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第7章 第1王子領シャルディアーレ

領地布告 -1-

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「そんじゃ、先発隊出るぞー」

 師匠からかけられた声に僕とエンディミオン殿下は、転移魔法で移動する為、師匠の傍まで移動します。

 エンディミオン殿下が、国王陛下より割譲された地は、旧リンティア領。

 今日、新たに第1王子領シャルディアーレと呼称を変えた地で、馬車で移動することを考えると5日はかかる距離にある。

 王都とシャルディアーレの間には、ゴウマンダッセー侯爵領。

 シャルディアーレより東は隣国、アルファードゥルークとの国境。

 南側にはロバノール領との領境にもなっているウィティシュ湖。

 北側はパイティン丘陵。

 主要河川は2本あって、丘陵の先にある高山から流れてきているトリメイダー川とウィティシュ湖から流れ出ているファンディア川。

 立地は悪くない筈なのに土壌に恵まれないこの地は、少し天気の悪い日が続くとすぐ氾濫するトリメイダー川がゴロゴロした石や岩、大量の砂を農地に広げてしまう。

 当然ながら農地の作物だけでなく、農村にも被害が出るので村の位置を丘陵側に移さざるをえなくて、背に腹は替えられないとはいえ、領民の不満の種となる。

 加えて、鉱石も取れなければ川と湖の魚も獲れ高が知れていて、害に強い作物や薬草くらいしか外部に出せるような生産物がない。

 以前からずっとそうだった訳ではないので、これまでは何とか伯爵家としての体面を保てる程度の収入があったけれど、5、6年前からトリメイダー川関連の状況が悪化した。

 僕達が生まれる3年くらい前……つまり今から8年前、北にある高山が噴火したのがその悪化の原因だと言われている。

 小規模噴火だったので、噴煙による被害も大したものじゃなかったし、流れ出た溶岩も裾野に届かない程度だったけれど、山火事は起きたし、健康被害もあったようなので、そこから財政が悪化した領はそれなりにあったようだ。

 その最たる領だったリンティアは、自家が完全に潰れ切る前に身分と領地を返上し、有りったけの財を抱えて他国へ逃げた。

 今回、エンディミオン殿下が引き受けることになった地は、有り体に言うとそう言う……土地も人心も最悪状態からスタートせざるを得ないような地なのだ。

 しかもここは、今後、魔王戦の要所となることが既に決定している。

 反対派を押し切って、この地がエンディミオン殿下に割譲されることになった理由も実の所、ここにある。

 勿論、全ての貴族達がその事を知っている訳ではないけれど。

 その理由とは、まず、師匠がこの地に新たなダンジョンが出来かけているのをみつけたことに起因していた。

 そして、どうやら “ゲーム” 内で四天王戦が起こった時、魔族達はこのダンジョンを利用して、王都を強襲したんじゃないかと思われる幾つかの痕跡を僕ら全員の記憶から拾うことが出来て、女神様にそれを質問できるだけのアタリをつけられたことだった。

 答えは「是」。

 そこから僕達は、全力でこの地を “勇者” 側で獲れるよう動き出し、今日、初の一手を彼の地に打つ為、動き出した。

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