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第6章 プレ・デビュタント開催

勇者パーティ結成式 -5-

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「続きまして、クウェンティ侯爵家嫡男、マックス・クウェンティ侯爵令息。既に賢者の称号に目覚めておられ、お父上であられる宰相閣下のご指導の下、国政にも参加なされておいでのお方でございます」

 空気ガン無視でサーシャリスト枢機卿猊下が、マックス様の紹介をなさるとまだ5歳でしかない彼が国政に参加していることに、王城へあまり登城されない貴族の方々から驚嘆の声が上がり、平民の皆様からは、よく分からないながらも凄い、みたいな感心や尊敬の視線と声が向けられました。

「お隣におられますのは、隣国アルファードゥルークの第2王女殿下であられ、既に錬金武具士の称号に目覚めておられるルナルリア・アルファードゥルーク王女殿下。皆様が、鑑定式でお使いになられた新たな鑑定魔導具は、王女殿下の作品でございます」

 サーシャリスト枢機卿猊下の紹介にルナ様も一歩前に出て、差し出されたマックス様の手にご自分の手を重ねられるとお二人が揃って皆様へと礼をなさいました。

「お2人は、シグマセンティエとアルファードゥルークの架け橋として、ご婚約を結ばれた由にございます。いずれ、ルナルリア王女殿下が、クウェンティ家に降嫁なされるご予定にございます」

 サーシャリスト枢機卿猊下のお言葉に、ザワッと一層の騒めきが起こりました。

 我が国と最も長い同盟関係を継続している隣国で、王族同士の婚姻も頻繁に行われることのある2国ではありますが、アルファードゥルーク王家の姫が我が国の貴族家へ降嫁する例は、さほど多くはありませんので、この反応も無理からぬことでしょう。

 しかもルナ様が、鑑定式の魔導具をお作りなられた製作者でもあると公言されたのです。

 この情報を知らなかったのだろう諜報員や影の方々の気が一段強くなったのが、索敵魔法に警告となって表示されました。

 ………これでまた、肥溜めの底に転移される犠牲者が増える可能性が爆上がりいたしました。

 お願いしていた見張りの方は、もう配置につかれておられるのでしょうか。

「続きまして、ディアネイト侯爵家、リリエンヌ・ディアネイト侯爵令嬢。先頃、西方地域で起こりかけました疫病の薬を逸早く調合、レシピを薬師ギルドと女神教会にご提供いただいた御令嬢でございまして、優薬師の称号に目覚めておられるお方にございます」

 ある程度、貴族や民にも知られている事を実績として上げてくださったサーシャリスト枢機卿猊下の言葉にリリエンヌ様が、一歩前に出られてカーテシーをなさいます。

 すると西方地域やその周辺領出身の方々なのでしょう。

 1部の人から盛大な拍手が沸き起こりました。

 彼女のお陰で危険な病から生還された方、また、その病に罹らずに済んだ方々にしてみれば、どれだけリリエンヌ様に感謝してもしきれないのでしょう。

「さて。この方のご紹介が果たして本当に必要なのか、私は大いなる疑問を抱かずには居れぬのですが……」
「ちょ、俺だけ扱い酷くない⁈」

 恐らくは冗談なのでしょう、サーシャリスト枢機卿猊下が仰ったことにエルドレッド様が即座にツッコミを入れられて、主に平民の子供達からクスクスとおかしそうに笑う声が小さく響きました。

「幸運にも知らずに生きることが出来た方々の命運もここまでです」
「……アンタ、絶対、俺のこと嫌いだろう?」
「いえいえ。ここにもたくさん、おいでになっておられるようですので、どうぞ遠慮なく教会裏手の肥溜めをお使いください」
「ハイハイ」

 お2人がそんなやり取りをしてすぐ、右手を頭上に掲げられたエルドレッド様が、指先を1つ鳴らすと索敵魔法に表示されていた敵性存在表示が、3ヶ所に纏められる形に一瞬で変更されました。

 ああ……ここが肥溜めの位置なのですね。

 会場内の親族席に居た方々や、教会の外に居た方々も残らず姿が消えておられるので、近くに居た人達が、驚愕と困惑で周囲をキョロキョロと見回していることに、ほんの少しだけ同情の意が沸き起こります。

「いらぬ者達が綺麗に排除された所で、改めてご紹介いたしましょう。アセンカザフ伯爵家長子、魔導王 エルドレッド・アセンカザフ伯爵令息。世界で唯一、11属性の精霊王との契約を成し、無属性をも極められた全属性の魔導術士様であられます」

 しれっと何事もなかったかのように紹介の文言を口にされたサーシャリスト枢機卿猊下へ、エルドレッド様は、呆れた風に息をついてから皆様へ向かって一礼なさいました。

「では、これより女神サーシャエール様、御降臨の儀、並びに勇者パーティ3称号覚醒の儀を執り行います」

 わたくし達の紹介を終えてすぐ、サーシャリスト枢機卿猊下が、そう仰って式次第が進行いたしました。

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