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第5章 女神の間にて

花咲く丘にキミと2人で -22-

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聖なる秩序の輪舞曲ホーリー・オブ・ローフルロンド!』

 スキル発動のキーワードが唱えられて、倒れている国王達を中心に広がった魔法陣が、演習場に色違い11色の可憐な小花を咲かせて光り、魔王の放った魔法を完全に打ち消した。

 11色……つまり11属性。

 魔法を打ち消すこと自体には成功しているが、全属性には1色足りない。

 それは、勇者しか扱うことが出来ないとされている星属性は「例え聖女であろうとも得られることはない」のだということを意味していた。

 裏を返せば。

「勇者と聖女がセット販売な理由はこれなのか。両方覚醒してても2人揃ってないと上位階まで含めた全属性揃わないもんな」
[そうよー。“アレ” を持っちゃった所為で、全部1人で扱えることになった貴方と違って、普通の全属性は、9つの精霊属性プラス無属性で、時空間属性と星属性は入らないの。その2つは、普通のみたまには負担がかかり過ぎるから、持ってても精々どっちかの単品で、後から得られた称号なんかで残りの属性を得られるだけなの。貴方に比べれば一般人な勇者に聖女、魔王なんかに本物の全属性とか無理よ、無理。賢者だって無理なのにー]
「…………」
「ちょっと、アンタ。なに、ひろいぐいしたのよ?」

 サーシャエール「様!」のした説明に舞子さんアリューシャが目の上を平らにして聞いてくる。

「ええと……その話しは、また、改めて、ということで?」
[大丈夫よー? 貴女達が不利になる話しではないからー]

 濁した俺と、にこやかにそれだけ告げたサーシャエール「様!」に女の子3人は物凄く懐疑的な目を向けて来たけれど。

『ダリル先生っ! わたしと一緒に必殺技を!』
『えっ⁈ こ、ここでですか⁈』

 という2人の会話でゲーム観賞会(?)へと立ち返ってくれた。

 そう言いたくなるダリルの気持ちは分からないでもないけど、今はとにかく、ナイスアシストありがとう女主人公ヒロイン

『勿論です!』

 即答した女主人公ヒロインに、ダリルは、恐る恐る国王達の方を見てから戦況を考えるように苦悩の表情を浮かべた。

『あー、もう! 分かりましたよ! 何言われても知りませんからねっ⁈』

 その言葉には、自分があれこれ追及されることは勿論、女主人公ヒロインが聖女として国から言われることになるだろう全てを含んでいたのだけれど、インテリモード以外の女主人公ヒロインは根底のキャラ設定に「能天気」がインプットされてでもいるのか、先のことは、いい意味でも悪い意味でもあまり考えない人間性をしていた。

『ラブラブアターック!』
『ぅ』

 どうしても14、5の娘さんと一緒に公衆の面前でこんな技名叫ばなならん恥ずかしさが抜けきらないらしいダリルが赤面しながら最後に変な音を出し。

「ねぇっ⁈ これ何っていう公開処刑なのさっ⁈」

 と「こっち側」のダリルまで叫んだのが印象的だった。

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