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第4章 集まれ仲間達
賢者の覚醒 -2-
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「賢者マックス・クウェンティより世界歴史記録保存映像書へ、初回接続を申請」
立ち上がった僕が、2重の意味で初めて世界歴史記録保存映像書に対する接触を申請すると、何処からともなく返答の声がする。
〈Welcome to W.M.A.R!〉
勿論、これは僕にだけ聞こえている声で、他の人には一切聞こえてはいない。
「地の理の書 第1章 生命総則 第3条4項違反を訴求。対象ワールドプロトコルNo.422.585.620.0.382.22.114.379に即時適用を!」
三理の内の1つ、地の理の中にある生命に関して規定した条文にある項目を指定して、違反を訴え、侵された理を正しい姿に戻すよう求めた。
〈Confirmed. Carry it out〉
世界歴史記録保存映像書からすぐに回答が紡がれて、僕達の前で猛威を奮っていた生腐屍者・ドラゴンは、術者も被害に遭ったミラードラゴンの意向も意識も一切頓着することなく、執行を開始した。
「おおっ! 生腐屍者・ドラゴンが、光になって消えていくぞ!」
周辺から上がる歓声の中で、誰かが言ったように、この世あらざる形で留まることを強制されていた肉体はトリマプトロンエーテルへと還り、魂は、サーシャエール様の元へと導かれてゆく。
白くて丸い発光体が、ゆっくり空へ昇って行くとそれに釣られたかのように、擁壁下に散らばっていた人の生腐屍者達からも召された者達が昇り、消えて行った。
「どうか、穏やかな来世が、君達に訪れますように」
こればかりは、賢者として世界歴史記録保存映像書に接続を許されるようになった僕にも決められることではないから、全てサーシャエール様にお任せするしかない。
僕は、彼等の魂が消えるまで祈りながら見送って、振り返った。
そこには、意識を取り戻していたらしいルナ様が居て、僕のことを真剣な瞳で見詰めていた。
「ルナ様。ご無事で何よりです」
「……マックスさま……めのおくのしるしが、あんていしょくになっています。かくせいしたのですね? けんじゃのしょうごうが」
「はい。エンディミオン殿下とアルフレッド様、それに僕。死の淵に居た僕達3人を救う為に、師匠が、ご自分の未来を投げ打ってまで、助けてくれました」
「えっ」
僕が師匠と呼ぶ人は1人しかいないので、ルナ様も誰の未来が犠牲になったのかをすぐに察してくれたようでした。
「その時に世界の理へ触れたことで、僕はこの世界の賢者として、正式に認められたのです」
「まって! そんなの、おかしい! けんじゃのしょうごうは、だれかのぎせいがないと、あかないしょうごうじゃないはずよ⁈」
そうですね。
僕達は急ぎ過ぎて、しかも、望み過ぎた。
仲間の誰かが、心の迷路に陥って、その生が闇に堕ちることを許容出来なかった。
本来であれば、来て然るべき未来を変えてしまった。
それが、こうなったそもそもの原因なのだろうと今の僕には、はっきりと理解出来ていた。
立ち上がった僕が、2重の意味で初めて世界歴史記録保存映像書に対する接触を申請すると、何処からともなく返答の声がする。
〈Welcome to W.M.A.R!〉
勿論、これは僕にだけ聞こえている声で、他の人には一切聞こえてはいない。
「地の理の書 第1章 生命総則 第3条4項違反を訴求。対象ワールドプロトコルNo.422.585.620.0.382.22.114.379に即時適用を!」
三理の内の1つ、地の理の中にある生命に関して規定した条文にある項目を指定して、違反を訴え、侵された理を正しい姿に戻すよう求めた。
〈Confirmed. Carry it out〉
世界歴史記録保存映像書からすぐに回答が紡がれて、僕達の前で猛威を奮っていた生腐屍者・ドラゴンは、術者も被害に遭ったミラードラゴンの意向も意識も一切頓着することなく、執行を開始した。
「おおっ! 生腐屍者・ドラゴンが、光になって消えていくぞ!」
周辺から上がる歓声の中で、誰かが言ったように、この世あらざる形で留まることを強制されていた肉体はトリマプトロンエーテルへと還り、魂は、サーシャエール様の元へと導かれてゆく。
白くて丸い発光体が、ゆっくり空へ昇って行くとそれに釣られたかのように、擁壁下に散らばっていた人の生腐屍者達からも召された者達が昇り、消えて行った。
「どうか、穏やかな来世が、君達に訪れますように」
こればかりは、賢者として世界歴史記録保存映像書に接続を許されるようになった僕にも決められることではないから、全てサーシャエール様にお任せするしかない。
僕は、彼等の魂が消えるまで祈りながら見送って、振り返った。
そこには、意識を取り戻していたらしいルナ様が居て、僕のことを真剣な瞳で見詰めていた。
「ルナ様。ご無事で何よりです」
「……マックスさま……めのおくのしるしが、あんていしょくになっています。かくせいしたのですね? けんじゃのしょうごうが」
「はい。エンディミオン殿下とアルフレッド様、それに僕。死の淵に居た僕達3人を救う為に、師匠が、ご自分の未来を投げ打ってまで、助けてくれました」
「えっ」
僕が師匠と呼ぶ人は1人しかいないので、ルナ様も誰の未来が犠牲になったのかをすぐに察してくれたようでした。
「その時に世界の理へ触れたことで、僕はこの世界の賢者として、正式に認められたのです」
「まって! そんなの、おかしい! けんじゃのしょうごうは、だれかのぎせいがないと、あかないしょうごうじゃないはずよ⁈」
そうですね。
僕達は急ぎ過ぎて、しかも、望み過ぎた。
仲間の誰かが、心の迷路に陥って、その生が闇に堕ちることを許容出来なかった。
本来であれば、来て然るべき未来を変えてしまった。
それが、こうなったそもそもの原因なのだろうと今の僕には、はっきりと理解出来ていた。
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