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第6章 プレ・デビュタント開催

勇者パーティ結成式 -6-

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「出番ですよ。魔導王殿」
「へいへい。分かってるよ」

 国王陛下とエルドレッド様の関係も不思議ですが、サーシャリスト枢機卿猊下とエルドレッド様の関係も、ちょっと不思議です。

 こう…… 国王陛下<エルドレッド様<サーシャリスト枢機卿猊下 みたいな図式の時もあれば、サーシャリスト枢機卿猊下<国王陛下<エルドレッド様な時もあって、更に エルドレッド様<サーシャリスト枢機卿猊下<国王陛下 な時もある。

 サーシャリスト枢機卿猊下曰く「ただの悪友同盟でございますよ」(にっこり) だそうですが。

「っしゃあっ‼︎ 始めるぞ、皆っ!」
「おう!」

 飛翔魔法で内廊の中空へと上がり、上で静止したエルドレッド様が詔を唱えます。

「〈ᚹᛇᛚᛞᛒᚱᚨᚾᚲᚱᚢᚾᛖ ᛢᚪᛇᚺᚩᛃᚨᚪ〉」

 お姉様とわたくしは、それに合わせてそれぞれ、光属性の魔力と闇属性の魔力を凝らして次元の扉を生成する手助けを致します。

 お姉様、エルドレッド様、わたくしの3人で作り出した三角形の中心に天から降り来たり、教会の屋根やステンドグラスを透過した光が収束するとそこに鏡で出来た扉のような形をしたものが現れました。

 女神サーシャエール様の居られる管理界と呼ばれる次元と、わたくし達の暮らす次元とを繋ぐ門です。

 エルドレッド様が、中空から降りて門の前へと着地し、高貴な女性をエスコートする時のように右手を差し出されました。

 するとトリマプトロンエーテルの光が金粒となって門へと吸い寄せられて行き、わたくし達が昏森塚の女神の間や、我が家の教会で拝謁した時と同じ、パーフェクトファビュラスレディなサーシャエール様のお姿がそこに現れました。

 感動のあまりにでしょう、方々から上がる声は男性も女性も関係なく、サーシャエール様を賞賛する声一色に染め上げられていました。

「女神サーシャエール様の御降臨です」

 サーシャリスト枢機卿猊下がそう告げると、誰に求められたのでもないのに、全ての方々がそこに平伏なさいました。

[皆、楽になさい。わたくしの選びし勇者と聖女、そして愛巫女の覚醒を、この世界の生けとし生ける者全ての代表として、あなた方に見届けていただきます。これは、決してあなた方にとって栄誉にはならないことでしょう。人が人の中で人として作り上げたものではない秩序を整える為に必要である存在とされてしまった者達の覚悟を我が事として知りなさい]

 サーシャエール様がそう言い終えると同時に、お姉様とわたくしの身体が神力に包まれました。

「きゃあっ‼︎」
「っ⁈」

 お姉様とわたくしが、悲鳴に近い声を上げると同時に、わたくし達、勇者パーティも教会内に居る聖職者、子供達を含めた全ての者達にも、そして……肥溜めから脱出してきたらしい敵性存在の方々にもこの世に蔓延る悪意という悪意、敵意という敵意が全て流れ込んで来ました。

 嫌悪、加虐、嫉妬、殺意、浅慮な支配欲、暴力的な性欲、果てのない金欲や物欲。

 それが物理的にも精神的にも強い圧力すら感じるレベルで自分の中へ流れ込んで来るのです。

 ……正直、泣きそうです。

 いえ、多分、泣いているのだと思います。

 誰も彼もが。

 そんな中で感じる視線。

 エルドレッド様、国王陛下、王妃陛下、サーシャリスト枢機卿猊下、そして御父様。

 サーシャエール様はまだしも、平気な顔をしているのは、この5人だけで、皆様が悶え苦しみ、涙を流しながら叫ぶ姿がを静かに見守っていました。

「だから何よ⁈ こんなモンに今更、負けるもんですかっ‼︎」

 そんな中でかん声にも似た強い声を上げられたのは、お姉様です。

 ガツッ、と淑女としては有り得ないレベルの踵音を鳴らして立ち上がると1も2もなくエンディ兄様の元へ向かいます。

「エンディ! しっかりして! 貴方は、こんなモンに負けるような人じゃないわ! 貴方には、わたしがついてる! 世界中を敵に回しても、わたしだけは永遠に貴方の味方よ!」
「…………アリィっ」

 恥も外聞もなくボロ泣きしているエンディ兄様は、お姉様に縋り付いて小さく何度も何度もお姉様の名を呟きながら、その存在によって、自己を保つ努力をなさっておられるようでした。

 ルナ様とマックス様も互いの手を握り合い、お互いを励まし合いながら、これに耐えているようでした。

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