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第4章 集まれ仲間達

X-Day Count down -2-

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「よかろう。デルタズマフェンの間諜に関しては、エルドレッド・アセンカザフ、そなたに一任する」
「はいめいいたします、こくおうへいか」

 場が真面目で犯罪者を裁くものであることからか、国王陛下もエルも、いつもとは違って普通に王様と貴族令息として受け答えをしていた。

「ではその前に、当主と嫡男の処罰を断行致します。六精霊の魔導術士殿。女神サーシャエール様は、貴殿の転移魔法にて大陸の外へ彼らを追放せよと仰せられたそうですが、それは何処となりますかな?」
「このたいりくの、ちょうど、うらがわにあたるりくちになります」
「うら、がわ……? 大地の下、ということですかな?」
「いいえ? このほしのかくをはさんだ、たいかくせんじょうにあたるので、みなみはんきゅうの、しょうとうがまばらにそんざいしているばしょになりますね」
「??????????」

 あ、これ絶対、分かってない空気だわ。

 エルは当たり前みたいに話してるけど、そもそもこの世界って、惑星とか北半球、南半球の概念あるの?

「あー……てんもんがくしゃが、ひつようなはなしになりそうなので、そこはちょっとかつあいさせてもらってですね。いちおう、リリエンヌにちょっとでもあんしんしてもらおうとおもって、げんちのじょうたい、みせれるようにじゅんびはしてましたんで。いま、このばでみなさんも、みます?」
「むろんだ」

 こんな時ばっかり光の速さで答えた国王陛下は、心なしそわそわして見えた。

 未知への好奇心って言うのかしら?

 そいうのを感じてる時のエンディの反応と微妙に似てて……あ、隣で同じ顔してるエンディ見ちゃった。

 不思議ねー? エンディだと素直に可愛い♡って思えるのに。

「どうしたの、アリィ? ためいきなんてついて?」
「へいかとエンディのはんのうが、まったくいっしょなのをみてね? エンディならキラキラおめめとワクワクオーラがかわいいって、すなおにおもえるのに、へいかには、ぜんぜんおなじことかんじないのは、やっぱり、わたしがエンディのことだけが、だいすきすぎるせいなのかしらって、おもって? ダメねぇ、わたし、せいじょなのに。エンディはこれでもかってあいせるのに、ばんにんをおなじようにあいするとか、むずかしいわー」

 半分、独り言みたいな調子で呟いて、全く同じ溜息をつくと、エンディが唐突にわたしの手をギュッと握った。

「ぼ、ぼくもね! アリィのことが、だいすきすぎて、そんなのダメだってわかってるけど、アリィが、ぼくだけみてくれたらいいのに、ぼくのそばにだけいてくれたらいいのにって。ほかのものぜんぶなくなってもいいから、それがかなえばいいのにって、おもうことあるんだ。でも、ぼくは、まだ、かくせいしてないけど、ゆうしゃで、それにこのくにのおうじなんだから、ちゃんともっと、いろんなものをだいじにできなくちゃいけないんだよねって、おもうんだ」

 精一杯、自分の想いをかなり深い所まで考えて、理解して、言葉にして話してくれるエンディに、わたしは嬉しくなってしまう。

「ふふっ。わたしたち、きっと、そんなところもいっしょにがんばらないといけないのね。わたしは、エンディのことをだいすきなまま、このせかいのすべてをまもらなくちゃいけないんだわ。きっと」
「じゃあ、ぼくは、アリィのことをだいすきなまま、このせかいのすべてをまもらなくちゃいけないんだね……そっか。アリィといっしょに、アリィといきていくこのせかいを、ふたりでまもっていくんだっておもえば、ぼくもがんばれるかも」
「そうね。こうして、ちゃんとはなしてくれるエンディが、だいすきよ!」

 エルが、この星の反対側にある追放場所を皆に見せる準備を進めている傍らで、わたしとエンディは、今日もラブラブすることに努めていた。

 趣味と好みと必要と実績を求められることが1つで済むって、ある意味、恵まれてるわね。

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