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第5章 女神の間にて
隆之の場合 -11-
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その後、中高一貫して何だかんだと女の子から告白されまくり、その度にアレコレ理由を変えてはいるものの俺の答えは常に否。
「ねぇ、たかっち。このころはまだリリちゃんのことしらなかったわけじゃない? それなのになんで、かのじょつくんなかったの?」
それを不思議に思ったらしい亜梨沙さんから、いつか聞かれるかもなー、なんて思ってたことが遂に紡がれた。
「俺、ハーレム主人公話しが昔っから嫌いでさ」
「そういや、そのテのマンガはよみとばしてたし、アニメはみてすらいないわよね、アンタ」
「ダメなんだよな。生理的にダメ。優柔不断とか強いから許されるんだ、みたいのってただの言い訳だろ、とか思ったし。こんなこと実際にあってたまるかってのもあったし……そこの国王の所為で、ああ、可能っちゃ可能なんだなってのは分かったけど、他人がやってるのはともかく、自分には未だに適用出来ない。この当時もさ。俺の意識はともかく、周りからモテてるって認識されてたんだよな、俺」
「そうね。実際、モテてると思うわよ? これ見る限り。わたくしの目から見ても、ぜんせのエルドレッドは、カッコイイ男の子だと思うもの」
映像を見ながら眉根を寄せて言う俺に舞子さんと母様が相槌めいた同意をくれる。
「で、見ての通り、言われる訳。モテモテでいいよな、羨ましいって。その度に俺の頭の中にはあの、ハーレム主人公が過ぎる訳よ。んで、思うんだ。俺は、ああはなりたくない。本当に好きになった子だけに俺のことを好きになって欲しいって。だから、告白された時点で俺に気持ちがなかったら、その子がいつまでも俺への想いに縛られて他の男に目を向けない、なんて非生産的な時間の浪費をさせないようにする為にも、すぐ『否』を返すようにしてたんだ」
「あとになって、そのこのことをすきなったらどうするきなんだ?」
「……結論から言うとそんな出来事は起きなかったけど、罵倒されてこっぴどくフラれるのを覚悟の上で、言うだけは言ったかもな。所詮、仮定の話しでしかないけど」
途中、アルフレッドから問われたことに答えながら進む映像の中では、また俺が告白してきた女の子に断りの台詞を吐いていた。
あ。
覚えてる。
確か、この子に告白されて断った次の日だった。
その日は、俺の通っていた高校が附属関係にあった大学の体験授業があった初日の日で、俺達は自校制服で大学まで公共交通機関を使って各自移動、現地集合で体験授業に参加する。
そんな運びだった。
おりしも時間帯は、通勤通学ラッシュ真っ最中。
普段、チャリ通だった俺は、就職したら毎朝こんなん食らうとかマジ? なんて考えながら吊革に捕まって流れてゆく車窓の景色を眺めていた。
「あ。いま、さわった!」
「うわさの、ちじょさまがごとうじょうなさいましたかしら?」
噂の痴女様って……。
ゲンナリと脱力する俺を尻目に親世代組や、勇者パーティ組まで、何故かワクテカしながら映像を食い入るように見つめている。
高校2年生俺、不審げな目で周囲を見回したり、背後をチラ見したりしている。
別に鞄とかが当たったとか、揺れでそのテの物が擦り付けられたとかじゃないのは、この時もすぐに分かったけど、うん。
こうして第三者視点で見るとハッキリ分かる。
犯人は、完全に俺の隣に立つ水色ツーピースのタイトスカートスーツを着た人だ。
こんなこと言っちゃアレかもしれんが、男にはとても不自由しているようには見えない、キレイなお姉さんだった。
首を傾げながら気の所為だと片付けてしまった俺の尻を隣のお姉さんが伸ばした手でモミモミした。
俺がビックリした顔をしたと同時に切り替えヶ所で方向を変えるレールの関係で電車が揺れて、隣のお姉さんが、俺の方へと密着した。
『ねぇ? 次の駅で一緒に降りない?』
隣のお姉さんが、俺の耳元で囁く。
ビックリ顔のまま彼女を見た高校2年生俺。
当時も思ったけど、何でこんなキレイなお姉さんが、痴漢もとい痴女⁈ とかなって、でも理性や恐怖とかじゃなく、とにかく驚きと学校に行かないといけない、という意識だけがあって。
『あ、いえ、あの……学校、行かないといけないんで……』
しどろもどろになって、どうにかそれだけを口にした。
お姉さんは「そう。残念ね」と言いながら次の駅で降りて行った。
硬直する高校2年生俺、それを見て大爆笑する国王。
大学の校門前に辿り着いた俺は、そこにたまっていた同級生達にさっきあったことをあわあわしながら報告した。
すると。
『バッカ! 何で一緒に降りてシてこねぇんだよ』
『学校行かなきゃいけないんで、とか、真面目か!』
『お前、それでも健全な高校生男子かよ!』
『勿体ねー!』
ゲラゲラ笑いながら、同級生達は、他人事空気満載で俺の訴えを笑い話しとして片付けた。
「全くだな。食わず嫌いせず、差し出されたものはまず食べてやらんと失礼だろうが」
同級生の言うことこそが正しい、とばかりに国王が言い切ったので、当時、拒否したのは倫理的には間違ってなかったんだな、とほんのり考えてしまった俺だった。
「ねぇ、たかっち。このころはまだリリちゃんのことしらなかったわけじゃない? それなのになんで、かのじょつくんなかったの?」
それを不思議に思ったらしい亜梨沙さんから、いつか聞かれるかもなー、なんて思ってたことが遂に紡がれた。
「俺、ハーレム主人公話しが昔っから嫌いでさ」
「そういや、そのテのマンガはよみとばしてたし、アニメはみてすらいないわよね、アンタ」
「ダメなんだよな。生理的にダメ。優柔不断とか強いから許されるんだ、みたいのってただの言い訳だろ、とか思ったし。こんなこと実際にあってたまるかってのもあったし……そこの国王の所為で、ああ、可能っちゃ可能なんだなってのは分かったけど、他人がやってるのはともかく、自分には未だに適用出来ない。この当時もさ。俺の意識はともかく、周りからモテてるって認識されてたんだよな、俺」
「そうね。実際、モテてると思うわよ? これ見る限り。わたくしの目から見ても、ぜんせのエルドレッドは、カッコイイ男の子だと思うもの」
映像を見ながら眉根を寄せて言う俺に舞子さんと母様が相槌めいた同意をくれる。
「で、見ての通り、言われる訳。モテモテでいいよな、羨ましいって。その度に俺の頭の中にはあの、ハーレム主人公が過ぎる訳よ。んで、思うんだ。俺は、ああはなりたくない。本当に好きになった子だけに俺のことを好きになって欲しいって。だから、告白された時点で俺に気持ちがなかったら、その子がいつまでも俺への想いに縛られて他の男に目を向けない、なんて非生産的な時間の浪費をさせないようにする為にも、すぐ『否』を返すようにしてたんだ」
「あとになって、そのこのことをすきなったらどうするきなんだ?」
「……結論から言うとそんな出来事は起きなかったけど、罵倒されてこっぴどくフラれるのを覚悟の上で、言うだけは言ったかもな。所詮、仮定の話しでしかないけど」
途中、アルフレッドから問われたことに答えながら進む映像の中では、また俺が告白してきた女の子に断りの台詞を吐いていた。
あ。
覚えてる。
確か、この子に告白されて断った次の日だった。
その日は、俺の通っていた高校が附属関係にあった大学の体験授業があった初日の日で、俺達は自校制服で大学まで公共交通機関を使って各自移動、現地集合で体験授業に参加する。
そんな運びだった。
おりしも時間帯は、通勤通学ラッシュ真っ最中。
普段、チャリ通だった俺は、就職したら毎朝こんなん食らうとかマジ? なんて考えながら吊革に捕まって流れてゆく車窓の景色を眺めていた。
「あ。いま、さわった!」
「うわさの、ちじょさまがごとうじょうなさいましたかしら?」
噂の痴女様って……。
ゲンナリと脱力する俺を尻目に親世代組や、勇者パーティ組まで、何故かワクテカしながら映像を食い入るように見つめている。
高校2年生俺、不審げな目で周囲を見回したり、背後をチラ見したりしている。
別に鞄とかが当たったとか、揺れでそのテの物が擦り付けられたとかじゃないのは、この時もすぐに分かったけど、うん。
こうして第三者視点で見るとハッキリ分かる。
犯人は、完全に俺の隣に立つ水色ツーピースのタイトスカートスーツを着た人だ。
こんなこと言っちゃアレかもしれんが、男にはとても不自由しているようには見えない、キレイなお姉さんだった。
首を傾げながら気の所為だと片付けてしまった俺の尻を隣のお姉さんが伸ばした手でモミモミした。
俺がビックリした顔をしたと同時に切り替えヶ所で方向を変えるレールの関係で電車が揺れて、隣のお姉さんが、俺の方へと密着した。
『ねぇ? 次の駅で一緒に降りない?』
隣のお姉さんが、俺の耳元で囁く。
ビックリ顔のまま彼女を見た高校2年生俺。
当時も思ったけど、何でこんなキレイなお姉さんが、痴漢もとい痴女⁈ とかなって、でも理性や恐怖とかじゃなく、とにかく驚きと学校に行かないといけない、という意識だけがあって。
『あ、いえ、あの……学校、行かないといけないんで……』
しどろもどろになって、どうにかそれだけを口にした。
お姉さんは「そう。残念ね」と言いながら次の駅で降りて行った。
硬直する高校2年生俺、それを見て大爆笑する国王。
大学の校門前に辿り着いた俺は、そこにたまっていた同級生達にさっきあったことをあわあわしながら報告した。
すると。
『バッカ! 何で一緒に降りてシてこねぇんだよ』
『学校行かなきゃいけないんで、とか、真面目か!』
『お前、それでも健全な高校生男子かよ!』
『勿体ねー!』
ゲラゲラ笑いながら、同級生達は、他人事空気満載で俺の訴えを笑い話しとして片付けた。
「全くだな。食わず嫌いせず、差し出されたものはまず食べてやらんと失礼だろうが」
同級生の言うことこそが正しい、とばかりに国王が言い切ったので、当時、拒否したのは倫理的には間違ってなかったんだな、とほんのり考えてしまった俺だった。
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