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第4章 集まれ仲間達

マックス & ルナ

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 鳴り響く砦の警鐘音に僕とルナ様は、座って話していた石造りの椅子から立ち上がり、配置につく領軍兵、傭兵達、そして王都から応援に来てくれた王国騎士団の人達に混じってベーターグランディア側にある擁壁の上へと駆け上がった。

 夕闇に広がる黒々とした森の木々、その狭間から生腐屍者アンデット達が、死後硬直して久しい筈の筋や筋肉、腐りかけの皮や骨を無理矢理動かし、ぎこちない、カクカクした動きで砦へと迫って来ていた。

 その数が、想定されていたよりずっと多い。

 この襲撃を実現させる為にベーターグランディア側で、村や集落が丸ごと幾つ消えたのかなんて、考えたくもなかった。

『頑張れば助けられるんじゃないか、なんて、間違っても考えちゃダメよ? 聖魔法が効かないアンデット。それは、呪われて生ける屍となったアンデットとは、成り立ちが違うことを意味するわ。浄化して昇天させることで救済出来る状態ではないの。まずは、生きながらにして死んでいる身体をキッチリ死なせることから始めないといけないのよ』

 アリューシャ嬢が、今回の件を城で説明してくれた時、言っていたことが脳裏に蘇る。

 生きながらにして死んでいる、と言ったって迷宮に出るゾンビやグールと何がどう違うのか、実際にこの目で見るまでは、分からなかった。

「……ひどいわ。へいしどころか、たたかえそうなひとなんか、ひとりもいないじゃない。それをむりやり、こんなかたちで、せんとうにつかうなんて……」

 僕の隣でそう呟いたルナ様の言葉通り、生腐屍者アンデット達の身形は、どう贔屓目に見積もっても非戦闘員しかいないように見えた。

 おじいちゃん、おばあちゃん、おかあさん、こども。

「っ、総員! 火系放射魔法用意‼︎」

 この場を任されている砦の指揮官が、感じている戸惑いを振り払ってかけた号令に、僕は短杖を、ルナ様は愛用の槍を構えた。

 師匠とアリューシャ嬢に説得されて「みにすかまほうしょうじょいしょう」とは別に出せるようにされていた。

 僕達だけじゃなく、他の兵達も皆、それぞれの準備を終えていたけれど、全員が無言で眉間に深い皺を寄せ、悔しさや憤りを面に浮かべて唇を噛んでいる。

「放て!」

 号令をかけた指揮官が、合図を口にすると同時に第1射を炎の矢ファイア・アローで放った。

 少しでも後に続く僕達の罪悪感を薄める為の行動だろう。

 兵達も僕やルナ様も、下された命令を合図と共に実行した。

 制止の合図が出るまで、火魔法を擁壁上から放ち続けるのが、僕達の役目だ。

 気持ちのいいものじゃない。

 高揚感もまるでない。

 ただ、こいつらにヴェスタハスラム辺境伯領へ入られたら次にこうなるのは、自分達と辺境伯領の領民だから。

 それだけは阻止しなくてはいけないから。

 半ば、心を無にして攻撃を続ける。

 命の遣り取りをする戦場の「それ・・」ではなく、完全に「作業」だった。

 今はただ「作業」レベルに落とし込むことができたことを幸運だったと思うことにして、僕達は、ただひたすらに、火魔法を放ち続けていた。

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