上 下
381 / 458
第6章 プレ・デビュタント開催

プレ・デビュタント -4-

しおりを挟む
 強制開示で彼女達のステータスに現れたのは、所属を表す文言。

 ネストール事件でヤツの該当ステータスを見た時、最初に表示された「デルタズマフェン諜報部員 兼 暗殺者」が、この所属に当たるんだが、俺が見たお子様達の所属には「エンディミオン殿下をそっと見守り隊」「聖女アリューシャ様を王子妃に推しまくり隊」「アルフレッド様で和み隊」「フランソワーヌ様を見習い隊」みたいな、いつ出来た⁈ そんな集まり⁈ 的な物が並んでいたからだ。

「エルドレッド様? どうなさいましたの?」
「あー、いやー……世の中には知らない方がいいこともあるってホントだなーって、昔の人が作り出した格言を噛みしめてたトコ」
「気になりますね。師匠がそこまで言う何かが、彼らにあったと言うことですか?」

 向上心と向学心が旺盛なのは、結構だが、そう思うなら掘り下げなきゃいいのによ。

 そう思いながら、俺は視線でだけとある方向を示した。

「あそこに男連中が何人か居るだろ? あの、噴水手前のベンチに座ってるヤツら」
「あ、はい」
「あの3人の所属なぁ? 左から『マックス様と語り合い隊』『ピュアルナ様を全力で愛で隊』『リリエンヌ様マジ天使』って書いてある」
「え」
「ナニソレ?」
「いつ出来たのか、サッパリ分からんが、お前らそれぞれに派閥ってーのか、ファンってーのか、そういうモンが出来てるみてぇだぞ?」

 マックスとルナルリアの上げる疑問符にそう答えてやってから、女の子達も含めた他の連中の所属も一通り教えておいた。

「エルには、そういうのないの?」
「少なくともここに居る子達には居ないな」
「皆様、見る目がございませんのねっ」

 自分のことは、キョトン顔で首を傾げていたリリエンヌが、俺の言葉に眉根を寄せて不満げに言い放った。

「あははっ。俺のは、どうやら大人連中の方でしか流行ってないみたいなんだよね」
「あら。大人達にもこういうの結成してる人が居るの?」
「おう。因みに俺関連の最大派閥は『悪友同盟を覗き見し隊』っつー、俺と国王と枢機卿の3人が対象になってるヤツだった」
「あー……」

 後ろに「わかるー」がついてそうな声音で、長音付きの1音を漏らした皆の声に俺は笑う。

「別に覗き見とか面倒なことしねぇで、参加すりゃいいのにな?」
「無茶言わないでよ。マックスでギリいけるかどうかの集まりじゃないの、それ」
「嫌ですよ、僕! その集まり、あれでしょう⁈ 空気読めないヤツが参加した瞬間、3人から質問攻めに遭って轟沈・・するのがデフォ・・・って言われてるヤツでしょ⁈」
「や。狙ってやってんじゃねぇんだけどさ? 俺らが協議してる時に混ざって来るからには、当然、有意義な意見の1つもあって入って来てんだろ? とか思って皆で水向けてるだけで?」
「だから、集まりの主旨が “覗き見したい” になっちゃってるんじゃないのー? わたくしだって混ざりたくないわよ、悪友同盟の井戸端会議なんてー」
「あれについていけるのは、フランくらいだよ」

 そうな。

 通りすがりの巻き込まれだったけど、俺達3人の合議に入れたフランの評価は、当時、城で鰻登りだった記憶がある。

「これから我が国も貴族の女性当主や、官僚の女性採用が増えて行くことに対してどう思うか、って質問に “男性と同じく正当に能力を評価していただければそれで良いのでは、と。後は陛下のハーレムにスカウトされても逃げられる権利をくだされば問題ないかと?” ってにこやかに答えたあの時のフランは、確実に女性官僚達にとって、勇者だったと枢機卿も笑ってたよ」

 勿論、ごもっとも過ぎて俺も笑ったけどね。

 他国の王と違って女性に無理強いするタイプの男じゃないけど、1回や2回軽くあしらわれた程度じゃ、コナかけるのやめないからな、あの国王やろう

「そう言うことがある度にさ? 辺境伯領でのツェルデンテ伯爵みたいに僕の爪の垢寄越せっていう人がいるんだよねー。バスメイドが “殿下のお体に垢なんか残す訳ないでしょ⁈” って、すっごく怒るからやめて欲しいんだけどなー」

 いらんとこで、いらん苦労を国王の所為でさせられているらしいエンディミオン殿下が黄昏ながらそう呟いて、俺達は揃って苦笑いを漏らしていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...