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第4章 集まれ仲間達
辺境伯領の落日 -2-
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「ブレイダゾニオンにベーターグランディアのきしゅう⁈」
「えっ⁈」
「何ですと⁈」
母上が慌てて席を立ち、傍に居た執事と2人揃ってこちら側へと駆け込んでくると俺が手にしている魔導箋を一緒になって覗き込んだ。
「ははうえ! これ、どうやってへんじをすればいいですか? やりかたは、とりででつかっていたまどうせんとおなじですか?」
「…………分からないわ。妙な挙動をしていたし」
「やってみてはいかがですか?」
「そうだな」
内容が内容なので、最悪、燃え消えても問題視されることはあるまい、と判断した俺は左手を紙の裏側で掌を上にして添え、右手で紙を挟み込むようにして表側へ載せると無属性の魔力を両手に込めた。
「おまえたちと、きょうとうする! おれをとりでにつれてってくれ!」
「アルフレッド⁈」
「ははうえ! いくらおれとライオネルがおうとにいて、りょうちほせいがゆうこうになってるとはいえ、じっさいのせんりょくがあるのと、ないのとではいみがちがうんだ!」
俺の無属性魔力を存分に吸い上げた紙は、再び金の光粒となって舞い上がり、光の文字を書き記した。
『応えてくれて、有り難う。ヴェスタハスラム辺境伯家王都邸の玄関前まで迎えに行く。
すぐ現地へ向かおう!
第1王子エンディミオン・シグマセンティエ』
この紙、応答まで自動で出来て便利だな。
流石王家。
良い物を使ってる。
魔導具を専門で研究製作してる部署があると聞いたことがあるからそこの作かもしれないな。
ちょっと分けて欲しい。
「っ」
そうでなく。
王子達が来る前に部屋へ剣を取りに行かなくては。
俺は踵を返すとダイニングを出て自室へと向かった。
母上と執事がそれについて来ることはなく、廊下を足早に通り過ぎ、上階への階段を駆け上がると真っ直ぐ自室へと入った俺は、ベッド脇に立てかけてある剣を手に取った。
戦い初めの頃は短剣でも大きさや長さ的には丁度いいくらいだった俺もミドルソードくらいは扱えるようになった。
その頃からもう何本目になるか分からないそれを手に取り、ベルトを腰に巻きつけて金具を止める。
ここに鎧は持ってきていないので、それは砦に行ってからでいいだろう。
(……その時間があればいいが)
口へ音を上らせることなく、そんなことを考えて、玄関先へと向かった。
ホールには、第1王子を迎えることになるからだろう。
母上と執事が既に待機していて、乳母のエレンに抱えられたライオネルも連れて来られていた。
母上が朝食時に言っていた通り、弟のライオネルは、メチャクチャ機嫌が悪いらしく、赤ん坊なりの渋面らしい皺を眉間に刻み、ゔーゔー言いながら手足をバタバタモゾモゾ動かしていた。
外で待った方がいいだろうか?
ふとそんなことを考えた時だった。
大きな音を響かせて玄関の大扉が勢いよく両側へと開いた。
「⁈」
家の使用人が、乱暴に開け放ったのではないらしく、そこには誰もいない。
だが、扉が開く程の風が吹いている訳でもないそれに母上を含めた者が驚きの表情を見せている中でそれは起こった。
これまで聞いたこともないような「ブーン、ブーン」と低く唸るような音が何もない玄関外の空間に響き渡り、石床の上へ円形を4分の1程切り取って残りの部分をそこへ置いたような5本の円弧が現れた。
勝手に右へ左へ回転していたそれが、ガチン、ガチン、と回転鍵が噛み合った時のような音と挙動を見せて、それまで普通に向こう側の景色が見えていた中心部分が暗闇に染まった。
「つながったわよ!」
聞いたことのない、女の子の声がして。
「いくよ、みんな!」
「はいっ!」
「おう!」
何人かの男の子と女の子の声がして、暗闇部分から最初に現れたのは、金の髪に空色の瞳という、この国の王族カラーをした1人の男の子だった。
「えっ⁈」
「何ですと⁈」
母上が慌てて席を立ち、傍に居た執事と2人揃ってこちら側へと駆け込んでくると俺が手にしている魔導箋を一緒になって覗き込んだ。
「ははうえ! これ、どうやってへんじをすればいいですか? やりかたは、とりででつかっていたまどうせんとおなじですか?」
「…………分からないわ。妙な挙動をしていたし」
「やってみてはいかがですか?」
「そうだな」
内容が内容なので、最悪、燃え消えても問題視されることはあるまい、と判断した俺は左手を紙の裏側で掌を上にして添え、右手で紙を挟み込むようにして表側へ載せると無属性の魔力を両手に込めた。
「おまえたちと、きょうとうする! おれをとりでにつれてってくれ!」
「アルフレッド⁈」
「ははうえ! いくらおれとライオネルがおうとにいて、りょうちほせいがゆうこうになってるとはいえ、じっさいのせんりょくがあるのと、ないのとではいみがちがうんだ!」
俺の無属性魔力を存分に吸い上げた紙は、再び金の光粒となって舞い上がり、光の文字を書き記した。
『応えてくれて、有り難う。ヴェスタハスラム辺境伯家王都邸の玄関前まで迎えに行く。
すぐ現地へ向かおう!
第1王子エンディミオン・シグマセンティエ』
この紙、応答まで自動で出来て便利だな。
流石王家。
良い物を使ってる。
魔導具を専門で研究製作してる部署があると聞いたことがあるからそこの作かもしれないな。
ちょっと分けて欲しい。
「っ」
そうでなく。
王子達が来る前に部屋へ剣を取りに行かなくては。
俺は踵を返すとダイニングを出て自室へと向かった。
母上と執事がそれについて来ることはなく、廊下を足早に通り過ぎ、上階への階段を駆け上がると真っ直ぐ自室へと入った俺は、ベッド脇に立てかけてある剣を手に取った。
戦い初めの頃は短剣でも大きさや長さ的には丁度いいくらいだった俺もミドルソードくらいは扱えるようになった。
その頃からもう何本目になるか分からないそれを手に取り、ベルトを腰に巻きつけて金具を止める。
ここに鎧は持ってきていないので、それは砦に行ってからでいいだろう。
(……その時間があればいいが)
口へ音を上らせることなく、そんなことを考えて、玄関先へと向かった。
ホールには、第1王子を迎えることになるからだろう。
母上と執事が既に待機していて、乳母のエレンに抱えられたライオネルも連れて来られていた。
母上が朝食時に言っていた通り、弟のライオネルは、メチャクチャ機嫌が悪いらしく、赤ん坊なりの渋面らしい皺を眉間に刻み、ゔーゔー言いながら手足をバタバタモゾモゾ動かしていた。
外で待った方がいいだろうか?
ふとそんなことを考えた時だった。
大きな音を響かせて玄関の大扉が勢いよく両側へと開いた。
「⁈」
家の使用人が、乱暴に開け放ったのではないらしく、そこには誰もいない。
だが、扉が開く程の風が吹いている訳でもないそれに母上を含めた者が驚きの表情を見せている中でそれは起こった。
これまで聞いたこともないような「ブーン、ブーン」と低く唸るような音が何もない玄関外の空間に響き渡り、石床の上へ円形を4分の1程切り取って残りの部分をそこへ置いたような5本の円弧が現れた。
勝手に右へ左へ回転していたそれが、ガチン、ガチン、と回転鍵が噛み合った時のような音と挙動を見せて、それまで普通に向こう側の景色が見えていた中心部分が暗闇に染まった。
「つながったわよ!」
聞いたことのない、女の子の声がして。
「いくよ、みんな!」
「はいっ!」
「おう!」
何人かの男の子と女の子の声がして、暗闇部分から最初に現れたのは、金の髪に空色の瞳という、この国の王族カラーをした1人の男の子だった。
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