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第4章 集まれ仲間達
辺境伯領の落日 -6-
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パチン、と指を鳴らす音が彼の右手から奏でられたと思ったら俺の視界は、一瞬で砦前から全く違う森の中へと変わった。
彼が言っていた「てんいするぞ」というのが、転移魔法で違う場所へ行くぞ、という意味であったことを漸く俺の頭が理解した。
(……俺と同い年くらいに見えるのに、無詠唱で転移魔法って、凄くないか? 他に使ってるヤツを見たことないんだが……?)
正直、魔法の名前と全然違う場所へこうして一瞬で行けるのだということ以外、俺にはサッパリ分からない。
「ボサッとすんな、アルフレッド! おまえのオヤジ、もうせんとうちゅうだぞ⁈」
「えっ⁈」
「かいにゅうしますわ!」
「エルドレッドさま」と淡い金髪の女の子に呼ばれていた彼の発した “戦闘中” と言う台詞に俺が反応したのとほぼ同時に「フラン」と呼ばれていた黒紫の髪に琥珀の瞳の女の子が、そう言って呪文の詠唱を始めた。
「〈凍てつく水霧、大地へ降り立ち、
堅牢なる壁となれ!〉」
この頃になって、やっと俺にも剣戟の音が耳に入って来る。
「〈編まれし鎖、炎獄の焔によりて顕現し、
彼の者達の身を戒め給え!〉」
左手に氷の魔法、右手に炎の魔法を保持した彼女は、伝承に在る「氷炎の天使」のようで、美しかった。
「フラン! りょうしゅぐん8じのほうがく、500m! てきしゅりょく、ひだり30どしゅうせい、かず20!」
「エルドレッドさま」が、左手で方角を指し示しながら「フラン」に500m先の簡単な概略を説明した。
「〈結晶氷壁!〉〈炎獄戒鎖〉!」
それを受けて返事代わりに彼女が2つの魔法を連続で解き放つ。
「アリィ! りょうぐんふしょうしゃ6! かいふくたいおうたのむ!」
「OK!」
「アルフレッド! これつかえ!」
「アリィ」と呼ばれていた女の子への指示が終わってすぐ、預かっていた口締め革袋から「エルドレッドさま」が取り出したのは、掌サイズくらいしかないガーディアンシールドとバスタードソードだった。
「ルナがアルフレッドせんようにつくった、たてとけんだ。たてのもちてとけんのえについてる、えんけいのしろくてひらたいぶぶんをおして、まりょくをながせ!」
「わかった」
投げ渡されたそれは、軽くて小さな物だったけれど、確かに「エルドレッドさま」が言う場所に丸くて白く、平たいものがついていた。
これを押して、魔力を流す。
言われてる事も内容も理解出来るけれど、こんなものを俺専用とか言って作られても正直困る。
(……御守りにしたって、逆に邪魔だろ? このサイズ)
とにかく今は言われた通りにして、一刻も早く父上達の加勢に入りたい。
俺は半ば、どうにでもなれ、くらいの気持ちで左右の親指で小さな盾と小さな剣についている平たいものを押して魔力を流した。
彼が言っていた「てんいするぞ」というのが、転移魔法で違う場所へ行くぞ、という意味であったことを漸く俺の頭が理解した。
(……俺と同い年くらいに見えるのに、無詠唱で転移魔法って、凄くないか? 他に使ってるヤツを見たことないんだが……?)
正直、魔法の名前と全然違う場所へこうして一瞬で行けるのだということ以外、俺にはサッパリ分からない。
「ボサッとすんな、アルフレッド! おまえのオヤジ、もうせんとうちゅうだぞ⁈」
「えっ⁈」
「かいにゅうしますわ!」
「エルドレッドさま」と淡い金髪の女の子に呼ばれていた彼の発した “戦闘中” と言う台詞に俺が反応したのとほぼ同時に「フラン」と呼ばれていた黒紫の髪に琥珀の瞳の女の子が、そう言って呪文の詠唱を始めた。
「〈凍てつく水霧、大地へ降り立ち、
堅牢なる壁となれ!〉」
この頃になって、やっと俺にも剣戟の音が耳に入って来る。
「〈編まれし鎖、炎獄の焔によりて顕現し、
彼の者達の身を戒め給え!〉」
左手に氷の魔法、右手に炎の魔法を保持した彼女は、伝承に在る「氷炎の天使」のようで、美しかった。
「フラン! りょうしゅぐん8じのほうがく、500m! てきしゅりょく、ひだり30どしゅうせい、かず20!」
「エルドレッドさま」が、左手で方角を指し示しながら「フラン」に500m先の簡単な概略を説明した。
「〈結晶氷壁!〉〈炎獄戒鎖〉!」
それを受けて返事代わりに彼女が2つの魔法を連続で解き放つ。
「アリィ! りょうぐんふしょうしゃ6! かいふくたいおうたのむ!」
「OK!」
「アルフレッド! これつかえ!」
「アリィ」と呼ばれていた女の子への指示が終わってすぐ、預かっていた口締め革袋から「エルドレッドさま」が取り出したのは、掌サイズくらいしかないガーディアンシールドとバスタードソードだった。
「ルナがアルフレッドせんようにつくった、たてとけんだ。たてのもちてとけんのえについてる、えんけいのしろくてひらたいぶぶんをおして、まりょくをながせ!」
「わかった」
投げ渡されたそれは、軽くて小さな物だったけれど、確かに「エルドレッドさま」が言う場所に丸くて白く、平たいものがついていた。
これを押して、魔力を流す。
言われてる事も内容も理解出来るけれど、こんなものを俺専用とか言って作られても正直困る。
(……御守りにしたって、逆に邪魔だろ? このサイズ)
とにかく今は言われた通りにして、一刻も早く父上達の加勢に入りたい。
俺は半ば、どうにでもなれ、くらいの気持ちで左右の親指で小さな盾と小さな剣についている平たいものを押して魔力を流した。
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