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第5章 女神の間にて

隆之の場合 -1-

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[それじゃあ、最後の子ね]

 サーシャエールが、そう言った瞬間、全員の目が俺に向いた。

 ハイ、ソウデスネ。

 消去法で俺しかもう残ってないですもんね。

 半ばやけっぱちになってそう考えていた俺の目と耳に1番初めに届いたのは、父と母が共働きで祖父宅に預けられていた1歳半くらいの頃っぽい映像だった。

『ぱい! ぱい!』
『はいはい、かんぱーい!』
『ヤダ、かわいー。ぼくー? おねーさんとも乾杯しよー?』
『あいっ! ねーしゃま、ぱい!』
『かんぱーい! あははっ!』

 飲み屋を営んでいた祖父と祖母の手伝いとは名ばかりのお愛想係的な立ち位置で、酔っ払いの間を水の入ったコップ片手に渡り歩き、人見知りゼロで乾杯だけして歩く少年。

 言わずもがな、俺である。

『あらあら、孫の相手してくれてありがと。これ、サービスね!』
『やったー! ありがと、おばーちゃん! 隆くん、もっといっぱい乾杯しに来てくれていいよー?』

 酔っ払いのお姉さんが、機嫌良さげにビールジョッキ片手でそう言い放ち、店の客がそれを見て酔っ払い特有の馬鹿笑いをしていたり。

『もう嫌っ! 何であんな男ばっかりなの⁈ 私、いつになったら結婚出来るのよぉぉぉっ‼︎』

 彼氏と喧嘩別れした同僚を連れて飲みに来たらしい人達が、困ったような顔をして、祖父が酒を奢り、祖母がツマミを奢り、同僚達が慰めまくり、でも酒が入って涙腺も理性も緩くなってる彼女は、号泣しながら漢らしい呑みっぷりを繰り返していて。

『おねーしゃ、よしよし』
『隆くぅん……』
『たいの、たいの、とんでけー! とんでた?』

 隣の席によじ登って、女性客の頭を撫でながらそんなことをしてニカッと笑う1歳半俺。

『隆くん優しいっ! お姉さんトコにお嫁においでっ!』
『幼児に絡み酒すんのは流石にやめなさいっ!』

 がしっ、と俺にしがみついた酔っ払いお姉さんが叫んだことに女性同僚が慌てて突っ込んだ。

『いいの! 私もう、お嫁に行くのは諦める! その代わり、器量よしの嫁貰うわっ! 隆くんみたいな‼︎』
『1歳男児を娶ろうとするなっ‼︎』

 今度は、男性同僚にそう突っ込まれて俺から力づくでひっぺがされ、俺がキョトンとしている間に祖母が俺を回収して、店裏にある自宅まで退避させていた。

 うわぁ。

 飲み屋やってた祖父母のトコ預けられてたのは、覚えてるけど、こんなことあったとか全然覚えてねぇわぁ。

「おかしいわね。他の子に比べてスタートから衝撃映像なんだけど、この先、大丈夫なの? あの子のぜんせ、とかいう子は」

 あーいや、大丈夫だよ? 母様。

「あれか。すとおかあ、とかいう女もその内、出てくるのか?」
「ストーカー⁈」
「ちよっとエル‼︎ アンタ、ストーキングうけたけいけんあんの⁈」
「えっ? あー……ほら、アリィとフラン、後、エンディにはあの時、言ったろ? 実体験って?」

 亜梨沙さんルナルリア舞子さんアリューシャの上げた声に俺は、痛インの話しをした時に言ったことを繰り返すようにして答えた。

「こんな、こどものころから、このあいそうのよさでは、いたしかたないめんもございますわね。あのかたがたは、ただでさえ、あいされることにうえているかたが、おおございますから」

 友理恵さんフランソワーヌが、仕方なさげに息をつきながら、もう既に俺という人間に対する評価を下し。

「エル。だれにでもやさしくしてると、すきになったこに、ごかいされちゃうよ?」

 何故か、困ったような顔をしたエンディミオン殿下にまで、そんなことを言われた。

 どうせこの先、みてりゃ分かるけどな?

 俺、彼女居たことは、1秒たりともなかったからな?

 だから、そこんとこは大丈夫。

 誤解される以前の問題でFAファイナルアンサー



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