肯定した。
「一応、貴族連中との交流とかもしとかないとイカンだろ。お前さん、次期国王なんだし?」
「何かね? この領に新しく作られる学校に子供を通わせたいって要請が、貴族達からもあってね?」
「この領地を発展させる為の学校だっつの」
エンディミオン殿下が言い難そうな様相で告げたことに、師匠が最もな言い分で間髪入れずダメ出しの論点を提示した。
「ご自分の領地に使える技術がないか、気になるんでしょう」
「その内、各ギルドに特許登録されたヤツ、金払って買えや」
擁護するつもりはありませんが、多分、そういうことだろうとアタリをつけて僕が言ったことすら、師匠には秒すら置かずに却下されました。
「学校の通学資格、変えた方が良さそうですね。領民に限り、無料・無償としておかないと」
「そうだね。僕の代になったら遷都しましょうとかいう話しが、もう議会とかで出ててさ?」
「いくらアルファードゥルークがメチャクチャ長期間続いてる友好国とはいえ、国境から5日のトコに王都移そうとすんなし! せめて副都くらいで妥協しろや!」
大陸の最南端にある我が国は、東のアルファードゥルーク、西のベーターグランディアを除き、国境線がほぼ北側に集中しているので、そんな意見も出て来てしまうのだろうけれど、これに関してだけは僕もエンディミオン殿下も師匠に賛成だと思いながら、遂に始動した僕達の計画に寄せる国の期待がどれだけ大きな物であるのかも伺い知れる気がして、僕はこっそりと溜息をついてしまった。
中には出来上がった領境の壁をわざわざ見に行って、聳り立つ壁の高さと浮かび上がる魔法陣、そして石だかレンガブロックだか材質が分からないような代物なのに、陽の光を一切遮ることなく、壁によって落とされる陰が存在しないことに気づいた者もいるようで、夕方頃にはその話題で食事処や酒場が持ちきりになっていたらしい。
ルナ様達が王都からゲートを使って壁内の各所へ設けられた施設へと直接、送り届けた移動人員は、とにかく自分達の体制を整えることに神経を傾けたようで、代表者が、到着の挨拶と会議の出席に参加しに来たことを除けば、特筆するようなことは何も起こらなかった。
「たーだいまっと」
領主専用の執務室として作られている場所に、そんな気軽過ぎる挨拶と共に師匠が転移で帰還された。
「ご苦労様、エル。聞くまでもない気するけど、上手くいった?」
「あははっ、エンディも言うようになったなぁ? 」
エンディミオン殿下の信頼からくる軽口に、そうと理解していることを示しながら師匠が笑って答える。
「けど、まぁ、お前さんの想定通りだよ。ダンジョンコアは、完全に俺の支配下に置いて、サーシャエールにも許諾を貰った。万一、俺がくたばったら王家の適任者とこの領地を与る領主の2人に分割して権限を委譲するよう術式を組んである。壁内施設から何か苦情とか要望来たか?」
「いいえ。何もありませんよ。もっと暗いとか狭い場所を想像してたのにって感想は着いてすぐ、皆さんから聞かれたとルナ様達が仰っておられましたが」
「そいつは何よりだ。後残ってんのは学校か?」
問われたことに僕が答えを返すと執務室のテーブルセットに設えられたソファへと師匠が腰を落ち着けて、領主館でエンディミオン殿下の専属となったメイドが供茶の準備を始める。
「そうだね」
エンディミオン殿下は、師匠の言葉に地図魔法で領地の俯瞰図を表示して、学校の建設予定地2ヶ所を白丸で点滅させた。
「こっちの領都に近い方を子供用の校舎にして、郊外にある方を大人用にするんだったよね?」
「ああ。建設し終わってから町村落の各所へ魔法陣を設置、通学する人間には学校内への転移鍵を渡す感じだな」
「……あのね、エル?」
「うん?」
「こそっと思っちゃったんだけどさ?」
「? ……何をだ?」
エンディミオン殿下が言わんとすることを珍しく察知することが出来ずに師匠が、何処かキョトンとした風情で聞き返す。
「僕達、王都の学院行く意味、なくない?」
「それは言わないお約束だ、コンチクショウ」
師匠が、後ろに “草” と呼ばれるマークが3つくらいついていそうな声音で、エンディミオン殿下の疑問を半ば肯定した。
「一応、貴族連中との交流とかもしとかないとイカンだろ。お前さん、次期国王なんだし?」
「何かね? この領に新しく作られる学校に子供を通わせたいって要請が、貴族達からもあってね?」
「この領地を発展させる為の学校だっつの」
エンディミオン殿下が言い難そうな様相で告げたことに、師匠が最もな言い分で間髪入れずダメ出しの論点を提示した。
「ご自分の領地に使える技術がないか、気になるんでしょう」
「その内、各ギルドに特許登録されたヤツ、金払って買えや」
擁護するつもりはありませんが、多分、そういうことだろうとアタリをつけて僕が言ったことすら、師匠には秒すら置かずに却下されました。
「学校の通学資格、変えた方が良さそうですね。領民に限り、無料・無償としておかないと」
「そうだね。僕の代になったら遷都しましょうとかいう話しが、もう議会とかで出ててさ?」
「いくらアルファードゥルークがメチャクチャ長期間続いてる友好国とはいえ、国境から5日のトコに王都移そうとすんなし! せめて副都くらいで妥協しろや!」
大陸の最南端にある我が国は、東のアルファードゥルーク、西のベーターグランディアを除き、国境線がほぼ北側に集中しているので、そんな意見も出て来てしまうのだろうけれど、これに関してだけは僕もエンディミオン殿下も師匠に賛成だと思いながら、遂に始動した僕達の計画に寄せる国の期待がどれだけ大きな物であるのかも伺い知れる気がして、僕はこっそりと溜息をついてしまった。
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