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第4章 集まれ仲間達
辺境伯の忘れ事 -1-
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兵を半数程、国境門周辺へと残して僕達は砦へと凱旋した。
到着早々、拗ねて膨れてしまったリリエンヌ嬢の御機嫌取り(?)をする為にエルは彼女を連れて転移で何処かに消えて行き、残った僕達は、ツェルデンテ伯爵と共に辺境伯へと報告に向かった。
砦内は、何処も彼処も戦勝に沸き立っていて、すれ違い様にかけられる喜びや労いの声は、それだけで僕達の気持ちを明るくしてくれた。
「ねぇ、マックスさま。こっきょうもんのところにいた、アンデット・ドラゴンって、なんでエルっちとこうたいするみたいにしてきえてっちゃったの?」
「あれは、師匠の所為というよりは精霊達の所為ですね」
ルナ様に説明を求められたマックスが、少し困ったような顔をしながら続きを口にする。
「普段は精霊界から力を及ぼすだけで、僕達の世界へは、直接、現れることのない上位階精霊が5属性全て来ていましたし、リリエンヌ嬢が無属性の魔力をくださったことで、全属性があの場に揃うことになりました。形成されたその力場が及ぼす影響は、地の理から外れているあの生腐屍者・ドラゴンの存在を継続させなかったようです」
歩きながら聞いたマックスの説明は、結構、分からない単語がいっぱいあって、僕はまだまだ自分が勉強不足だな、と思ってしまう。
「んー……むずかしくって、くわしいことは、ぜんぜんわかんないけど、せいれいたちのおかげで、そんざいできなくなってきえちゃったんだってところは、わかったかな!」
「はい。それが分かれば十分かと思います」
「じゃあ、へんきょうはくにもそれでせつめいすればいいの?」
僕達は、報告に向かっているので流石にその辺りの説明を省いて「勝ちました! おしまい‼︎」って訳にはいかないと思うんだよね。
「いえ、辺境伯様には、僕とツェルデンテ伯爵様で詳細のお話しは致しましょう。殿下には、国王陛下と王妃陛下への報告書類の作成をアリューシャ様達と一緒にしていただければ助かります」
「そうだね、それもひつようだもんね。じゃあ、へんきょうはくのしつむしつにある、はしづくえでもかりて、5にんでやろうか」
「そうね」
大体の方針が決まった所で丁度よく辺境伯様の執務室前に辿り着いた僕達は、ツェルデンテ伯爵と入口を警備する兵のやり取りを待った後、彼の後に続いて部屋の扉を潜った。
「アルフレッド! すまん!」
僕達の姿を見るなり、挨拶も報告もスッ飛ばした辺境伯が、アルフレッドに向かって頭を下げ、その頭の上で両手を合わせ、勢いよく謝罪の言葉を投げて来た。
「いきなりなんですか? とうさま?」
唐突過ぎて事態が把握出来なかったらしいアルフレッドは、当然、そう尋ねる。
そりゃそうだよね。
僕でも聞くよ。
もし、過去に話してあることなんだとしてもタイミングからして思い出せそうにないだろうし?
「ヘルガティーエが、お前とライオネルを連れて砦を出たそもそもの理由は、私が、これの存在を綺麗サッパリ忘れていて、お前に渡していなかったのを怒ったからなのだと、先程、王都の邸から連絡があった。誓って故意ではないが、本当にすまん!」
そんな疑問を抱きながら顔を見合わせた僕達に、辺境伯はそう言って執務机の上に積まれていた冊子の束をアルフレッドに差し出した。
見た目にも結構な重量感を伴ったその束を受け取ったアルフレッドは、僕達と同じ疑問顔のまま1番上にある冊子の表紙を開いた。
そこには、貴石絵具で描かれた可愛らしい女の子の姿絵が左側に、右側の表紙裏には、その女の子の名前、家柄、家内序列、得意な事や勉強中なこと、趣味などが書かれている。
うん。
どっからどうみても釣書だよね、これ。
あーあ……これを本人に見せるの忘れたら、奥方が怒るの当たり前だよー……。
到着早々、拗ねて膨れてしまったリリエンヌ嬢の御機嫌取り(?)をする為にエルは彼女を連れて転移で何処かに消えて行き、残った僕達は、ツェルデンテ伯爵と共に辺境伯へと報告に向かった。
砦内は、何処も彼処も戦勝に沸き立っていて、すれ違い様にかけられる喜びや労いの声は、それだけで僕達の気持ちを明るくしてくれた。
「ねぇ、マックスさま。こっきょうもんのところにいた、アンデット・ドラゴンって、なんでエルっちとこうたいするみたいにしてきえてっちゃったの?」
「あれは、師匠の所為というよりは精霊達の所為ですね」
ルナ様に説明を求められたマックスが、少し困ったような顔をしながら続きを口にする。
「普段は精霊界から力を及ぼすだけで、僕達の世界へは、直接、現れることのない上位階精霊が5属性全て来ていましたし、リリエンヌ嬢が無属性の魔力をくださったことで、全属性があの場に揃うことになりました。形成されたその力場が及ぼす影響は、地の理から外れているあの生腐屍者・ドラゴンの存在を継続させなかったようです」
歩きながら聞いたマックスの説明は、結構、分からない単語がいっぱいあって、僕はまだまだ自分が勉強不足だな、と思ってしまう。
「んー……むずかしくって、くわしいことは、ぜんぜんわかんないけど、せいれいたちのおかげで、そんざいできなくなってきえちゃったんだってところは、わかったかな!」
「はい。それが分かれば十分かと思います」
「じゃあ、へんきょうはくにもそれでせつめいすればいいの?」
僕達は、報告に向かっているので流石にその辺りの説明を省いて「勝ちました! おしまい‼︎」って訳にはいかないと思うんだよね。
「いえ、辺境伯様には、僕とツェルデンテ伯爵様で詳細のお話しは致しましょう。殿下には、国王陛下と王妃陛下への報告書類の作成をアリューシャ様達と一緒にしていただければ助かります」
「そうだね、それもひつようだもんね。じゃあ、へんきょうはくのしつむしつにある、はしづくえでもかりて、5にんでやろうか」
「そうね」
大体の方針が決まった所で丁度よく辺境伯様の執務室前に辿り着いた僕達は、ツェルデンテ伯爵と入口を警備する兵のやり取りを待った後、彼の後に続いて部屋の扉を潜った。
「アルフレッド! すまん!」
僕達の姿を見るなり、挨拶も報告もスッ飛ばした辺境伯が、アルフレッドに向かって頭を下げ、その頭の上で両手を合わせ、勢いよく謝罪の言葉を投げて来た。
「いきなりなんですか? とうさま?」
唐突過ぎて事態が把握出来なかったらしいアルフレッドは、当然、そう尋ねる。
そりゃそうだよね。
僕でも聞くよ。
もし、過去に話してあることなんだとしてもタイミングからして思い出せそうにないだろうし?
「ヘルガティーエが、お前とライオネルを連れて砦を出たそもそもの理由は、私が、これの存在を綺麗サッパリ忘れていて、お前に渡していなかったのを怒ったからなのだと、先程、王都の邸から連絡があった。誓って故意ではないが、本当にすまん!」
そんな疑問を抱きながら顔を見合わせた僕達に、辺境伯はそう言って執務机の上に積まれていた冊子の束をアルフレッドに差し出した。
見た目にも結構な重量感を伴ったその束を受け取ったアルフレッドは、僕達と同じ疑問顔のまま1番上にある冊子の表紙を開いた。
そこには、貴石絵具で描かれた可愛らしい女の子の姿絵が左側に、右側の表紙裏には、その女の子の名前、家柄、家内序列、得意な事や勉強中なこと、趣味などが書かれている。
うん。
どっからどうみても釣書だよね、これ。
あーあ……これを本人に見せるの忘れたら、奥方が怒るの当たり前だよー……。
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