上 下
333 / 458
第5章 女神の間にて

舞子の場合 -4-

しおりを挟む
 5386周目が終わり、エンドロールを眺めながら大学生舞子さんは、満足げに笑った。

『よしっ! これで現時点におけるエンディミオン殿下の幸せルートは確定ね! 後はアプデ来た時にもっと良さげなルートあったらそっちに変えるだけだわ! ……と、言うわけでぇ……これからはひたすら萌えるぞー!』

 自分で構築したストーリー展開に満足したらしい大学生舞子さんは、そう宣言するが早いか5387周目に突入し。

『きゃあああああああああっ‼︎ エンディミオン殿下素敵ぃ! 最高ぉぉぉぉぉぉっ‼︎』

 ここで漸く俺達の知ってる舞子さんのよく叫ぶ台詞とバタバタとベッド上でのたうち回る姿に到達した映像。

「アリューシャ。貴女って子は……」

 この状態を見て、映像の舞子さんとアリューシャが本当に同一人物なのだと納得いったらしいランドリウス公爵夫人が、深々と溜息をついた。

 その間にも映像の舞子さんはベッドの上でエンディミオン殿下萌え全開で叫んでは、のたうちまわっている。

[この後、彼女が5388周目に突入するより先にこの4人の居た世界は、大きな災害に見舞われて、一瞬で何億万人という人々が亡くなってしまったの]
「えっ⁈」

 サーシャエールの言葉にエンディミオン殿下が驚きに顔を染めて俺達を見た。

 親世代組からも勇者パーティ組からも注がれる視線が痛い。

「あ、でもでも! わたくしたち、なにがあってじぶんたちがしんだのか、ぜんぜんわかんないの。だから、しんぱいしないで! しんじゃったショックとかないから。ねっ?」
「そうですわね。わたくしも。げんいんはおろか、そのときにどうしんだのかすら、おぼえてはおりませんわ」
「わたしもよ」
「………」
「エルドレッド。貴方も前に話しをしてくれた時は覚えてないって言ってたわよね? どうして今は黙ってるの?」

 3人の女の子達に同調しなかった俺に気づいたのは、流石と言うべきなのか、母様が1番早かった。

「うん。前は知らなかったんだけど、今は知ってるから。でもサーシャエールがそれを言わない以上、俺からは言えない。多分 “上” の許可が降りてないんだろうから」
[そうよ。これは神々の約定で知らせないことに決定しているし “あの方々” もそれで了承しているの。貴方みたいな特殊な例を除けば、本人が思い出してしまわない限り、誰にも教えることはできないわ]
「まぁ、目的考えたらそうなるよな」
「それは、お前の加護に書いてあった、特定庇護というヤツに関係している事柄なんだな?」
「うん」

 父様の問いかけに俺は頷きながら短く答えを返した。

[先程も教えた通り、映像に映っている子は、アリューシャの前世である舞子という女の子なの。災害で亡くなった彼女の魂をわたくしが引き受けて、アリューシャとしてこの世界で生まれ変わってもらったのだけれど、特例庇護の内容は、それを反映したものになっているのよ]
「……うん。わかる。あのこ、アリィが、あらぶってるときとおなじことしてたもんね……」

 荒ぶってるって。

 その表現、誰に教わったエンディミオン殿下。

「だって! ぜんせのゲームで、だれよりもわたしがすきになったおとこのこが、エンディミオンでんかだったのよ⁈ でも、こうしてうまれかわってきて、わたしじしんがであったエンディは、ゲームより、もっともっとステキなおとこのこだったんだもの。むかしもいまも、だいすきってさいだいげんしゅちょうするのが、なによりのわたしのあいじょうひょうげんなのよ!」
「……うん。ありがとう。ずっとぼくをすきでいてくれて。これからも、すきでいてね? ぼくもアリィのこと、だいすきだから」
「もちろんよ! だからなかないで。あなたをヘタレ・・・ンディになんか、ぜったいしないわ、わたし!」
「う、うん……」

 慰めてんのか、追い討ちかけてんのか微妙な具合で、前世掲示板におけるエンディミオン殿下の仇名を口にした舞子さんアリューシャに、俺達、転生組3人は、お口チャックで銘々に2人から目を逸らしていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

処理中です...