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第5章 女神の間にて

花咲く丘にキミと2人で -3-

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「…………これが、みらいの、ぼく………?」

 物凄いショックを受けたっぽいエンディミオン殿下の呟きが聞こえてきて、それまでゲームの14歳エンディミオン殿下に、きゃるきゃる言ってた舞子さんアリューシャがスパッと真顔に戻った。

「エンディ! だいじょうぶよ! あなたはこのエンディミオンでんかより、ぜったい、ぜったい、ぜぇーったい、すてきなおとこのこになるわ! わたしが、ほしょうする! だから、あんしんしてっ!」
「アリィ……うん。アリィだって、ぜんぜんちがうおんなのこだもんね。わかった。こうならないように、がんばって、つづきみる……」

 しゅうん、と萎れながらもアリィの励ましを受けて、エンディミオン殿下は少しだけ気を取り直したようだった。

 俺達から皆への音声は遮断してある筈なんだけどな?

[うふふ。ごめんなさいね? 彼女の声を届けただけだから許して?]

 エンディミオン殿下の反応を見越していたらしいサーシャエール「様!」からそう言われて、別段、文句があった訳ではなかった俺は、肩を竦めるだけで原因について考えるのをやめた。

 俺達がそんなやり取りをしている間にもゲームは進んでいて、14歳エンディミオン殿下に入学式の会場まで連れてって貰うという、これまた不敬で有り得ない話しの所まで来た。

 お。

 次が出るぞー。

『お待ちくださいませ、エンディミオン殿下』

 冷たくはないが、些か棘のある声がしてそちらへとアリューシャが目を移す描写が挟まった後、現れたのは、14歳フランソワーヌ。

『あ! 可愛い女の子! こんにちは!』
『……ご機嫌よう』
『わたし、アリューシャ! あなたも新入生なんだよね? お名前聞いてもいい?』
『アリューシャ様、わたくしは、エンディミオン殿下に話しかけましたのよ? 公爵家の令嬢であるわたくしの話しを遮るからには、貴女の家の家格は、王家か公爵家なのでしょうね?』
『えっ? 違うよ? わたし、男爵家の子だって分かって、ついこの前、孤児院から引き取られたばっかりだもん!』
『では、最低でもわたくしが話しかけるまでは、貴女にこの場における発言権はございませんわ』
『えっ? 何で?』
「大丈夫か、ロモノデュース男爵家……」

 ゲーム内でのアリューシャとフランソワーヌのやり取りを聞いていた父様から、最もなツッコミが入った。

 王子に道案内させたばかりか、自分の家より上の爵位を持ち、初対面な相手の会話を中間妨害インターセプト

 おまけに孤児院育ちの庶子であることを自らバラし、尚且つ、それを指摘したフランソワーヌに「何で?」と返したのだ。

 父様じゃなくても学院に入る前、家で十分な教育を施されていないことは間違いないと思えるだろう。

『貴族として当然のマナーもご存知ないのね』
『ごめんね! ついちょっと前まで、自分は聖属性持ってて、知らない間に聖魔法使えるようになっちゃっただけの平民だと思ってたから、そういうの、よく分かんないんだ!』
『そうか……キミが、聖サーシャエール教会から推薦されていた女の子だったのか?』
『そうなの? あ、そっか。エンディミオンは王子様だからそういうお話しも聞いてるんだね!』
『エンディミオン殿下を呼び捨てになさるなんて……!』
『お父様、わたしには、そういうの何も教えてくれないんだよ! 酷いでしょ?』
「言うだけ無駄だと思われたのでは?」

 男爵の擁護をした訳ではないのだろうが、第1王子を呼び捨て、公爵令嬢のツッコミをガン無視という最強コンボを目にしては、王侯貴族的に見た場合、そう判断せざるを得ない素地が、このアリューシャにはあるからだろう。

 王妃様が呆れたように呟いた。

 やっぱり乙女ゲー展開って、本物の王侯貴族から見たら無理あるんだな。

 喜べ “貴族として正しいのはフランソワーヌ” 派の諸君。

 実際の世界の王侯貴族は、キミ達の仲間みかたのようだぞ。

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