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第4章 集まれ仲間達
X-Day Count down -3-
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密林。
その場所は、一言で言うとそう表現して問題なさそうに見えた。
鬱蒼とした木々に盛大過ぎるくらい蔓延った蔦が絡まりまくって垂れ下がり、鳥だか魔物だかよく分からない「ギャアギャア」っと言う声が響いてくる景色が広がっていて、そう思わない人ってどのくらい居るのかしら?
「おくりこむさきは、こんなかんじ。しゅうへんのしまじまは、およいでいけるようなきょりにてんざいしてるけど、うみのまものとかもふつうにおよいでるから、だっしゅつは、かんがえないほうがりこうだとおもう。まみずは、しまのなかに、たきとたきつぼ、そこからながれでてるちいさなかわがあるから、こまらないとおもう。しまじたいも、ふたりですむにはじゅうぶんすぎるひろさがあるし、せいたいけいは、むしもとりも、どうぶつもまものもいるし、うみやかわのなかにさかなやかに、かいるいなんかもいるし、しょくぶつも、はたけや、かじゅえんみたいなおおきさにはそだたないけど、やさいもくだものもあるから、ふつうにがくいんをそうぎょうできるだけのがくりょくと、まほうりょくがあれば、いきてはいけるよ」
島の景色を色々と見せながら、流した説明をするエルに、これが女神の刑罰として送り込まれる地なのだと忘れてかけているんじゃないでしょうね? って疑うレベルで大人達は興味津々だった。
そこへ送り込まれる当の2人だけが、顔色を悪くしていて、リリエンヌがエルの見せる景色を見ながら、ちらちらと窺うように心配そうな視線を時折、向けていた。
この子は、この期に及んでまだ、父親と兄を切り捨てることが出来ないんだ、と分かって、わたしは前世で虐待やDVで心身共に相手の支配下にあった人達を思い出してしまった。
だからだろう。
「おい、クズ女! 何でお前だけ、家でも着てなかったような上等のドレスを身につけて、そっち側に居るんだ⁈」
「さては、俺達を売って陥れたのは、お前なのだな⁈」
親子揃って喚いた台詞を耳にして一気に頭へ血の上ったわたしは、聖魔法の1つ「物罰」という、100tハンマーで物理的にブン殴られるような衝撃を与える魔法を左右に作り出し、思い切り肩上にそれを振りかぶると、アホ親子に向かって投げつけた。
同時に飛来した2つの鈍色の何かが、アホ親子にブチ当たり、斜めに二重の輪をその身体へと出現させた。
「グハッ!」
「ブベッ!」
揃って床へと倒れ込み、目に見えない重石をしこたま背中に積まれたみたいに潰れた2人へ、わたしの放った「物罰」が遅れて頭へ炸裂したことで、汚らしい呻き声が上がった。
わたしが、怒りのままに2人へとツカツカ歩み寄ると別方向からエルが同じようにして近づいてくるのが視界の隅に入った。
カッ、と最後の足音をワザと大きく響かせてアホ親子の前で足を止めると2人は憎々しげに顔を上げ、わたしの姿を見て恐怖に凍りついた。
「アンタたち、ぜんぜんこりてないのね? ますいナシで、こうがんてきしゅつしゅじゅつと、ぼっきしんけいしゃだんしゅじゅつをうけといて、みあげたもんだわ。ついほうけいをうけるまえに、のうないも、ますいナシでいじってあげましょうか?」
「ヒッ⁈」
「えぅわぁッ⁈」
悲鳴を上げる程度には、わたしにされた痛みと恐怖は覚えていたようだけど、アホ親子は、喉元過ぎるのが早過ぎて、全然、躊躇の気持ちが起きなかった。
「おまえたちをハメたのは、リリエンヌじゃない。おれだよ」
わたしの横で静かな、けれど3歳の子供が出した声とは思えない低さでアホ親子に言い放ったのは、エルだった。
「なっ⁈」
「俺達がお前に何したっていうんだ⁈」
そう言う問題ではなさそうなことをゴミ兄が口走ると何故か、壁際からバキッ、と何かが折れる音がして、つい、そちらへ目を向けるとエルの両親 ── スターリング魔法士団長とアセンカザフ伯爵夫人 ── が、それぞれ、手にした杖と扇を握り潰し、ワナワナと震えていた。
ああ、18禁サブストを三精霊にバラされたって言ってたものね。
アセンカザフ伯爵夫人は、フン、とばかりに外方を向いたことで、リリエンヌが1人でそこに立ち、悲しげに父と兄を見ていることに気がついたらしく、チラッとエルの方を見てから足早に移動して、リリエンヌの傍に行き、何か話しかけている。
スターリング士団長もリリエンヌとは面識があるからだろう。
夫人の後を追ってリリエンヌの傍に移動した。
「おれになにをしたか、ね? しりたい?」
暫し2人を睥睨していたエルが、ポツ、と呟くように言って笑みを浮かべた。
けれどその笑みは、酷薄で冷淡で憎しみよりも恨みよりも、余程強い、絶望の深淵を滲ませる瞳を向けて浮かべられたもので、わたしが向けられたものではないのに、背筋がゾクっと冷えるのを堪えられないものだった。
その場所は、一言で言うとそう表現して問題なさそうに見えた。
鬱蒼とした木々に盛大過ぎるくらい蔓延った蔦が絡まりまくって垂れ下がり、鳥だか魔物だかよく分からない「ギャアギャア」っと言う声が響いてくる景色が広がっていて、そう思わない人ってどのくらい居るのかしら?
「おくりこむさきは、こんなかんじ。しゅうへんのしまじまは、およいでいけるようなきょりにてんざいしてるけど、うみのまものとかもふつうにおよいでるから、だっしゅつは、かんがえないほうがりこうだとおもう。まみずは、しまのなかに、たきとたきつぼ、そこからながれでてるちいさなかわがあるから、こまらないとおもう。しまじたいも、ふたりですむにはじゅうぶんすぎるひろさがあるし、せいたいけいは、むしもとりも、どうぶつもまものもいるし、うみやかわのなかにさかなやかに、かいるいなんかもいるし、しょくぶつも、はたけや、かじゅえんみたいなおおきさにはそだたないけど、やさいもくだものもあるから、ふつうにがくいんをそうぎょうできるだけのがくりょくと、まほうりょくがあれば、いきてはいけるよ」
島の景色を色々と見せながら、流した説明をするエルに、これが女神の刑罰として送り込まれる地なのだと忘れてかけているんじゃないでしょうね? って疑うレベルで大人達は興味津々だった。
そこへ送り込まれる当の2人だけが、顔色を悪くしていて、リリエンヌがエルの見せる景色を見ながら、ちらちらと窺うように心配そうな視線を時折、向けていた。
この子は、この期に及んでまだ、父親と兄を切り捨てることが出来ないんだ、と分かって、わたしは前世で虐待やDVで心身共に相手の支配下にあった人達を思い出してしまった。
だからだろう。
「おい、クズ女! 何でお前だけ、家でも着てなかったような上等のドレスを身につけて、そっち側に居るんだ⁈」
「さては、俺達を売って陥れたのは、お前なのだな⁈」
親子揃って喚いた台詞を耳にして一気に頭へ血の上ったわたしは、聖魔法の1つ「物罰」という、100tハンマーで物理的にブン殴られるような衝撃を与える魔法を左右に作り出し、思い切り肩上にそれを振りかぶると、アホ親子に向かって投げつけた。
同時に飛来した2つの鈍色の何かが、アホ親子にブチ当たり、斜めに二重の輪をその身体へと出現させた。
「グハッ!」
「ブベッ!」
揃って床へと倒れ込み、目に見えない重石をしこたま背中に積まれたみたいに潰れた2人へ、わたしの放った「物罰」が遅れて頭へ炸裂したことで、汚らしい呻き声が上がった。
わたしが、怒りのままに2人へとツカツカ歩み寄ると別方向からエルが同じようにして近づいてくるのが視界の隅に入った。
カッ、と最後の足音をワザと大きく響かせてアホ親子の前で足を止めると2人は憎々しげに顔を上げ、わたしの姿を見て恐怖に凍りついた。
「アンタたち、ぜんぜんこりてないのね? ますいナシで、こうがんてきしゅつしゅじゅつと、ぼっきしんけいしゃだんしゅじゅつをうけといて、みあげたもんだわ。ついほうけいをうけるまえに、のうないも、ますいナシでいじってあげましょうか?」
「ヒッ⁈」
「えぅわぁッ⁈」
悲鳴を上げる程度には、わたしにされた痛みと恐怖は覚えていたようだけど、アホ親子は、喉元過ぎるのが早過ぎて、全然、躊躇の気持ちが起きなかった。
「おまえたちをハメたのは、リリエンヌじゃない。おれだよ」
わたしの横で静かな、けれど3歳の子供が出した声とは思えない低さでアホ親子に言い放ったのは、エルだった。
「なっ⁈」
「俺達がお前に何したっていうんだ⁈」
そう言う問題ではなさそうなことをゴミ兄が口走ると何故か、壁際からバキッ、と何かが折れる音がして、つい、そちらへ目を向けるとエルの両親 ── スターリング魔法士団長とアセンカザフ伯爵夫人 ── が、それぞれ、手にした杖と扇を握り潰し、ワナワナと震えていた。
ああ、18禁サブストを三精霊にバラされたって言ってたものね。
アセンカザフ伯爵夫人は、フン、とばかりに外方を向いたことで、リリエンヌが1人でそこに立ち、悲しげに父と兄を見ていることに気がついたらしく、チラッとエルの方を見てから足早に移動して、リリエンヌの傍に行き、何か話しかけている。
スターリング士団長もリリエンヌとは面識があるからだろう。
夫人の後を追ってリリエンヌの傍に移動した。
「おれになにをしたか、ね? しりたい?」
暫し2人を睥睨していたエルが、ポツ、と呟くように言って笑みを浮かべた。
けれどその笑みは、酷薄で冷淡で憎しみよりも恨みよりも、余程強い、絶望の深淵を滲ませる瞳を向けて浮かべられたもので、わたしが向けられたものではないのに、背筋がゾクっと冷えるのを堪えられないものだった。
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