328 / 458
第5章 女神の間にて
衝撃の行方 -4-
しおりを挟む
「あの……サーシャエール様?」
[何かしら?]
「この、今見た、あれやこれやって、もう、起こんないヤツだと理解していいんですよね?」
[そうねぇ……]
虚空から視線を戻さぬままダリルが問いかけたことにサーシャエールが困り顔で答えを濁す。
「おこんない! おこさせないっ! ぜったいやだっ! アリィやフランにあんなことするぼくになんか、ぜったいならないっ‼︎」
「だいじょうぶよ、エンディ! いまのあなたのほうが、なんばいもすてきなおとこのこだから! じしんもって! あなたがまちがえないように、わたし、ちゃんとそばにいるから! ねっ⁈」
慰め兼、励ましみたいな言葉をかけたアリィにしがみついたまま泣き叫んでいたエンディミオン殿下は、グッチャグチャに泣きまくった顔のまま、何故か「キッ!」と鋭く父親である国王へと振り返った。
「ちちうえっ! あの、だんとうだいとかいう、しょけいどうぐ、いらないっ! そもそもあんなのがあるのがいけないんだっ‼︎」
「うーーーーーーむーーーーーーー」
死刑って制度の是非は、それはもう人類の法と倫理の歴史と共に永遠のテーマレベルで継続していく問題なので、この場で即答は難しいだろうな、とは俺も思う。
「エンディの気持ちは分からんでもないが、正直な所、使用に関する規制を今よりもっと厳格化するか、代替え手段を作る程度にしか出来ないのが現実だろうな。公開処刑のエンターテインメント性は理性ある人として、否定出来る人間でありたいと個人的は思うが、怒りや憤りを元にした集団暴走を劇的に鎮静化する手段であり、犯罪者を誰の目から見ても明らかに死んだと確認させることで、恐怖を安堵に変え、犯意を抑制する強い効果が望めることは否定出来ない。そもそも、お前達が今回見た処刑風景の最も問題視するべき点は、本来、この国では認められない筈の “王族の意向のみによって処刑が実行されたこと” だ。分かるか?」
「………どうぐがわるいんじゃなくて、それをつかうにんげんのもんだいだって、こと?」
「そうだ。私利私欲や自分の利益のみを追求した強奪または簒奪。国の代表である王族の一員が、自国の法を自分の都合のいいように曲解して、証拠も裁判も何の議論も差し挟むことなく行われた断罪。最初の逆ハーENDの時に、映像で見た国王が、聖女を含む俺達、勇者パーティに下した決定は、今のお前と同じく、あれはおかしい、と国政を担う者達が受け止めている何よりの証拠だ。勿論、この根底に聖女が無意識に使っている魅了魔法、という前提があったけどな」
「わたし、みりょうまほうとか、つかいたいとかおもわないし? つかうりゆうもないし! エンディいがいのおとことか、はてしなくどうでもいいから、わたしにかんしては、あんしんして? けいかいしなくちゃいけないのは、あくまで、イタインよ! いまのとこ、つかうのをのぞみそうなのは、そいつしかいないんだから!」
確かにあらゆる意味で白黒が、キッパリサッパリハッキリしっかり分かれてる舞子さんは、好きになった相手の心を捻じ曲げてまで自分に惚れさせる形での恋愛って発想とは、無縁に思えた。
「………そうだ! ルナさまっ!」
「ふぁいっ⁈」
真っ黒マックスの背中を撫でていた亜梨沙さんが、話しの流れがいきなり自分に向いたことで発音のおかしな応答を返す。
「あのえいぞうのなかにでてきた、ダリルのもってたペンダント! あれとおなじこうかをもったものって、つくれない⁈ つくれるなら、それをみんなでもてば、1ばんのイタインじょうたいさくになるよねっ?」
「あれ、まおうせんみるかぎりじゃ、じょうたいいじょうぜんむこうっぽくみえたけど、じんいてきにつくるの、かのうなの?」
「ええっ? ……わかんない……かんがえたことなかったし……」
エンディミオン殿下の思い付きによる提案と舞子さんの紡いだ疑問に亜梨沙さんは首を傾げたけれど。
「出来ますよ?」
「出来なかねぇな」
[可能ですよー?]
マックス、俺、サーシャエールが、ほぼ同時にその可否を断じていた。
[何かしら?]
「この、今見た、あれやこれやって、もう、起こんないヤツだと理解していいんですよね?」
[そうねぇ……]
虚空から視線を戻さぬままダリルが問いかけたことにサーシャエールが困り顔で答えを濁す。
「おこんない! おこさせないっ! ぜったいやだっ! アリィやフランにあんなことするぼくになんか、ぜったいならないっ‼︎」
「だいじょうぶよ、エンディ! いまのあなたのほうが、なんばいもすてきなおとこのこだから! じしんもって! あなたがまちがえないように、わたし、ちゃんとそばにいるから! ねっ⁈」
慰め兼、励ましみたいな言葉をかけたアリィにしがみついたまま泣き叫んでいたエンディミオン殿下は、グッチャグチャに泣きまくった顔のまま、何故か「キッ!」と鋭く父親である国王へと振り返った。
「ちちうえっ! あの、だんとうだいとかいう、しょけいどうぐ、いらないっ! そもそもあんなのがあるのがいけないんだっ‼︎」
「うーーーーーーむーーーーーーー」
死刑って制度の是非は、それはもう人類の法と倫理の歴史と共に永遠のテーマレベルで継続していく問題なので、この場で即答は難しいだろうな、とは俺も思う。
「エンディの気持ちは分からんでもないが、正直な所、使用に関する規制を今よりもっと厳格化するか、代替え手段を作る程度にしか出来ないのが現実だろうな。公開処刑のエンターテインメント性は理性ある人として、否定出来る人間でありたいと個人的は思うが、怒りや憤りを元にした集団暴走を劇的に鎮静化する手段であり、犯罪者を誰の目から見ても明らかに死んだと確認させることで、恐怖を安堵に変え、犯意を抑制する強い効果が望めることは否定出来ない。そもそも、お前達が今回見た処刑風景の最も問題視するべき点は、本来、この国では認められない筈の “王族の意向のみによって処刑が実行されたこと” だ。分かるか?」
「………どうぐがわるいんじゃなくて、それをつかうにんげんのもんだいだって、こと?」
「そうだ。私利私欲や自分の利益のみを追求した強奪または簒奪。国の代表である王族の一員が、自国の法を自分の都合のいいように曲解して、証拠も裁判も何の議論も差し挟むことなく行われた断罪。最初の逆ハーENDの時に、映像で見た国王が、聖女を含む俺達、勇者パーティに下した決定は、今のお前と同じく、あれはおかしい、と国政を担う者達が受け止めている何よりの証拠だ。勿論、この根底に聖女が無意識に使っている魅了魔法、という前提があったけどな」
「わたし、みりょうまほうとか、つかいたいとかおもわないし? つかうりゆうもないし! エンディいがいのおとことか、はてしなくどうでもいいから、わたしにかんしては、あんしんして? けいかいしなくちゃいけないのは、あくまで、イタインよ! いまのとこ、つかうのをのぞみそうなのは、そいつしかいないんだから!」
確かにあらゆる意味で白黒が、キッパリサッパリハッキリしっかり分かれてる舞子さんは、好きになった相手の心を捻じ曲げてまで自分に惚れさせる形での恋愛って発想とは、無縁に思えた。
「………そうだ! ルナさまっ!」
「ふぁいっ⁈」
真っ黒マックスの背中を撫でていた亜梨沙さんが、話しの流れがいきなり自分に向いたことで発音のおかしな応答を返す。
「あのえいぞうのなかにでてきた、ダリルのもってたペンダント! あれとおなじこうかをもったものって、つくれない⁈ つくれるなら、それをみんなでもてば、1ばんのイタインじょうたいさくになるよねっ?」
「あれ、まおうせんみるかぎりじゃ、じょうたいいじょうぜんむこうっぽくみえたけど、じんいてきにつくるの、かのうなの?」
「ええっ? ……わかんない……かんがえたことなかったし……」
エンディミオン殿下の思い付きによる提案と舞子さんの紡いだ疑問に亜梨沙さんは首を傾げたけれど。
「出来ますよ?」
「出来なかねぇな」
[可能ですよー?]
マックス、俺、サーシャエールが、ほぼ同時にその可否を断じていた。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる